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2023年04月04日

ビールが糖尿病に良い? 腸内環境を良くして認知症の予防にも ただしビールの飲み過ぎにはご注意

 アルコールの入ったビールも、ノンアルコールのビールも、1日1杯程度を飲んでいる男性は、腸内細菌叢(腸内フローラ)が健康だという調査結果が発表された。

 ビールに含まれるホップ化合物が、アルツハイマー型認知症の予防に役立つという研究も報告されている。

 ただし、アルコールを少しでも飲み過ぎると、その健康効果は打ち消されてしまうことも、多くの調査で確かめられている。

 アルコールの飲み過ぎは禁物だ。ビールを飲む量が気になっている人は、ノンアルコールのビールを利用してみてはいかがだろう。

ビールは腸内細菌に良い影響をもたらす

 アルコールの入ったビールも、ノンアルコールのビールも、1日1杯程度を飲んでいる男性は、腸内細菌叢(腸内フローラ)がより多様だという研究を、米国化学会(ACS)が発表した。

 腸内には細菌がおよそ100種類以上、40兆個以上の細菌が生息していると考えられている。腸内細菌は、宿主の健康に直接影響をもたらし、良好な腸内環境は、2型糖尿病や肥満、心臓病などの慢性疾患のリスクと関連しているという報告がある。

 ビールには、ポリフェノールなどの化合物が含まれるほか、ビール造りに欠かせない酵母による発酵の作用により、腸内細菌に良い影響をもたらすと考えられるという。

 アルコール飲料では、ワインについても同様に、食事に合わせて適度に飲んでいる人は、より健康的という調査結果が報告されている。

ノンアルコールのビールでも効果がある

 ポルトガルのノバ医科大学の研究グループは、19人の健康な男性を対象に、二重盲検比較対照試験を実施した。参加者を2つのグループに分け、アルコール入りあるいはノンアルコールのラガービールを、夕食時に缶1本程度を飲んでもらった。

 その結果、どちらのグループも4週間後に、腸内細菌叢の多様性が大きくなり、腸の健康が改善されたことが示された。

 「アルコール度数に関係なく、ビールを1日1本飲む習慣は、腸内細菌叢と腸の健康に有益である可能性があります」と、同大学でバイオ医療を研究しているクラウディア マルケス氏は言う。

 「ただし、アルコール飲料のもっとも安全な飲量はゼロであり、まったく飲まないことです。アルコールの飲み過ぎには、くれぐれもご注意ください」。

 「アルコールの飲み過ぎが気になる人は、ノンアルコールのビールを利用する方法もあります」としている。

ビールがアルツハイマー病の予防に役立つ可能性

 ビールは世界でもっとも古く、もっとも人気のあるアルコール飲量のひとつで、多くの種類のホップが風味付けに使われ、独特の苦味をだしている。

 米国化学会(ACS)が発表した別の研究では、ビールに含まれるホップ化合物が、アルツハイマー型認知症の予防に役立つ可能性も示された。

 認知症の主な原因は、脳に蓄積されたアミロイドβと呼ばれるタンパク質と考えられているが、ビールに含まれるホップが、このタンパク質の凝集を阻害する可能性があるという。

 イタリアのミラノビコッカ大学などの研究グループは、ビールの醸造プロセスで使用されるのと同様の方法で、広く使われている4種類のホップの抽出物をとりだし、その抗酸化特性などを調べた。

 その結果、多くのラガービールや低アルコールのエールビールなどに含まれるテットナングホップからの抽出物が、強力な抗酸化作用や抗凝固活性を示すことが分かった。

 「今回の発見は、ビールをたくさん飲む習慣を正当化するものではありませんが、ビールに含まれるホップ化合物から、アルツハイマー病の発症リスクを抑える栄養補助食品を作れる可能性を示すものです」と、同大学でバイオテクノロジーを研究しているクリスティーナ アイロルディ氏は述べている。

ただしアルコールを飲み過ぎると健康メリットは打ち消される

 アルコールは、「節度ある適度な飲酒」を守っていれば、心筋梗塞や2型糖尿病などのリスクが低下するという報告はあるが、少しでも飲み過ぎてしまうと、そのメリットは打ち消されてしまう。

 過度の飲酒により、高血圧や高血糖、脳卒中などのリスクが高まるだけでなく、頭頸部がん、乳がん、大腸がんなどのリスクも高まる。

 アルコールの飲み過ぎにより、健康を害するだけでなく、自動車事故などの危険性も高まる。飲酒習慣のない人や飲めない人に対して、飲酒を強要しないことも大切だ。

 欧州心臓病学会(ESC)によると、アルコールを少しでも飲み過ぎていると、心不全などの発症リスクが上昇する。

 高血圧や2型糖尿病、肥満などの心不全の危険因子をもっている40歳以上の成人744人を対象とした調査で、アルコールを飲み過ぎている人は、心臓の健康が悪化するリスクが4.5倍高いことが示された。

 とくにアジア人では、少しアルコールを飲み過ぎただけでも有害である可能性があるという。

「適度な飲酒量」の純アルコール量は1日に20~25g

 中国の研究でも、アルコール(純アルコール摂取量)を1日に20gまでに抑えていると、2型糖尿病や心筋梗塞などの発症リスクはむしろ低くなることが示された。

 アルコール摂取量と糖尿病や関連する疾患のリスクは、「Uカーブ」の関係にあることが示されている。つまり適度な飲酒をしていると、血糖コントロールの状態はむしろ良くなり、糖尿病合併症も減るという報告がある。

 しかし、少しでもアルコールを飲み過ぎると、その効果はすぐに打ち消されてしまう。

 日本人でも「適度な飲酒」は、男性で純アルコール量が1日に20~25gぐらいまでだと考えられている。

 純アルコール量20gは、▼ビール(ロング缶) 1本 (500mL)、▼チューハイ(レギュラー缶) 1本 (350mL)、▼日本酒 1合(180mL)、▼焼酎 1杯 (100mL)、▼ワイン 2杯 (120mL)、▼ウイスキー 2杯 (60mL)に相当する。

 なお、女性は男性に比べて、アルコール分解速度が遅いことが多いので、女性は男性の半分から3分の2くらいの量が適当とされている。

Lager beer, whether it contains alcohol or not, could help men's gut microbes (米国化学学会 2022年6月15日)
Impact of Beer and Nonalcoholic Beer Consumption on the Gut Microbiota: A Randomized, Double-Blind, Controlled Trial (Journal of Agricultural and Food Chemistry 2022年6月15日)
Beer hops compounds could help protect against Alzheimer's disease (米国化学会 2022年11月7日)
Alzheimer's Disease Prevention through Natural Compounds: Cell-Free, In Vitro, and In Vivo Dissection of Hop (Humulus lupulus L.) Multitarget Activity (ACS Chemical Neuroscience 2022年10月25日)
Alcohol may be more risky to the heart than previously thought (欧州心臓病学会 2022年5月22日)
WHO/Europe launches EVID-ACTION to bring evidence to action to reduce alcohol consumption and harms (世界保健機関 2022年12月6日)
Association between alcohol consumption and the risk of incident type 2 diabetes: a systematic review and dose-response meta-analysis (American Journal of Clinical Nutrition 2016年2月3日)
Alcohol use: Weighing risks and benefits (メイヨー クリニック 2021年12月11日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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