心臓発作を2度経験した女優スーザン・ルッチさんの使命――AHAニュース
米国で女優、テレビ司会者などとして活躍するSusan Lucci(スーザン・ルッチ)さんは、過去にも女性の心臓病のリスクについて啓発を続けていた。それにもかかわらず、彼女自身の心臓の問題をなおざりにしていた。
今年1月のある晩に、胸の辺りが不快になり息切れが生じた。何かがいつもと違っていた。しかし、夜も遅い時間だったため、医師に迷惑をかけたくないと思い、最初は夫にさえ伝えず、眠りについた。
ところがやがて、顎の左側の鋭い痛みで目覚めた。心臓発作が起きている可能性を考え、夫に勧められてホームドクターである心臓病専門医に電話をかけた。医師は躊躇せず、「すぐに救急外来(ER)に来るように」と答えた。
ルッチさんは、米国で1970年から41年間続いたテレビドラマ「オール・マイ・チルドレン」で人気を得て、75歳になった現在も活躍を続けている。
しかし2018年に彼女は心血管疾患の治療を受けていた。冠動脈の1カ所に90%、別の1カ所には75%の狭窄が生じていた。もっとも、冠動脈を押し広げるステントを留置する血管内治療により、症状は回復した。
「私の人生はその時、すぐに正常に戻った。退院の2日後にはステージに上がり、以前と同じ素晴らしい人生が続いていた」と彼女は振り返る。
それまでも食事に気づかい健康的な生活を送っていると自負していたルッチさんは、最終的に病院に搬送されるまで数週間にわたる自覚症状を無視していた。
彼女はその時に自身が受けた医療に感謝するとともに、忙しい日々の生活に、新たな活動を追加した。女性の心臓病のリスクについての啓発活動だ。自分自身の体験を語ったり、米国心臓協会(AHA)の女性向けキャンペーンの大使になって、他のボランティアや心臓発作サバイバーとともにロビー活動も行った。
「私の使命は、私の身の上に起きたことを女性たちに話すことだ。自分の体に耳を傾け、ケアをする時間を作ってほしい」と彼女は語っていた。
しかし、今年1月のその夜、彼女自身がそのメッセージを十分生かしていなかった結果が現れた。「初めの経験から私は何も学んでいないようだった。私は自分の冠動脈に再度問題が起きるとは全く考えていなかった」。
2018年に治療された冠動脈の閉塞は、遺伝的因子も関係してカルシウム沈着により引き起こされたものだが、新しい閉塞はコレステロールによるものだった。
「率直に言って、自分以外に責任はない」と彼女は語る。健康的な食生活の信奉者を自負する彼女は、冗談交じりに「サーモン、ブルーベリー、ケールだけで生きている」と語るほどだった。しかし、新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、食生活に変化が現れ始めた。
「私はそれまでの食事パターンをやめ、パスタ、アイスクリーム、甘い菓子などを食べ始めていたし、夫が料理したものを食べるようになっていった。その後、ロックダウンによる生活への影響は解消されたが、食生活は元に戻らなかった」。
2度目の冠動脈病変は80%の狭窄だった。初回と同様にステントで治療され、その日のうちに退院して運動療法を開始した。
ルッチさんの心臓を治療した米セントフランシス病院のRichard Shlofmitz氏は、「彼女の心臓は新品同様と言える。コレステロール低下薬を服用していることもあって、経過はたいへん良い」と話す。
女性の心臓病リスクに関する人々の意識を高めたいという彼女の使命は今も変わっていない。米国の女性の死因の3分の1は心血管疾患であり、全部位のがんによる死亡者数の合計を上回っている。
Shlofmitz氏も、「女性は生活の中で多くの役割を果たしており、自分の体調が悪いと感じても後回しにしてしまいがちだ。それで何も起きずに済むこともある。しかし、問題が起きてから検査や治療を受けるよりも、問題が起きる前に検査を受けて体調を保っておく方が良いことは疑いない」と、女性の健康意識向上の必要性を強調する。
ルッチさんには、疾患啓発に対する強い熱意がある。それでも数年前に起きた初回のエピソードが、今回の記事の一部として書かれることを、当初は望んでいなかった。
「私は愚かだった。そのために恥ずかしい思いをした」と彼女はその理由を語る。
しかし彼女は今、「自分の恥を隠すのではなく語ることで生まれる、より重要なことがあるかもしれない。私は信じられないほど幸運だった。その運を生かして人々に大切なことを伝えたい」と話している。
[American Heart Association News 2022年2月14日]
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Photo Credit: スーザン・ルッチさん(Photo by Justice Apple)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所