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2022年06月24日
肥満の男性は体重減少で精子の数を2倍に増やせる 糖尿病の治療薬で肥満症を治療
肥満のある人が体重をコントロールし、適正体重を維持することは健康増進につながるが、男性では、減量により精子の質も向上することが、デンマークのコペンハーゲン大学の研究で示された。
肥満のある男性が体重を減らし、適正体重を維持することで、精子の数は2倍に増えるという。
デンマークでも出生率は30年間で低下しており、この新しい発見は少子化問題の新たな解決策につながる可能性があるとしている。
精子の質の低下に悩んでいる男性は多い
世界的に精子の質の低下に悩んでいる男性は多く、出生数の減少とも関連があると考えられている。しかし、肥満のある人が体重コントロールに成功し、適正体重を維持すると、精子の質を向上できることが、デンマークのコペンハーゲン大学の研究で明らかになった。 「体重減少にともない、男性の精子の質に大きな改善がみられたことに驚いています。デンマーク人の18%が肥満であり、この新しい知見を活かせば、社会に大きな違いをもたらせる可能性があります」と、同大学保健医療学部のロマン バレス教授は言う。 日本を含む多くの先進国と同じように、デンマークでも出生率は30年間で低下しており、子供の人口は減少している。精子数の増加と出生数との関連はこれまでも指摘されており、今回の発見は少子化問題の新たな解決策につながる可能性がある。 デンマークでは、福祉の充実、女性の社会参加の増加、男女共同参画の推進、教育期間の延長などの少子化対策が行われ、家族のありかたも多様化している。肥満を解消し適正体重を維持できた男性は精子の数が2倍に増加
この臨床研究には、18~65歳で体格指数(BMI)が32~43の56人の肥満のある男性が参加した。 「今回の研究は、肥満の男性の精子の質は、持続的な体重減少により改善できることを示した、最初の長期ランダム化試験です」と、コペンハーゲン大学保健医療科学部のシグネ トレコフ教授は言う。 「男性の肥満が精子の質の低下に関連していることは、これまでも指摘されてきました。過去の研究でも、減量により肥満を改善すると、精子の質の向上につながることは示唆されていますが、参加者が少なかったり、体重減少がそれほど多くなかったため、結論を出すのは難しかったのです」。 研究に参加した肥満の男性は、平均して体重を16.5kg減らすのに成功した。その結果、減量の8週後に精子濃度は50%増加し、精子数は40%増加した。 減量から52週後も試験は続けられ、適正体重を維持した男性は、精子の質の改善も維持できることが示された。そうした男性は1年後、減量前の2倍の精子細胞をもっていた。ただし、減量に失敗し体重がリバウンドした男性は、精液の質はふたたび低下した。8週間で体重を減らすと精子濃度と精子数は改善
糖尿病治療薬のGLP-1受容体作動薬で肥満症を治療
肥満症の薬物療法では、糖尿病治療薬であるGLP-1受容体作動薬が使われた。GLP-1受容体作動薬には、血糖値を下げる作用に加えて、「体重を減らす」「食欲を抑える」という特長があることが知られている。 GLP-1受容体作動薬は、週1回の注射で効果が持続するものや、飲み薬もあり、海外では肥満症の適用が追加されている(日本では現在のところ、肥満症の治療に使うのは保険適用外)。 1年後、運動のみで薬物療法を受けなかった群と、肥満症の薬物療法のみで運動しなかった群は、13kgの体重減少を維持した。 肥満症の薬物療法を受け、運動も行った群は、減量から52週後も適正体重を維持できただけでなく、もっとも健康状態が改善し、精子の質の改善も維持できていた。 一方、プラセボを投与され、運動もしなかった群は、減少した体重の半分がリバウンドし、2型糖尿病と心血管疾患の発症に関連する多くの危険因子が悪化し、精液の質もふたたび低下した。 Men with obesity can double their sperm count (コペンハーゲン大学保健医療科学部 2022年5月23日)Sperm count is increased by diet-induced weight loss and maintained by exercise or GLP-1 analogue treatment: a randomized controlled trial (Human Reproduction 2022年5月17日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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