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2023年07月13日

食事のカロリー制限はこうすれば成功する 糖尿病の食事に役立てられる「マインドフルネス食事法」

 糖尿病とともに生きるすべての人にとって、どのような食事をするかは重要なポイントになる。もっとも多く行われているのが、カロリー制限だ。

 食事でカロリー制限をして、体重を5%以上減らしても、多くの人は3~4ヵ月でリバウンドしてしまうという研究結果が発表された。

 食事でカロリー制限をして、健康的な体重管理を持続し、リバウンドを防ぐために、効果的な方法が求められている。そこで「マインドフルネス食事法」が提唱されている。

 マインドフルネスを日本語に訳すと、「気付くこと」「意識すること」という意味。糖尿病や肥満のある人の食事療法に応用しようという研究が行われている。

カロリー制限は効果がある でも失敗する人も多い

 食事でカロリー制限をして、体重を5%以上減らしても、多くの人は3~4ヵ月でリバウンドしてしまうという研究結果を、米イリノイ大学が発表した。研究グループは、カロリー制限の効果を調べた8件の研究をメタ解析した。

 対象者には、1型糖尿病や2型糖尿病の人も含まれていた。体重が減っている期間は、血糖値・血圧・コレステロール・中性脂肪などの改善がみられたが、体重が元に戻ると、多くの人でこうしたベネフィットは消失した。

 ただし、健康的な体重管理を持続できた人もいて、そうした人は体脂肪の3分の1を減らすのに成功した。

 「食事のカロリー制限を持続するために、食事指導で適切なアドバイスをする必要があります」と、同大学運動・栄養学部のクリスタ ヴァラディ教授は述べている。

カロリー制限は糖尿病の人にも効果がある

 ダイエットでは、体重から脂肪量を除いた筋肉・骨・内臓・血液などの「除脂肪体重」を減らさないようにすることも重要だ。

 筋肉などが減少してしまうと、体の基礎代謝量が低下し、エネルギー消費が少なくなり、太りやすい体になってしまう。多くの人は、体重や体脂肪率を気にしていても、「除脂肪体重」には目が向かないことが多い。

 「余分な体脂肪などを減らしながら、除脂肪体重を減らさないようにするため、食事だけでなく、運動にも取り組む必要があります」と、ヴァラディ教授は指摘している。

 食事のカロリー制限は、代謝に悪影響をもたらすことは少ないことも示された。研究に参加した1型糖尿病と2型糖尿病の参加者は、減量を維持できているあいだは血糖管理が改善した。

カロリー制限による「糖尿病ケトアシドーシス」は少ない

 インスリン治療を行っている人は、インスリン投与量などを適正に調整していれば、カロリー制限による悪影響を防げることも示された。

 血糖値を下げる働きをするインスリンが不足し、十分に血糖値が下がらないと、血糖をエネルギー源として利用できないため、体はエネルギー不足になってしまう。

 そのため、かわりに脂肪がエネルギー源として分解され使われ、「糖尿病ケトアシドーシス」という危険な状態になるおそれがある。

 研究では、カロリー制限により糖尿病ケトアシドーシスのような深刻な事態になることは少ないことが示された。

体重管理に役立つ「マインドフルネス食事法」

 食事でカロリー制限をして、健康的な体重管理を持続し、リバウンドを防ぐために、効果的な方法が求められている。そこでハーバード公衆衛生大学院は、「マインドフルネス食事法」を提唱している。

 「マインドフルネス」は、日本の禅などの考え方や瞑想をヒントにして開発されたメンタルトレーニング法で、米国ではすでにストレス管理などに役立つトレーニングとして普及している。

 マインドフルネスを日本語に訳すと、「気付くこと」「意識すること」という意味になる。糖尿病や肥満のある人の食事療法に応用しようという研究も行われている。

「マインドフルネス食事法」で食行動を改善

 「マインドフルネス」を簡潔にあらわすと、「今、ここで起きていることを、ありのまま感じて、受け止めること」。

 自分の現在の体や心の状態に意識を集中することで、ストレスを受ける場面に遭っても、否定的な感情にとらわれることなく、平静を保てるようになるという。

 「介入研究では、マインドフルネスによるアプローチが、感情的になってつい食べすぎてしまうなど、体重増加や肥満につながる好ましくない行動を減らすのに効果的なツールとなりえることが示されています」と、同大学院栄養学部のリリアン チャン氏は言う。

 「マインドフルネス食事法」に関する68件の介入研究と観察研究では、食事のペースを遅くしたり、満腹感をえられやすくしたり、食欲のコントロールを強め、食行動が改善するのに効果があることが示されている。

 2型糖尿病の成人50人を対象とした研究でも、3ヵ月のマインドフルネス食事法に取り組んだ結果、食べすぎが減った結果、体重も減り、食事の自己満足感は高まり、うつ病の尺度も改善することが示された。

 チャン氏は、マインドフルネス食事法では、具体的に次のことに意識を向けることをアドバイスしている。

マインドフルネス食事法

  • 食事をしているときは、食事以外の行為をしないようにする。テレビやスマホ、パソコンなどを見ながらの食事はしない。

  • どのようなことが食事に影響をもたらしているかを考え、感じる。料理がどのように見えているか、味や匂い、食べているときにどんなことを感じているかに意識を向ける。

  • ゆっくりよく味わい、よく噛んで食べることで、食事の満足感がえられやすくなる。食べるときは常に、控えめな量で満足できることを知る。

  • 自分が満腹感をえられているかに意識を向ける。満腹感が80%くらいになったら、食べるのをやめる。

  • 冷蔵庫をじっと見つめていたり、何かを食べたいという衝動を感じたら、「自分は本当にお腹が空いているのか、それともただ退屈していたり、ストレスを感じているだけなのか?」と自答してみる。もしもストレスが原因なら、深呼吸をしたり、自分が楽しんでいる活動に注意を向けるなどして、意識を別のことに向ける。

  • 空腹を感じている時間が長引くと、食欲も強まる。食事と食事のあいだの時間が空きすぎないようにする。

  • 食事は1日に3食をなるべく均等にとり、食事を抜かないようにする。食べる時間も、なるべく毎日同じ時間帯に設定する。

  • 加工食品や加工肉など、体に悪い飽和脂肪酸を多く含む食品は減らし、代わりに食物繊維やビタミンなどを含む植物性食品を増やす。植物性食品は動物性食品に比べ、製造過程での自然環境への負荷も少ない。

  • 体の基礎代謝を上げるために、適度な運動を心がけることも必要。ウォーキングなど、自分の取り組みやすい運動を習慣として行う。

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An expanded model for mindful eating for health promotion and sustainability: issues and challenges for dietetics practice (Journal of the Academy of Nutrition and Dietetics 2016年4月26日)
Comparison of a mindful eating intervention to a diabetes self-management intervention among adults with type 2 diabetes: a randomized controlled trial (Health Education & Behavior 2013年7月12日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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