糖尿病の医療費・保険・制度

公的制度の利用と対象外の費用
 糖尿病と診断されると、糖尿病の治療に加え、関連した病気のリスクもあるため、将来的な医療費の負担に不安を感じる患者さんも多いのではないでしょうか。医療費の負担を軽減する公的制度についてお話します。対象外となる費用もあるのでよく理解しておきましょう。
まずは公的制度を利用する
 糖尿病や合併症などの病気の治療にかかる費用は、基本的には公的医療保険の対象となります。

糖尿病になったらいくらかかる?
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公的医療保険を使った場合の自己負担の割合
  一般・低所得者 現役並み所得者
 75歳以上 1割負担 3割負担
 70歳以上75歳未満 2割負担
 6歳(義務教育就学後)以上70歳未満 3割負担
 6歳(義務教育就学前)未満 2割負担
 また、家計に対する医療費の自己負担を軽減するために、医療機関の窓口において、医療費の自己負担分を支払った後に、定められた月ごとの自己負担限度額を超える部分が給付される高額療養費制度があります。
詳しくはこちら▼
厚生労働省 「高額療養費制度を利用される皆さんへ」

 年齢や年収により自己負担額の上限が定められていますが、例えば年齢70歳未満で年収が約370万円から約770万円の方の場合、自己負担額は
 80,100円+(総医療費-267,000円)×1% 
で計算されます。 例えば糖尿病の合併症で、月間の医療費が100万円となった場合の自己負担額は、
 80,100円+(1,000,000円-267,000円)×1%=87,430円
です。  また、糖尿病の合併症で腎不全を患った場合は、人口透析治療が必要になります。外来血液透析では1カ月に約40万円程度が必要とされていますが、人工透析治療は一般の高額療養費制度とは異なり、特定疾病に係る高額療養費支給特例が適用され、患者の自己負担の上限は1カ月1万円、年間では12万円となります(70歳未満の上位所得者は2万円/月)。
公的制度で保障されない費用と備え
 このように、私たち生活者にとってとても心強い公的制度ですが、保障されない医療費もあり、これらはすべて自己負担となります。
・入院中の食事の自己負担分
・差額ベッド代
・自由診療の治療費や手術代
・先進医療費
・テレビカード代
・入院や通院時の交通費
・入院時の消耗品費
・見舞いのお礼、快気祝い

 例えば、全額自己負担の差額ベッド代は、全国平均で1日あたり1人室7,837円、2人室3,119円です*1。入院中の食事代(患者の標準負担額)は、一般の人で1食あたり460円、1日3食で1,380円となりますが*2、糖尿食や腎臓食といった管理栄養士の指導のもとで提供される食事の場合は「特別食加算」として1食76円が加わります。また、リハビリなどで一般病床ではなく療養病床に入院する際には、65歳以上の場合、「生活療養費」として1日370円がかかります。1日単位でみると高額ではありませんが、入院日数が長くなるとそれだけ負担は大きくなります。入院日数は医療の進歩とともに短くなっていますが、それでも35歳~64歳の平均入院日数は21.9日、65歳以上で1カ月以上という調査結果が出ています*3
22日間入院した場合
2人室の差額ベッド代
 1日 3,119円×22日 =68,618円
食事代(糖尿病の特別食)
 1回 460円+76円 ×3食 × 22日 =35,376円
 こうした公的制度で対応できない医療費は、ご自身の毎月の収入や貯蓄から賄うことになります。日常生活や治療が終わった後の生活に支障が出ることが考えられる場合には、「民間の保険」を検討してみましょう。

*1出典:厚生労働省 平成30年11月「第401回中央社会保険医療協議会・主な選定療養に係る報告状況」
*2出典:厚生労働省「平成28年4月から 入院時の食費の負担額が変わります」
*3出典:厚生労働省「平成29年(2017)患者調査の概況」

糖尿病患者さんが気をつけたいポイントは?
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柳澤 美由紀

監修 柳澤 美由紀
「専門知識と真心で、日本の家計を元気にする」を使命に活動するファイナンシャル・プランナー(CFP® 1級FP技能士)。家計についての相談サービス「家計の窓口」や講演活動のほか、著書も多数。

2021年03月更新

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