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2007年04月27日

喫煙と糖尿病 効果的な禁煙ガイドラインが求められている

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糖尿病合併症
 日本では肺がんが1998年以降、がん死亡のトップを占めるようになった。平成17年度人口動態統計によると、肺がんによる死亡は年間で5万人以上に及ぶ。

 喫煙は肺がんの重要な危険因子となるが、たばこが影響するのは肺だけでなく、ほぼすべての部位のがんの発症を増やす。また、呼吸器や血管の病気、それにより引き起こされる脳卒中や心筋梗塞、下肢動脈閉塞などの発症が増える。

 糖尿病患者にとって、喫煙により血管が収縮し血圧が上がる、心拍数が増える、酸素不足を引き起こすといったさまざまな弊害があり、こうした要因がからみあい動脈硬化の進行がさらに早まる。喫煙習慣のある人は、肺がんや喫煙により引き起こされる病気を予防するためにも、ただちに禁煙することが望ましい。

診療ガイドラインが準備中
 患者の禁煙成功率を上げるには、まず禁煙指導をする医師の知識向上が必要だ。そこで厚生労働省の研究班は、喫煙者をどのように診察・指導をすれば効果が上がるかを、医学的な根拠に基づきまとめた診療ガイドライン案を作成した。

 大阪府立健康科学センターの中村正和部長らが作成したもので、禁煙指導ついての1976年以降の国内外の論文約300本を調べ、禁煙に成功した患者の診察や指導のやり方を考察し、禁煙補助療法の費用効果も含め検討した。今後、検討を重ね学会などを通じ全国の医療機関に示す予定。

 ガイドライン案は、問診、診断、治療など計12項目あり、どうすれば医師が効果的な治療をできるかをまとめてある。(1)患者の喫煙状況を単に確認するだけでは不十分、(2)禁煙カウンセリングは医師、看護師、薬剤師などが加わったチーム医療が望ましい、(3)禁煙指導は少なくとも4回以上実施、(4)ニコチンの重度依存者には肌に張るニコチンパッチとニコチンガムなどの薬剤の併用が効果的──といった指導法が示されている。

禁煙した人はたったの1割 財務省調査
 たばこの外箱には、たばこが原因とされる「肺がん」、「心筋梗塞」、「脳卒中」などの病名を記し、健康に与える悪影響についての警告が表示されている。これは2005年7月から、たばこ規制に関する世界保健機関(WHO)の条約発効を受け始められた。

 しかし、この警告を読んで喫煙をやめた人は1割にとどまることが、たばこ業界を所管する財務省による調査で明らかになった。この調査は、未成年者の喫煙防止の効果をみる意図もあり、全国の中学生以上の喫煙者と元喫煙者およそ2,500人を対象に、インターネットを通じて今年1月に行われた。

 調査によると、警告表示を読んだ人のうち、約1年半の間に喫煙をやめた人は10%で、「喫煙本数を減らした」のは29%だった。61%は「減っていない」と答えた。理由は「喫煙が必ずしも肺がんなどの病気につながるわけではない」、「喫煙を減らしても健康改善の効果が薄い」という回答が合計32%と多かった。

 財務省は今年から、定期的なアンケート調査を年1回ほど実施し、禁煙効果などの分析をもとに表示内容を随時変更する考えを明らかにした。また、文章だけでなく、海外のように写真や絵なども入れた効果的な表現に変えることを検討している。

厚生労働省「第3次対がん10か年総合戦略研究事業」
 効果的な禁煙支援法の開発と普及のための制度化に関する研究(PDFファイル)
財務省「第11回たばこ事業等分科会」資料

関連情報
受動喫煙は糖尿病にも悪い
糖尿病Q&A1000「たばこやアルコール」
情報BOX&Net. アンケート「喫煙習慣」

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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