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2021年09月07日

ウォーキングなどの運動で糖尿病を改善 運動をはじめるのに年齢は関係ない

 運動は体に良いことは知っていても、「自分の年齢で始めるのはもう遅い」とあきらめている人も多いのではないだろうか。そんな人に朗報となる研究が、欧州心臓病学会(ESC)で発表された。
 年齢を重ねてからウォーキングなどの運動や身体活動を始めた人でも、以前から活動的だった人と同じくらいの、健康に対するベネフィットを得られることが明らかになった。
 「人生の後半になって運動を始めても、過去に運動不足の生活をおくっていたことの悪影響を軽減できます。運動を始めるのに遅すぎることはありません」と、研究者は述べている。
運動をすれば糖尿病のコントロールが良くなる
 運動をすると、筋肉でブドウ糖や脂肪の利用が増加し、とくに食後の血糖値の上昇が改善され、糖尿病のコントロールが良くなる。また、運動を続けることで、血糖を下げるインスリンの効きが良くなる。さらに、中性脂肪は低下し、善玉コレステロールは増加し、血圧の高い人では血圧も下がるなどの効果も得られる。

 しかし、運動は体に良いことは知っていても、「運動不足のまま年齢を重ねてしまい、いまさら運動を始めるのは遅いのではないか」と不安を感じている人も多い。

 そんな人に朗報となる研究が、欧州心臓病学会(ESC)で発表された。年齢を重ねてからウォーキングなどの運動や身体活動を始めた人でも、以前から活動的だった人と同じくらいの、健康に対するベネフィトを得られるという
年齢を重ねてから運動を開始するとどんなメリットが?
 心臓病のある患者にも、運動や身体活動を習慣として行うことが勧められているが、これまでの研究は調査した期間が短く、患者は生涯で自分が行う運動活動について変更する可能性があり、健康に長期間にどう影響するかをみていないものが多かった。

 そこでスイスのベルン大学などの研究グループは、9件の縦断的コホート研究から、冠状動脈性心疾患の3万3,576人の患者のデータを解析した。対象となった患者の平均年齢は62.5歳で、34%が女性、追跡期間(中央値)は7.2年だった。

 運動や身体活動について経時的に調査し、健康な人と同等の尺度で、アクティブであるか、非アクティブであるかを評価し、その経時的な影響を調べた。推奨される運動量は、中強度の運動を週に150分以上、活発な活動を週に75分、あるいはその2つを組み合わせて行うことだった。

 患者を、ベースライン時およびフォローアップ時の活動状態に応じて、4つのグループに分けた。「時間の経過にともない活動が増加したグループ」を非アクティブからアクティブへの変化、「時間の経過にともない活動が減少したグループ」をアクティブから非アクティブへの変化ととらえた。
運動不足だった人も、新たに運動を開始すれば恩恵を得られる
 その結果、ずっと活動をしていないグループに比べ、「ずっと活動的であったグループ」は、すべての原因による死亡リスクは50%減少した。さらに、「時間の経過にともない活動が増加したグループ」でも、死亡リスクは45%減少した。一方、「もともと活動的だったが減少したグループ」では減少は20%にとどまった。

 心血管疾患による死亡についても同様の結果が示された。心血管死亡のリスクは、ずっと活動をしていないグループに比べ、「ずっと活動的であったグループ」では51%減少し、「活動が増加したグループ」でも27%減少した。一方、「活動が減少したグループ」では差が出なかった。

 「今回の発見により、冠状動脈性心疾患のある患者でも、身体的に活発な生活スタイルを開始し、維持することで、大きなベネフィットを得られることが明らかになりました」と、ベルン大学社会・予防医学研究所のナターリア ゴンザレス氏は言う。

 「何年にもわたって、アクティブな生活スタイルを継続することは、健康長寿に最大限につながります。しかし、運動や身体活動をしていなかった人でも、新たにそれを始めることで健康寿命を延ばすことにつながることが分かりました。もっともリスクが高いのは、運動不足が続いていて、何もしない人たちです」としている。

 その一方で、「もともと身体的に活発な生活をおくっていた人は、それを維持できないでいる場合、それまでの身体活動によるメリットが減弱したり、消失してしまう可能性があります」と注意を促している。

1日の歩数を1,000歩増やすだけで死亡リスクは28%減少

 運動は体に良いことは知っていても、仕事や家事、育児で忙しくて、「運動をする時間がない」という人は多い。

 そんな人は、日常生活でなるべく体を動かすことを心がけるだけでも、そうした細切れの時間を集めると立派な「運動」になる。

 逆に、長時間座っていることは、心臓病、がん、うつ病、2型糖尿病、肥満などの健康上のリスクを高めるという研究も発表されている。

 米ノースカロライナ大学などは、ウェアラブルデバイスの活動計の機能を利用し、10分以上の途切れのないウォーキングや、階段の昇降などの日常での短い身体活動について調査し、どのような身体活動が健康にもたらす影響が高いかを調べた。

 研究グループは2011~2015年に、この研究に参加した1万6,732人の女性を対象に、ウェアラブルデバイスを身につけてもらい、週に4~7日間の身体活動について記録した。参加者は全員60歳以上で平均年齢は72歳だった。

 その結果、短い時間であっても体を活発に動かしており、1日の歩数の多い人は、中断のないウォーキングなどの時間の歩数に関係なく、より健康で長生きしていることが明らかになった。

 ウォーキングなどの運動で1日に2,000歩以上をカウントしていた人は、死亡リスクは32%減少したが、そうした運動をしていなくとも、仕事や家事などで1日の歩数を1,000歩増やすだけで、歩数が少ない場合に比べ死亡リスクは28%減少した。

 「どんな種類の身体活動であっても、座ったまま過ごす時間に比べずっと優れていることが、ウェアラブルデバイスを利用した研究で明らかになりました」と、ノースカロライナ大学チャペルヒル校疫学部の主任研究者であるクリストファー ムーア氏は述べている。

 「健康のために心がけたいのは、日常生活で座ったまま過ごす時間を減らし、細切れの時間でもよいので、なるべく体を動かすようにすることです」と指摘している。

It's never too late to get active(欧州心臓病学会 2021年8月24日)
Taking more steps daily may lead to a longer life(米国心臓学会 2021年5月20日)
Sporadic Step Accumulation And All-cause Mortality In The Women'S Health Study: Do All Steps Count?(米国心臓学会 2021年5月21日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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