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2023年04月20日
糖尿病の人の「歯」を守る ストレスが口の中の健康を悪化 歯を失うと認知症リスクも上昇
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- 糖尿病の検査(HbA1c 他) 糖尿病合併症 食事療法

ストレスの多い人は、歯が痛い・歯ぐきの腫れ・噛みにくいなど、口の中の健康の問題をもつ割合が大幅に高いことが示された。
糖尿病とともに生きる人が歯を失うと、認知機能が低下するリスクも上昇するという、気になる調査結果も発表されている。
糖尿病の人の口の中の健康を守り、健康的な笑顔を維持するために、具体的なステップが紹介されている。
ストレスの多い人ほど口の中の健康も悪い
歯周病は、糖尿病の「6番目の合併症」とも呼ばれている。糖尿病とともに生きる人は歯周病などになりやすく、歯周病になると血糖管理が相乗的に難しくなることが知られている。 また、糖尿病の人の多くは、感情的・心理的な問題を抱えた経験をもっており、ストレスは血糖管理にも影響をもたらす。 それだけでなく、ストレスは口の中の健康にも影響をもたらすことが、東京医科歯科大学の調査で明らかになった。 「歯が痛い、歯ぐきの腫れ・出血、噛みにくい」といった口の中の健康の問題をもっている割合は、ストレスがもっとも多い人で14.4%に上り、ストレスがない人の2.2%に比べ大幅に高いことが分かった。 ストレス管理と口の中の健康は、糖尿病治療でも重要な課題になっている。とくに働いている人の心理的なストレスは、さまざまな精神的および身体的な健康上の問題を引き起こすことが知られている。口の中の健康を向上するプログラムが必要
研究グループは、国が実施した国民生活基礎調査の2次解析から、広範な日常生活のストレスと口腔の健康との関係について、27万4,881人の労働者を対象に調査した。 調査では、仕事以外の広範な日常生活のストレスについても調査した。ストレスが増えるほど、個別の口の中の健康についても、症状のある人が増えることが分かった。 研究は、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科健康推進歯学分野の相田潤教授らの研究グループによるもの。 「働いている人の日常生活のストレスと口腔の健康の問題とのあいだに、明確な関係が認められました。今回の研究の長所は、働いている人の仕事以外の広範な日常生活のストレスも考慮したことです」と、研究者は述べている。 ストレスと口腔の健康の関連について、より詳しく解明し、ストレス軽減を通じて、口の中の健康を向上するための介入プログラムを開発していくことが必要としている。口の中の健康を守るための3つのステップ

口の中の健康を守るための3つのステップ
▼ 1日に2回以上歯を磨く |
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米国歯科学会は、フッ素が配合された歯磨き剤を使い、1日に2回以上、2分間の歯のブラッシングを行い、デンタルフロスや歯間ブラシも使うことを推奨している。
上手な歯の磨き方
米国歯科学会が公開しているビデオ |
▼ 歯科健診を年に2回受ける |
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歯の状態は年齢とともに変化し、適切な歯の磨き方も変わっていく。かかりつけの歯科医や歯科クリニックをもち、歯科健診を定期的に受ければ、歯周病予防のための治療も受けられる。
歯科衛生士による専門的な口腔ケアを受けることもできる。具体的には、歯磨き指導や歯石の除去、歯のクリーニングなどが行われる。 |
▼ 歯科医に糖尿病について伝える |
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歯科を受診した結果、治療が必要になることもある。その場合、もしも血糖コントロールが良好でないと、治療効果を得にくくなったり、治療をすぐに行えない場合もある。
また、口腔治療を進めて良いかを、歯科医と糖尿病の主治医のあいだで確認をする必要が出てくる場合もある。歯科を受診するときは、自身が糖尿病をもっていることや、薬による治療を行なっていることなどを伝えることも大切。 |
糖尿病の人が歯を失うと認知機能が低下するリスクも上昇
糖尿病の治療を続け、歯科も定期的に受診することが大切
糖尿病とともに生きる人が歯を失うと、認知機能が低下するリスクも上昇するという、気になる調査結果も発表されている。 口の中の健康の状態の悪化と糖尿病、認知機能の低下は、すべて関連しており、互いに影響しあっていることが分かってきた。 糖尿病のある人は、糖尿病の治療と自己管理を良好に維持し、歯科で口腔ケアも受け、歯周病などを予防・治療をすることが重要であることが、あらためて強調された。 研究は、米ニューヨーク大学看護学部によるもの。「歯周病などがあり、適切な治療を続けていないと、歯ぐきの痛みや歯の欠損により、噛むのが難しくなり、食事にも影響が出てきます」と、同学部のベイ ウー氏は言う。 「食物を良く噛めなくなり、食べられなくなると、栄養不足につながることもあります。栄養状態は、糖尿病での耐糖能障害やインスリン感受性の低下にも関連しており、認知障害や認知症の危険因子となりえます」としている。 研究グループは、65歳から85歳以上の高齢者9,948人を対象に、2年ごとに認知機能の検査を行い、歯がどれくらい残っているかも調べた。 その結果、糖尿病があり、歯を多く失っている高齢者は、それらがない高齢者に比べ、認知機能が有意に低下していることや、認知機能の低下速度が速いことが分かった。 「糖尿病があり、口腔の健康状態が悪い人は、糖尿病の治療をきちんと続け、血糖値を良好に管理し、自己管理を順守 するとともに、歯科も定期的に受診することが大切です」と、ウー氏は指摘する。 「糖尿病のある人が、歯科医や歯科クリニックにアクセスしやすくすることも必要です。患者さんに、糖尿病と口の中の健康、認知症などとの関連について、知ってもらうことも求められています」としている。東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 健康推進歯学分野
Association of Stressful Life Events with Oral Health Among Japanese Workers (Journal of Epidemiology 2023年1月14日) Diabetes and Oral Health (米国糖尿病学会)
Diabetes (米国歯科学会) Diabetes and Toothlessness Together Worsen Cognitive Decline (ニューヨーク大学 2023年3月13日)
Diabetes, Edentulism, and Cognitive Decline: A 12-Year Prospective Analysis (Journal of Dental Research 2023年3月12日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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