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2023年11月13日

ブロッコリーの「スルフォラファン」が糖尿病や肥満のリスクを減少 糖尿病を悪化させる因子を抑制 インスリン抵抗性も改善

 ブロッコリーやキャベツなどのアブラナ科の野菜に含まれる天然化合物の「スルフォラファン」が、血糖値を下げるインスリンの効果を弱めたり、分泌を抑制し、糖尿病を悪化させるタンパク質を減らすことを発見したと、東北大学が発表した。

 これまでも、ブロッコリー・キャベツ・芽キャベツ・大根・白菜・カリフラワー・クレソンなどのアブラナ科の野菜は、動脈硬化や、2型糖尿病・心臓病・脳卒中などの疾患を抑制するのに有用という研究が発表されている。

 スルフォラファンに、脂肪細胞のエネルギー消費を増やし糖尿病や肥満を抑制する作用や、腸内細菌叢を改善し炎症を抑え、インスリン抵抗性を改善させる作用があることも報告されている。

ブロッコリーのスルフォラファンの健康機能に注目

 ブロッコリーやキャベツなどのアブラナ科の野菜に含まれる天然化合物の「スルフォラファン」が、血糖値を下げるインスリンの効果を弱めたり、分泌を抑制し、糖尿病を悪化させるセレノプロテインPを減らすことを発見したと、東北大学が発表した。

 スルフォラファンは、ブロッコリー・キャベツ・芽キャベツ・ケールなどのアブラナ科の野菜に含まれ、ブロッコリーの新芽(スプラウト)にとくに多く含まれる化合物。

 スルフォラファンは、さまざまな生理活性をもち、その健康機能は注目されている。

 一方、「セレノプロテインP」は、必須ミネラルであるセレンを含むタンパク質で、主に肝臓で合成される。各臓器にセレンを運ぶ働きをしており、体にとって必要なタンパク質だが、増えすぎると血糖値を下げるインスリンの分泌を抑制し、インスリンの効果を弱めることが知られている。

 研究グループは今回、スルフォラファンにより、セレノプロテインPの分解が促され、その濃度が低下することを明らかにした。

 糖尿病の人は、肝臓でセレノプロテインPの産生が増えやすいことが知られている。増えすぎると、インスリン抵抗性やインスリン分泌が悪くなるため、糖尿病を増悪させる"悪玉"とみられている。

 ブロッコリーなどの野菜を食べることで、スルフォラファンを摂取でき、セレノプロテインPを減らしすぎず増やしすぎず、バランスをとることができるようになり、糖尿病を改善するのに役立つ可能性がある。

スルフォラファンは複合的なメカニズムで健康増進をもたらす

 研究は、東北大学大学院薬学研究科の叶心瑩氏、外山喬士氏、斎藤芳郎教授らの研究グループによるもの。研究成果は、生物学分野の専門誌「Communications Biology」にオンライン掲載された。

 研究グループは今回、マウスを用いた実験で、培養肝細胞HepG2を用いた検討から、ブロッコリースプラウトに豊富に含まれるスルフォラファンが、セレノプロテインPを低下することを明らかにした。

 セレノプロテインPは、生命を維持するのに必要なタンパク質だが、増えすぎると糖尿病が悪化するおそれがある。今回の研究によって、スルフォラファンが肝臓でのセレノプロテインPの分解を高めることで、セレノプロテインPの現を抑制するメカニズムがはじめて明らかになった。

 スルフォラファンには、酸化ストレスなどの発生にともない活性化され、体に取り込まれた毒性のある物資を解毒したり、抗酸化力を高める転写因子である「Nrf2」を活性化する作用があることも知られている。

 しかし、今回発見されたスルフォラファンによる糖尿病の抑制効果は、Nrf2活性化を介した作用だけではない、別のメカニズムによるものと考えられるとしている。

 「スルフォラファンは、複合的なメカニズムによって健康増進作用をもたらしていると考えられます。今回の研究から、スルフォラファンの生理機能にもとづく新たな糖尿病の治療薬や予防戦略が期待されます」と、研究グループでは述べている。

ブロッコリースプラウトなどに含まれるスルフォラファンにより、糖尿病を増悪させるセレノプロテインPの分解が促される
出典:東北大学、2023年

「ブロッコリーのスルフォラファンが糖尿病リスクを減少

 金沢大学やカゴメによる別の研究では、ブロッコリーなどに含まれるスルフォラファンに、脂肪細胞のエネルギー消費を増やし肥満を抑制する作用や、腸内細菌叢を改善し炎症を抑え、インスリン抵抗性を改善させる作用があることも報告されている。

 スルフォラファンには、体内に取り込まれた化学物質の解毒や抗酸化力を高めることで、がんなどを予防する効果があることが知られている。

 研究グループは、スルフォラファンには、この解毒・抗酸化作用に加えて、(1) 脂肪細胞の褐色化を促すことで、エネルギー消費を増大させ、肥満を抑制する作用、(2) 高脂肪食により増え、肥満を促す腸内環境を改善し、代謝性エンドトキシン血症を抑える作用という、2つの作用があるこことを明らかにした。

 代謝性エンドトキシン血症は、高脂肪食により増えた悪玉菌が出す内毒素(LPS)が体内に移り、その血中濃度が増加し、脂肪組織や肝臓で慢性的な炎症を引き起こすこと。これが、血糖値を下げるインスリンが働きにくくなるインスリン抵抗性に寄与し、2型糖尿病などの発症・悪化に関与していると考えられるという。

 「スルフォラファンが、肝臓や脂肪組織の炎症、インスリン抵抗性を改善させる効果が期待されます。臨床研究を進め、スルフォラファンの有効性と安全性を評価することで、体のエネルギー消費を増加させ、腸内環境を改善する機能性食品としての役割が期待されます」と、研究者は述べている。

スルフォラファンに炎症やインスリン抵抗性を改善させる効果があることを確認

出典:金沢大学、2017年

東北大学大学院薬学研究科
Sulforaphane decreases serum selenoprotein P levels through enhancement of lysosomal degradation independent of Nrf2 (Communications Biology 2023年10月19日)
金沢大学医薬保健学域
Glucoraphanin Ameliorates Obesity and Insulin Resistance Through Adipose Tissue Browning and Reduction of Metabolic Endotoxemia in Mice(Diabetes 2017年2月8日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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