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2022年01月27日

CGM(持続血糖測定)が糖尿病患者の血糖コントロールを改善 多くの患者が使えるようにするべき

 持続血糖モニター(CGM)が、2型糖尿病患者の血糖コントロールを改善するという研究が発表された。

 CGMは、多くは1型糖尿病の血糖コントロールを改善するために利用されているが、2型糖尿病でも有用であることが示された。インスリン治療を行っている患者では、危険な低血糖のリスクを減らすのに効果的であることも分かった。

 米国糖尿病学会(ADA)や英国糖尿病学会(Diabetes UK)などは、より多くの糖尿病患者がCGMの恩恵を受けられるようにするべきというコメントを発表した。

CGMで血糖変動を見える化できる

 血糖値は、血液中のブドウ糖(血糖)の量を示す。血糖値は1日のなかでも時間とともに変化し、食事の内容や量、運動やストレスなど、さまざまな要因で変動している(血糖変動)。

 糖尿病の治療では、食事と運動、さらに必要に応じて飲み薬やインスリンなどの薬による治療を行い、血糖値を目標値に近づけることが目標となる。そのために、自分自身の血糖値を知ることは重要となる。

 多くの糖尿病患者が利用している血糖自己測定(SMBG)では、自身で指先などに穿刺針で刺して、ごく少量の血液を出して血糖値を測定する。

 いま使われている血糖自己測定器は、手のひらサイズの小さいもので、ごく少ない血液量で簡単に血糖値を測定できる。穿刺器具(血液を採取するための器具)も改良が重ねられ、針はとても細く、痛みもかなり少なくなっている。

 しかし、SMBGで分かるのは1日数回の測定時の血糖値のみで、また測定のたびに指先などを穿刺しなければならないので、測定回数が増えると患者の負担は大きくなる。

 これに対して、持続血糖モニター(CGM)は、皮下に刺した細いセンサーにより皮下の間質液のグルコースを連続して測定し、血糖値を推定するデバイス。日本でも、1型糖尿病と血糖コントロールが難しい2型糖尿病の患者が利用している。

 間質のグルコース値は、血糖値と高い相関関係にあるので、CGMにより1日の血糖値の動きが持続的に視覚的に分かる。患者が自分でリアルタイムに血糖変動を見ながら生活できるフラッシュ グルコース モニタリング(FGM)も利用されている。

 CGMは、1日24時間連続して血糖の変動を測定でき、血糖の日内変動の傾向が分かる。SMBGではみつけにくい夜間や早朝の低血糖や、食後の高血糖、さらには血糖の上下の変動などもモニターできる。

CGMが2型糖尿病患者の血糖値を改善

 米ミシガン大学医学部は、血糖コントロールが不十分な2型糖尿病患者175人を対象に、15の医療機関でCGMとSMBGを比較する研究を行った。その結果、1~2ヵ月の血糖値を反映するHbA1cが、8ヵ月間で大幅に改善することが明らかになった。

 糖尿病患者がCGMを使用し、血糖を連続してモニタリングするメリットについては、これまでも実証されている。しかし、実際に使用できるのは、1日も何度もインスリン注射を行う1型糖尿病や2型糖尿病の患者に限られていた。

 今回の研究では、長時間作用する基礎インスリンのみで治療を受けていて、血糖コントロールが良くない2型糖尿病患者を対象に試験を行った。この長時間作用型のインスリン(持効型溶解インスリン)は、作用が持続する時間は約24時間で、最大作用に明らかなピークがない。1日1回または2回注射して作用するよう設計されている。

 その結果、SMBGのみを行ったグループでは、HbA1cは0.16%低下したのに対し、CGMを使用したグループでは、HbA1cは1.1%低下した。CGMを使用した患者は、治療に対する満足度も高かった。

 「CGMで治療を行うと、従来のSMBGに比べ、血糖値が大幅に改善し、低血糖のリスクを減らすのにも効果的であることが示されました」と、同大学医学部の内科医であるロディカ ブスイ氏は言う。

 「CGMは主として、1日に頻回のインスリン注射をしている患者さんや、低血糖のリスクの高い患者さんが利用していますが、もっと幅広い患者さんにとって有用であることが示されました」。

 「より多くの糖尿病患者さんが、この画期的なテクノロジーを利用できるようにするのが望ましいと考えられます。CGMを使用するメリットについて医師も学ぶ、適切な患者教育をできるようになれば、糖尿病のコントロールをより改善できる可能性があります」としている。

CGMを使えるのは富裕層のみ?

 ただし、持続血糖モニタリング(CGM)にも欠点はある。医療費が高額になりやすいことだ。米国糖尿病学会(ADA)は、CGMへのアクセスについて、「実際に利用できているのは、高額の医療費を払える富裕層のみです」と、問題点を指摘している。

 日本ではすべての国民が公的医療保険に加入することになっており、国民皆保険制度と呼ばれている。それに対して、米国では大部分の人が民間の医療保険を主に利用している。米国の公的医療保険としては、低所得者を対象とするメディケイドと、高齢者などを対象とするメディケアがある。

 ADAの調査では、メディケイドに加入している糖尿病患者は、それよりも高額の医療保険に加入している患者よりも、CGMへのアクセスが2分の1から5分の1と低いことが判明した。

 また、メディケアに加入する高齢者の患者も、18歳未満のインスリン依存の小児・若年患者に比べ、CGMへのアクセスは5分の1と少ないことも分かった。

 「CGMには糖尿病の管理を変革し、糖尿病患者の生活を改善する可能性があります。しかし、実際には収入の少ない層の患者は、CGMにアクセスしづらい状況にあります」と、ADAは指摘している。

 「CGMのような、新しい糖尿病治療のテクノロジーへのアクセスに格差があり、不公平な状況がしばしばみられるのは、残念なことです」と、ADAの最高科学・医療責任者であるロバート ガッベイ氏は述べている。

より多くの糖尿病患者がCGMを使えるようにするべき

 英国国立医療技術評価機構(NICE)は2021年11月に、持続血糖モニタリング(CGM)とフラッシュ グルコース モニタリング(FGM)を、すべての1型糖尿病の成人が利用できるようにすることを推奨するガイドラインの草案を発表した。ガイドラインは2022年3月に発表される予定だ。

 1型糖尿病とともに生きるすべての小児患者にもCGMを推奨しているほか、1日4回以上のインスリン注射をしており、低血糖の頻度が高い、もしくは重度の低血糖を経験している2型糖尿病患者にも推奨している。2型糖尿病患者もCGMの恩恵を受けられるようにするべきだとしている。

 現状では、CGMやFGMには、限られた患者しかアクセスできないでいる。英国糖尿病学会(Diabetes UK)は、「このガイドラインは大きな前進です。すべての医療従事者がこのガイドラインに従う必要はないものの、大きな影響力があります」とコメントを発表した。

 「CGMは、糖尿病とともに生きる患者さんの生活を変える可能性のあるテクノロジーです。多くの患者さんの血糖コントロールを改善し、とくに1型糖尿病の子供とその保護者の生活を支えるようになる潜在的な可能性があります。低血糖に悩まされている高齢の患者さんにもベネフィットがあります」としている。

No more finger pricks: A continuous glucose monitor benefits patients with diabetes in more ways than one (ミシガン大学医学部 2021年7月26日)
Effect of Continuous Glucose Monitoring on Glycemic Control in Patients With Type 2 Diabetes Treated With Basal Insulin : A Randomized Clinical Trial (JAMA 2021年6月2日)
American Diabetes Association Releases Study on Access Barriers to Continuous Glucose Monitors at Cost of Care Summit (米国糖尿病学会 2021年11月8日)
Nice Draft Guidelines Recommend Wider Use of Flash And CGM (英国糖尿病学会 2021年11月24日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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