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2023年03月06日

野菜・果物の天然成分が糖尿病やうつ病に効く? 赤・紫・青の色素が糖尿病リスクを低減

 果物をよく食べている人ほど、うつ病を発症するリスクが低いことが、国立精神・神経医療研究センターなど調査で示されている。

 野菜や果物に含まれるアントシアニンと呼ばれる赤・紫・青の色素成分が、2型糖尿病のリスクを低減するという、新しい研究も発表された。

野菜や果物の天然成分の健康効果

 野菜や果物に含まれる、ビタミンやミネラルなどの栄養素とはまた別の成分である「フィトケミカル」の健康効果が注目されている。

 フィトケミカルは、野菜・果物・豆類・イモ類・海藻などの植物性食品に含まれる、紫外線などの植物にとって有害なものから守るために作りだされた色素や香りなどの化学成分。

 野菜や果物のフィトケミカルである「リコピン」「アントシアニン」「カテキン」などは注目されている。

野菜や果物の摂取がうつ病に予防的に働く可能性

 果物や、フラボノイドが豊富に含まれる果物をよく食べている人ほど、うつ病を発症するリスクが低いことが、国立精神・神経医療研究センターや国立がん研究センターなどの調査で示されている。

 日本人1,204人を対象とした調査によると、果物をよく食べている人では、もっとも少ない人に比べ、うつ病のリスクが半分未満に減少した。

 果物に含まれるフラボノイドは、強力な抗酸化作用をもつとされるポリフェノールの一種。果物に含まれる天然由来成分による、抗酸化作用などの生物学的作用が、うつ病の発症に対して予防的に働いた可能性が考えられるという。

 こころの不調のなかでも、うつ病が健康にもたらす影響は、⾼⾎圧や⼼疾患などの循環器疾患と同様に深刻とみられている。

 これまでの研究でも、野菜や果物の摂取が、うつ病に予防的に働く可能性が示されている。野菜や果物の天然由来のポリフェノール化合物は、脳由来の神経栄養因子や、酸化ストレスと神経炎症の抑制作用により、抗うつ効果をもつとみられている。

果物をよく食べている人はうつ病リスクが減少

 国立がん研究センターなどは、「JPHC研究」の一環として、日本人を対象に、野菜・果物およびフラボノイドの豊富な果物の摂取が、うつ病のリスク低下と関連するかどうかを調べた。

 「JPHC研究」は、日本人を対象に、さまざまな生活習慣と、がん・2型糖尿病・脳卒中・心筋梗塞などとの関係を明らかにする目的で、国立がん研究センターを中心に実施されている多目的コホート研究。20年以上にわたり、追跡調査が行われている。

 研究グループは、1995年と2000年に行った2回の食事調査アンケートに回答し、2014~2015年にかけて実施した「こころの検診」に参加した1,204人を対象に調査をした。

 野菜・果物およびフラボノイドの豊富な果物の摂取量の平均値により、参加者を5つのグループに分け、うつ病発症リスクを比べた。

 その結果、果物の摂取量がもっとも少ないグループと比較して、摂取量がもっとも多いグループでは、うつ病の発症は0.34倍となり、果物をよく食べているとうつ病の発症が少ないことが示された。

果物の摂取量が多いグループではうつ病の発症リスクが半分未満に低下

出典:国立精神・神経医療研究センター、2023年

赤・紫・青の野菜や果物が糖尿病リスクを低減

 野菜や果物に含まれるアントシアニンと呼ばれる赤・紫・青の色素成分が、2型糖尿病のリスクを低減するという別の研究を、フィンランドのトゥルク大学が発表した。

 アントシアニンもポリフェノールの一種で、強い抗酸化作用がある。野菜や果物に含まれるアントシアニンが、エネルギー代謝、腸内最近叢、炎症などに好ましい影響をもたらす可能性が指摘されている。

 アントシアニンが多く含まれるのは、紫ジャガイモ、紫サツマイモ、大根、紫ニンジン、赤キャベツ、ベリー類、ブドウ、クワなど。

 「野菜や果物を食べて、アントシアニンを摂取することで、血糖と脂質の代謝の改善や、炎症の抑制、腸のバリアと微生物叢の組成の改善などを期待できます」と、同大学生命技術学部のカン チェン氏は言う。

 とくに、有機反応のひとつであるアシル化をしたアントシアニンが含まれる野菜や果物は、安定性や機能性などが高く、食べると消化吸収がゆっくりになり、腸内フローラのバランス改善やプロバイオティクス活性なども期待できるとしている。

 研究グループが、高脂肪食が与えて2型糖尿病にしたマウスに、アシル化アントシアニンの抽出物を給餌したところ、血糖降下作用をえられた。

果物の効果的な食べ方
糖質の少ない果物を選んで食べる

 果物は、糖質が多く含まれるものもあるため、とくに糖質を制限していると、食べるのを控えているという人は少なくない。確かに、100gあたりに含まれる単糖の量は、たとえば、温州ミカンは8.9g、キウイフルーツは9.6g、リンゴは12.4g、カキは13.3g、モモは16.6g、バナナは19.4gがそれぞれ含まれる。決して少ない量ではない。

 ただし、糖質が比較的低めの果物もある。たとえば、100gあたりの単糖量は、イチゴは6.1g、ブルーベリーは8.6g、ラズベリーは5.6g、オレンジは8.3g、グレープフルーツは7.5g、ナシは8.3g、アンズは4.8gとなっている。果物の食べ過ぎに注意したり、糖質の少ない果物を選んで食べる方法もある。

 海外の研究では、果物を1日100g以内食べていると、血糖、中性脂肪の値が改善し、体重も増加しないことが示されている。

 果物や緑黄色野菜には、ビタミンA(βカロテン)やビタミンC、カリウムなどのミネラル、フラボノイドなどが多く含まれる。これらには抗酸化作用があり、動脈硬化を予防する効果を期待できる。

 もちろん、果物をどれだけ食べると良いかについては個人差があるが、▼1日に100gを目安にして食べる、▼糖質が多い甘い果物の食べ過ぎは避けるなど、工夫をしながら食べれば、果物による健康効果を期待できそうだ。

 果物を食べるときは、できれば皮や芯まで含めて果物全体を食べるのが良いという研究も発表されている。また、フルーツジュースは、植物繊維などを摂れず、ビタミンなども低下しているものもあるので、100%果汁のものであっても飲み過ぎは勧められない。

国立研究開発法人 国立がん研究センター
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター
Association between vegetable, fruit, and flavonoid-rich fruit consumption in midlife and major depressive disorder in later life: the JPHC Saku Mental Health Study (Translational Psychiatry 2022年9月26日)
Purple Vegetables and Tubers Have Antidiabetic Properties (トゥルク大学 2023年2月15日)
Anthocyanins as Promising Molecules Affecting Energy Homeostasis, Inflammation, and Gut Microbiota in Type 2 Diabetes with Special Reference to Impact of Acylation (Journal of Agricultural and Food Chemistry 2022年12月14日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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