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2021年09月17日
「立ったままの時間」を増やすと糖尿病リスクは減少 「1日1万歩」のウォーキングは本当に必要?
立ったまま過ごす時間を増やすことで、2型糖尿病や肥満などの慢性疾患のリスクを減らせることが、新たな研究で明らかになった。
「シンプルに立ったまま過ごす時間を増やすだけでも、インスリンが効きやすい体に変えていくことを期待できます」と、研究者は述べている。
ウォーキングの目標として「1日1万歩」が目安とされることがあるが、1日に7,000歩程度でも、十分な健康効果を得られるという研究も発表されている。
「シンプルに立ったまま過ごす時間を増やすだけでも、インスリンが効きやすい体に変えていくことを期待できます」と、研究者は述べている。
ウォーキングの目標として「1日1万歩」が目安とされることがあるが、1日に7,000歩程度でも、十分な健康効果を得られるという研究も発表されている。
立位時間を増やすだけでインスリンが効きやすい体になれる
立ったまま過ごす時間を増やすことで、2型糖尿病や肥満などの慢性疾患のリスクを減らせることが、フィンランドの研究で明らかになった。
「毎日忙しくて、運動をする時間をつくれないという人でも、シンプルに立ったまま過ごす時間を増やすだけで、インスリンが効きやすい体に変えていくことを期待できます」と、研究者は述べている。
インスリンは、エネルギー代謝と血糖調節において重要な働きをしているホルモンだ。体内のインスリン機能が正常であれば、2型糖尿病や肥満のリスクを減らすことができるが、肥満などが原因で体がインスリンに正常に反応しなくなり、インスリンが効きにくくなるインスリン抵抗性が起こると、血糖値を正常状態に保つのが難しくなる。
立ったまま過ごす時間が多いことは、インスリンの効きやすさを示すインスリン感受性に関連していることが、フィンランドのトゥルク大学などの研究で確かめられた。
生活スタイルは、インスリン抵抗性と2型糖尿病の発症に強い影響を及ぼしている。運動不足の人がウォーキングなどの運動を習慣として行うようになると、インスリン感受性が改善し、血糖値が下がることが多い。
一方で、座りがちな生活パターンをもつ人が、座ったままの時間を中断して、立ったまま過ごす時間を増やすと、インスリン抵抗性にどう影響するかはよく分かっていなかった。
座ったままの時間を減らして立ち上がろう
そこで研究グループは、メタボリックシンドロームがあり、2型糖尿病と心血管疾患の発症リスクが高いと判定された40~65歳の中年男女に、活動量計を身につけてもらい、4週間の日常での身体活動を計測した。
さらに、グルコースクランプ検査や、空腹時のインスリン値や血糖値から算出されるHOMA-IRにより、インスリン抵抗性を評価した。
その結果、立ったまま過ごす時間が長い人は、毎日の運動量や座っている時間、肥満や過体重、身体活動レベル、心肺機能などに関係なく、インスリン感受性が良好である傾向がみられた。
「運動不足を指摘されているが、なかなか目標となる運動量をこなすことができないという人でも、毎日の座ったまま過ごす時間を減らし、立っている時間に置き換えることで、健康改善をできる可能性があります」と、トゥルク大学健康科学部のタル ガースウェイト氏は言う。
「運動を習慣として行うことが健康に対し有益であることは明らかですが、座りがちな生活スタイルも、体組成への影響を通じて間接的にインスリン代謝に関連していると考えられます」としている。
研究グループは、より長期間のランダム化比較試験も計画しており、たとえば座ったまま過ごす時間を毎日1時間短縮することが、インスリン感受性と血糖コントロールに加えて、肝臓や全身のエネルギー代謝と脂肪蓄積にどう影響するかを解明することを目指している。
必要な1日の歩数はそれほど多くない? 1日に7,000歩以上で十分
Standing is associated with insulin sensitivity in adults with metabolic syndrome(Journal of Science and Medicine in Sport 2021年8月14日)
Steps per day matter in middle age, but not as many as you may think(マサチューセッツ大学 2021年9月8日)
Steps per day and all-cause mortality in middle-aged adults in the coronary artery risk development in young adults study(JAMA Network Open 2021年9月3日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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