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2023年09月26日

家庭で血圧を測定して脳卒中や心筋梗塞を予防 医療費の負担軽減にも コロナ禍で注目が集まる

 家庭血圧測定が普及すれば、心血管疾患の負担が大幅に軽減され、長期的には医療費も削減できるという研究が発表された。

 高血圧の治療を受けている人だけでなく、高血圧になっているか分からないという人や、健診で血圧が高いと指摘されたが医療機関を受診していないという人にとっても、家庭血圧測定は有用だ。

 家庭血圧測定は、新型コロナのパンデミックにより、注目がより高まった。自分で血圧測定をすれば、健康管理をより行いやすくなる。

高血圧は「サイレント キラー」 検査が重要

 家庭血圧測定が普及すれば、心血管疾患の負担が大幅に軽減され、長期的には医療費も削減できる可能性があるという研究が発表された。

 高血圧は「サイレント キラー」とも呼ばれている。ふだんは症状がないという人も、高血圧を放置していると、脳卒中や心筋梗塞、心不全、腎臓病など、命に関わる深刻な病気が引き起こされる。

 血圧は年齢を重ねるとともに高くなる。自分の血圧値を知るための方法は、医療機関で検査を受けたり、健康診断を受けるか、家庭で血圧を測定するかだ。

 血圧を測る頻度は、医療機関を受診している人は月に1回程度。健診のときに測定してもらうという人は、さらに機会が少ない。家庭で血圧を測れば、血圧値の変動の詳しいデータがすぐに手に入る。

 高血圧の治療を受けている人だけでなく、高血圧になっているか分からないという人や、健診で血圧が高いと指摘されたが医療機関を受診していないという人にとっても、家庭血圧測定は有用だ。

家庭血圧測定を行えば血圧管理や健康状態を改善できる

 「住民の1人ひとりが、家庭血圧測定を行うようになると、血圧コントロールや健康状態の改善につながり、心血管疾患の症例を減少できる可能性があります」と、上海交通大学公衆衛生学部のヤン リー教授は言う。

 「家庭血圧測定は健康と医療経済への潜在的な影響が大きいことが分かりました」としている。

 医療や保健の政策を展開していくうえで、住民の健康に関連する情報の収集は、非常に重要で基本的なものになる。

 米国の各州で、米国疾病予防管理センター(CDC)の支援を受けて、住民の健康調査や健康保険などのデータを収集する「行動危険因子監視システム(BRFSS)」が運営されている。

 研究グループは今回、2019年のBRFSSのデータを分析し、家庭血圧測定が健康におよぼす影響を調査した。

 その結果、家庭血圧測定を導入することで、20年間で心筋梗塞の症例が4.9%減少し、脳卒中の症例は3.8%減少することが示された。

 さらには医療費も、年間に1人あたり平均4.4%を節約できることが示された。これを1人あたりの医療費に換算すると、20年間の平均で約115万円(7,794ドル)を削減できることになるという。

家庭で血圧を測り「仮面高血圧」を発見

 診察室の血圧測定では正常値が出るが、家庭血圧は高いタイプの人がいる。このタイプは、高血圧になっていても、医療機関での検査や健診でみつけるのが困難なので、「仮面高血圧」と言われている。

 仮面高血圧は見逃されやすいうえに、脳卒中や心筋梗塞などの発症リスクが、一般的な高血圧と同じくらいに高いことが報告されている。

 「家庭で血圧を測れば、仮面高血圧を発見することができます。朝と夜に毎日、ご自分で血圧を測ってみることをお勧めします。高血圧を早期に発見し、治療や対策を開始することが大切です」と、リー教授は指摘している。

 血圧は1日のなかで変動しており、とくに早朝や夜間に血圧が高くなっている人は注意が必要だという。

 血圧は通常は、活動が活発な日中に高く、夕方から夜にかけて下がっていく。そして早朝、目覚める時間になると高くなる。

 「早朝高血圧の人は、日中の血圧はほぼ正常であることが少なくありません。診察室での血圧測定だけでは不十分で、朝に自分で測定しなければ高血圧を発見できません。脳卒中や心筋梗塞の引き金になることもあるので、高血圧を放置しないことが望まれます」と、リー教授は述べている。

コロナ禍で家庭血圧測定への注目が高まった

 家庭血圧測定は、2020年~2022年に起きた新型コロナのパンデミックにより、注目がより高まった。医療機関を訪れなくとも、自分で血圧測定ができれば、健康管理をより行いやすくなる。

 最近では、測定した血圧値を記録して、かかりつけの医師などと共有できるスマートフォン用の「高血圧管理用アプリ」も登場している。

 日本高血圧学会は、家庭血圧測定を推奨しており、その注意点として次のことを公開している。

家庭血圧の正しいはかり方

  • 上腕血圧計を選びましょう。
  • 朝と晩に測定します。
      朝の測定:起床後1時間以内・ 朝食前・服薬前
      晩の測定:就寝直前
  • トイレを済ませ、1~2分椅子に座ってから測定します。
  • 原則的に1機会に2回測定し、その平均をとります。
  • 週に5日以上測定した結果を主治医にお見せ下さい。
  • 家庭血圧135/85mmHg以上が、脳卒中や心筋梗塞にかかる率を2~3倍にも増やす危険な高血圧です。

Home blood pressure monitoring saves lives, cuts costs, and reduces healthcare disparities (Elsevier 2023年7月13日)
The Health and Economic Impact of Expanding Home Blood Pressure Monitoring (American Journal of Preventive Medicine 2023年5月12日)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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