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2021年12月17日

緑茶やコーヒーを飲んでいると糖尿病リスクが低下 脳卒中や認知症のリスクも減少

 日本食が健康的な食事として世界的に人気が高い理由のひとつは、カテキンなどが豊富に含まれる緑茶を飲む食事スタイルであること。

 緑茶やコーヒーを飲んでいると脳卒中や認知症のリスクが減少することが、36万人以上を対象とした大規模な調査で明らかになった。

 2型糖尿病の人が緑茶やコーヒーを毎日飲むと、死亡リスクの低下につながるという研究も発表されている。

 緑茶に含まれるポリフェノールであるカテキンには、内臓脂肪や体脂肪を減らす効果や、コレステロールを減らしたり、活性酸素を除去する抗酸化作用があると考えられている。

お茶やコーヒーを飲んでいる人は脳卒中や認知症のリスクが低い

 お茶やコーヒーを飲んでいる人は、脳卒中や認知症のリスクが低いことが、中国の天津医科大学による研究で明らかになった。

 研究では、1日にお茶を3~5杯、あるいはコーヒーを2~3杯、あるいはお茶とコーヒーを組み合わせて4~6杯の飲んでいた人は、脳卒中や認知症の発生リスクがもっとも低いことが示された。

 研究グループは、英国バイオバンクに登録された50~74歳の中高年36万5,682人のデータを解析した。研究期間中に、5,079人が認知症を発症し、1万53人が少なくとも1回の脳卒中を経験した。

 英国バイオバンクは、約50万人の中高年を対象に追跡して調査している大規模研究。血液やDNAサンプル、生活習慣や身体活動レベルなどの関連を調べている。

 その結果、コーヒーとお茶を飲まない人と比べて、1日に2~3杯のコーヒーと2~3杯のお茶を飲んでいた人は、脳卒中のリスクが32%低く、認知症のリスクが28%低かった。コーヒーとお茶を組み合わせて摂取することは、脳卒中後の認知症のリスクの低下とも関連していた。

 「因果関係についてはよく分かっていないものの、コーヒーとお茶を別々に、または組み合わせて適度に飲んでいると、脳卒中や認知症のリスクが低くなることが示されました」と、天津医科大学のユアン チャン氏は述べている。

糖尿病の人が緑茶やコーヒーを飲むと死亡リスクが低下

 2型糖尿病の人が緑茶やコーヒーを毎日飲むと、死亡リスクの低下につながるという研究も発表されている。

 研究は、九州大学などが行っている前向きコホート研究「福岡県糖尿病患者データベース研究(FDR)」で明らかになったもの。研究グループは、平均年齢66歳の2型糖尿病の日本人4,923人を5年以上追跡して調査した。

 その結果、緑茶を飲んでいる人の死亡リスクは、1日1杯までは15%低く、1日2~3杯飲んでいる人は27%低く、1日4杯以上飲んでいる人は40%低いことと関連していた。

 コーヒーを毎日飲んでいる人の死亡リスクは、1日1杯までは12%低く、1日1杯飲んでいる人は19%低く、2杯以上飲んでいる人は41%低いことと関連していた。

 今回の研究は観察研究であるため、緑茶やコーヒーが健康にもたらす効果やメカニズムについて、詳しくは解明されていないものの、「緑茶やコーヒーには、ポリフェノール、テアニン、カフェインなど、抗酸化作用や抗炎症作用のある化合物が含まれています」と、研究グループは指摘している。

 このうちカフェインには、中枢神経に働きかけ、眠気や疲労を抑え、運動機能を高める興奮作用などがある。カフェインは、血糖を下げるインスリンの産生と感受性にも影響している可能性もある。

 ただし、カフェインを大量に摂取すると不眠症や神経症などにもなりやすくなる。カフェインの過剰な摂取にも注意が必要で、とくに夜遅い時間や就寝前には飲まないようにするなど工夫も必要だ。

緑茶を飲んでいる人は心血管疾患と脳卒中のリスクが低い

緑茶を週に3回以上飲む習慣が心血管疾患の予防につながる

 日本を含むアジアでは、緑茶やウーロン茶などを飲む習慣のある人が多い。そうしたお茶を飲む習慣が、健康増進につながっている可能性がある。

 緑茶をよく飲む人は、心血管疾患と脳卒中のリスクが低く、健康的な生活をより長く続けられるという、中国の大規模研究の結果が発表されている。

 緑茶を週に3回以上飲む習慣が、心血管疾患の予防につながり、健康的な生活をより長く続けられるという。緑茶は日本を含む東アジアでもっともよく飲まれているお茶だ。

 「お茶に含まれる活性化合物であるポリフェノールは、体内では長期間保存できない性質があります。お茶を飲むことでポリフェノールを補う習慣を長く続けていると、心臓の保護効果を得られる可能性があります」と、中国医療科学アカデミーのドンフェン グウ氏は言う。

緑茶に含まれるカテキンが長生きに影響?

 中国で、生活習慣と心血管疾患リスクの関連を調べることを目的に、大規模な「中国PAR」プロジェクトが1998年から実施されている。

 研究チームは、プロジェクトに参加した、心臓発作、脳卒中、がんの既往歴のない10万902人を対象に、(1)習慣的にお茶を飲む者(週に3回以上)、(2)ほとんど飲まない、習慣的に飲まない者(週に3回未満)の2つのグループ分け、7.3年追跡して調査した。

 その結果、お茶を飲む習慣のあるグループは、お茶を飲まないグループと比べて、心血管疾患と脳卒中のリスクが20%、致死性の心血管疾患と脳卒中のリスクが22%、全死因死亡リスクが15%低いことが明らかになった。

 とくにお茶を飲む習慣のある50歳以上の人は、飲まない人に比べ、虚血性心疾患と脳卒中の発症が1.41年遅く、1.26年長生きすることが分かった。

 研究者は、緑茶などに含まれるカテキンなどのポリフェノールが影響している可能性を指摘。緑茶に含まれるカテキンは、特有の苦渋味成分のもととなる物質だ。これらが、心血管疾患の原因である血中の脂質、リポタンパク質、血圧の値を低下させている可能性があるという。

Coffee and tea drinking may be associated with reduced rates of stroke and dementia(PLOS 2021年11月16日)
Consumption of coffee and tea and risk of developing stroke, dementia, and poststroke dementia: A cohort study in the UK Biobank(PLOS Medicine 2021年11月16日)
Drinking green tea and coffee daily linked to lower death risk in people with diabetes(BMJ 2020年10月2日)
Additive effects of green tea and coffee on all-cause mortality in patients with type 2 diabetes mellitus: the Fukuoka Diabetes Registry(BMJ Open Diabetes Research & Care 2020年10月21日)
Tea drinkers live longer(欧州心臓病学会 2020年1月9日)
Tea consumption and the risk of atherosclerotic cardiovascular disease and all-cause mortality: The China-PAR project(European Journal of Preventive Cardiology 2020年1月8日)
Drinking tea may improve brain health(シンガポール国立大学 2019年9月12日)
Habitual tea drinking modulates brain efficiency: evidence from brain connectivity evaluation(Aging 2019年6月14日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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