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2023年04月21日

「朝食欠食」は糖尿病リスクを高める 肥満や糖尿病に子供のうちから対策 足立区の糖尿病対策

 朝食を食べない習慣のある子供は、糖尿病リスクが高い傾向があることが、東京都足立区内の中学生を対象とした研究で示された。

 区では「糖尿病対策アクションプラン」を実施しており、▼野菜を食べること、野菜から食べること(ベジ・ファースト)を推進、▼野菜から食べるなどの良い生活習慣の定着を乳幼児期から推進、▼糖尿病を重症化させない取り組みを推進の3点に力を入れている。

 食事を野菜から食べる「ベジ・ファースト」が浸透してきて、実行している子供は肥満リスクが低いことなどが示されている。

朝食欠食の習慣は子供のうちからはじまっている

 忙しい毎日を過ごしている現代人のなかには、朝食を食べずに済ませ、昼食まで空腹でいるという人が少なくない。朝食を摂らないことは、その後の食事後の血糖値の上昇につながりやすい。

 朝食を食べない成人は、体重が増えやすく、肥満になる危険性が大きく、2型糖尿病のリスクも高いことが知られている。朝食欠食は、筋肉も萎縮させ、ロコモやサルコペニアの危険性も増大させるという報告もある。

 ほぼ24時間の周期で体のリズムを刻んでいる体内時計は、食事のタイミングによっても調整されていることが分かってきた。朝食をしっかり摂る習慣は、体内時計を正常化させ、太りにくい体質をつくり、肥満や2型糖尿病を改善・予防するのに効果的とみられている。

 朝食欠食の習慣は、子供のうちからはじまっている。朝食をとる習慣のない子供が成長すると、肥満や糖尿病予備群になるリスクが高まるおそれがあるという報告も発表されている。

朝食を食べない子供は糖尿病リスクが高い

 朝食を食べない子供は、2型糖尿病のリスクが高いことが、東京都足立区内の中学校の生徒を対象とした研究で示された。

 東京医科歯科大学の研究グループは、足立区の小中学生を対象に実施している子供の健康・生活実態調査「A-CHILD Study」の中学生のデータを用いて、朝食欠食と糖尿病予備群のリスクとの関連を調べた。

 対象となったのは、2016年と2018年の調査に回答した、1,510人の中学校2年生。1~2ヵ月の血糖値の平均が反映されるHbA1cの値が5.6~6.4%の子供を「前糖尿病(糖尿病予備群)」と判定した。

 その結果、朝食を抜く習慣のある生徒は16.4%で、前糖尿病の有病率は3.8%だった。糖尿病前症の有病率は、朝食を毎日食べている生徒では3.5%、朝食を欠食している生徒では5.6%で、朝食を食べない習慣のある子供は、前糖尿病のリスクが2倍近くに上昇することが示された。

 また、体格指数(BMI)の高い過体重の子供では、この関連はとくに高く、前糖尿病のリスクは4倍以上に上昇した。太っていない子供では、こうした関連はみられなかった。

 研究は、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科国際健康推進医学分野の藤原武男教授らによるもの。研究成果は、「Frontiers in Endocrinology」に掲載された。

 朝食欠食と肥満や糖尿病予備群との関連は、成人対象の研究では報告されているが、これまで子供についての研究は少なかった。

 「日本人の子供や若者、とくに過体重の子供が朝食を食べない習慣は、前糖尿病と関連していました。朝食を食べない習慣をなくすことを奨励すると、糖尿病の予防に役立つ可能性があります」と、研究者は述べている。

食事を野菜から食べる「ベジ・ファースト」を奨励

 足立区は、糖尿病の1人あたりの医療費が23区で上位に位置し、糖尿病で人口透析を行っている患者の割合が特別区・東京都を上回っているという現状を受け、「糖尿病対策」に重点を絞って施策を推進している。

 区が推進している「糖尿病対策アクションプラン」では、▼野菜を食べること、野菜から食べること(ベジ・ファースト)を推進、▼野菜から食べるなどの良い生活習慣の定着を乳幼児期から推進、▼糖尿病を重症化させない取り組みを推進の3点を基本方針にして、対策を講じている。

 区のこれまでの調査によると、朝食を食べていない中学3年生の割合は20%。野菜の1日の摂取目標は350gだが、中学2年生の野菜摂取量の推定は206gと足りていない。

 さらに、食事を野菜から食べる「ベジ・ファースト」を実行している小学1年生は12%で、野菜から食べている子供は、肥満傾向の割合が3割低いことも示されている。

 そこで区では、「あだち ベジタベライフ~そうだ、野菜を食べよう~」をキャッチコピーに掲げ、野菜が食べやすくなる環境づくりを進めている。

 「食物繊維が豊富に含まれる野菜から食べることは、血糖値の急上昇を防ぎ、インスリン分泌の増加を抑え、2型糖尿病や肥満の予防・改善につながります。幼児期から"一口目は野菜から"と呼びかけることで、健康寿命の延伸をはかっています」と強調している。

ベジ・ファーストが浸透 「子どもの健康・生活実態調査」を実施

東京都足立区の糖尿病対策

出典:足立区こころとからだの健康づくり課
 足立区は、子供の健康と生活の実態を正確に把握し、健康格差をなくす対策につなげるため、「子どもの健康・生活実態調査」を実施している。

 調査では、ベジ・ファーストと子供の健康との関連を調べた結果、野菜から食べる子供の方が、問題行動や虫歯が少なく、向社会性やレジリエンス(逆境を乗り越える力)が高いことが分かった。

 ベジ・ファーストにより、朝食を食べる頻度や野菜を食べる頻度も高く、ジュースを飲む頻度は少ないことや、就寝時間が早く、読書習慣もより良い状態である傾向も示された。

 藤原教授らは調査結果を分析して、「ベジ・ファーストは着実に浸透しており、引き続き未就学期および小1で、ベジ・ファーストの推進を進めていくことで、メンタルヘルスや虫歯予防、望ましい生活習慣につながることが予想されます」と述べている。

 「朝食欠食については、家庭の構造的な要因も大きく、未就学期での介入はこれ以上困難であることが推察されます。今後は、足立区で行なっている、自分で朝食を作れるスキルを身につけさせる教育の効果がではじめる小6、中2のデータで比較する必要があると考えられます」としている。

Breakfast Skipping is Positively Associated With Incidence of Type 2 Diabetes Mellitus: Evidence From the Aichi Workers' Cohort Study (Journal of Epidemiology 2015年5月5日)
Association between skipping breakfast and prediabetes among adolescence in Japan: Results from A-CHILD study (Frontiers in Endocrinology 2023年2月22日)

【足立区は糖尿病対策を推進します】もっと笑顔、もっと長寿 あだち元気プロジェクト (東京都足立区)
子どもの健康・生活実態調査 (東京都足立区)
足立区の糖尿病対策
やっぱりベジ・ファーストはすごかった! (足立区 2016年8月12日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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