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2021年04月07日

日本人はやせていても糖尿病に 「糖質」の摂り過ぎで脂肪肝や高中性脂肪に 腸内環境の変化が影響

 糖質の摂り過ぎによる腸内環境の変化が、脂質の代謝異常(脂肪肝、脂質異常症)の原因であることが、名古屋大学の研究で明らかになった。
 糖質の摂り過ぎは、腸内細菌叢にも変化をもたらし、脂肪肝や高中性脂肪を引き起こすという。
日本人はやせていても糖尿病になりやすい
 名古屋大学は、糖質の摂り過ぎによる、メタボリックシンドローム(メタボ)につながる、脂肪肝などの脂質代謝異常や、高中性脂肪症の原因は、腸内環境の変化であることを突き止めたと発表した。

 メタボは、2型糖尿病などの生活習慣病を発症する前段階で、内臓脂肪の蓄積や、血糖を下げるインスリンが効きにくくなるインスリン抵抗性が基盤にある状態。食事や運動などの生活スタイルを改善すれば、発症する前の段階に戻せると考えられている。

 メタボは一般に、太っていることを意味すると思われることがあるが、実際には、日本人は太っていなくともインスリン抵抗性があり、メタボと判定されることがある。日本人はやせていても2型糖尿病などの代謝異常のリスクが高い場合があるので注意が必要だ。

 「体力の低下」「身体活動量の低下」「内臓脂肪の蓄積」「高脂肪の食事」などが重なると、筋肉の質が低下し、糖を取り込みにくい体質(インスリン抵抗性)になりやすい。2型糖尿病のリスクの高い人は、早い時期から生活スタイルを見直すことが重要となる。
糖質の摂り過ぎが肥満や糖尿病の原因に
 これまでメタボの原因は、エネルギーの過剰摂取や、動物性脂肪(飽和脂肪酸)の摂り過ぎが主な原因と考えられてきた。

 ところが、最近の研究で、異性化糖などフルクトースを含む糖や、砂糖(ショ糖)の摂り過ぎが原因のひとつであることも分かってきた。

 このうちフルクトースは、多くはジュースやコーラなどの清涼飲料や、お菓子やスイーツなどの加工食品から摂取されている。

 フルクトースは糖の中でも甘味が強く、工業的に安定して生産でき、価格が安いので、多くの加工食品に用いられている。世界のフルクトースの消費量は急速に増えている。

 ごはんやパン、穀類、いも、カボチャなどの野菜に含まれる炭水化物が複合糖質であるのに対し、フルクトースやグルコースは吸収されやすい単糖類だ。多量を摂り続けると体重増加や肥満、メタボ、脂肪肝、高中性脂肪、高尿酸血症、肥満などにつながりやすい。

 そのため世界保健機関(WHO)は、糖質の摂取量を1日の総エネルギー摂取量の5%を超えないよう勧告を出している。この量は、平均的な体格指数(BMI)の成人で1日当たり約25g、砂糖に換算すると小さじ6杯分に相当する。

関連情報
脂肪肝は糖尿病を悪化させる
 脂肪肝は、肝臓に中性脂肪がたまっている状態。放っておくと動脈硬化が進行しやすくなり、肝臓の機能が低下したり、肝硬変や肝臓がんなどの深刻な病気に進展してしまう。2型糖尿病や肥満のある人は、とくに脂肪肝になりやすいので、注意が必要だ。

 アルコール摂取しない人が脂肪肝を発症する場合は、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)と呼ばれ、メタボや肥満が大きく関わっていると考えられている。

 食事療法では、3度の食事をバランス良くとり、なるべく間食をとらないよう心がけ、飲み物はエネルギーのないお茶などにする。食べたものは肝臓に運ばれ、体を動かさないでいると脂肪になってたまってしまうので、就寝の2時間前までには食事を済ませておく。

 運動療法は、1日30分の活発なウォーキングが勧められる。とくに肝臓の脂肪は、運動してから10分たたないと燃え出さないので、途中でやめないで一定の時間、続けるのが理想的だ。

 また、高中性脂肪は、脂質異常症のひとつで、血中に中性脂肪がたまった状態。中性脂肪はエネルギー源として働くが、消費しきれずに余った分は、肝臓や脂肪細胞に蓄えられる。血液中のコレステロールや中性脂肪が増えすぎた状態になると、動脈硬化が進行しやすくなり、心筋梗塞などのリスクが高まる。

 これまでは高コレステロールが動脈硬化症の危険因子と考えられてきたが、最近では高中性脂肪も危険因子と考えられるようになった。
糖質の摂り過ぎにより腸内環境が変化
 これまで、フルクトースがなぜ脂質代謝の異常を引き起こし、メタボにつながるかは、よく分かっていなかった。

 フルクトースやショ糖による脂質代謝異常の主要な臓器が肝臓であり、消化管からフルクトースが大量に肝臓に流れこみ、脂質代謝異常が起引き起こされると考えられていたが、これだけでは代謝異常をすべて説明できないという指摘もある。

 そこで、名古屋大学の研究グループは、糖質の摂り過ぎによる腸内環境の変化が、脂質の代謝異常(脂肪肝、脂質異常症)の原因であることを明らかにした。

 つまり、糖質の摂り過ぎにより、大腸の腸内細菌叢が変化し、これが脂肪肝や高中性脂肪症の原因となっていると考えられるという。

 研究は、名古屋大学大学院生命農学研究科の小田裕昭准教授らを中心とする研究グループによるもの。研究成果は、科学誌「The Journal of Nutritional Biochemistry」オンライン版に掲載された。

出典:名古屋大学、2021年
腸内細菌叢の変化が脂肪肝や高中性脂肪の原因
 研究グループはこれまで、ラットによる実験で、肝臓や小腸の体内時計が変化するために脂質代謝異常が起こることを示してきた。今回の研究では、ラットを炭水化物(スターチ)を与えたグループと、ショ糖を与えるグループに分け、その盲腸の腸内細菌叢を調べた。

 その結果、ショ糖を食べ過ぎると、大腸の腸内細菌叢に変化がもたらされることを明らかにした。さらに、腸内細菌を抗生物質で処理する実験により、この腸内細菌叢の変化が脂肪肝や高中性脂肪症の原因であることを突き止めた。

 つまり、フルクトースが肝臓に流れ込むのではなく、腸内細菌によって作られた何らかの因子が肝臓に作用して、脂質代謝異常を起こすと考えられるという。糖質の摂り過ぎにより、大腸の腸内細菌叢が変化し、これが脂肪肝や高中性脂肪症の原因となっている可能性がある。

 「砂糖や異性化糖などのフルクトースを含む糖の摂り過ぎが脂質代謝異常ならびにメタボを起こすメカニズムは、半世紀前の知見によっていました。今回、腸内細菌叢を介して作用するメカニズムがあることを明らかにしました」と、研究者は述べている。

 「糖質の摂り過ぎによる脂質代謝異常から導かれるメタボの予防は、その摂取を抑えるほかにほとんど知られてきませんでした。今回の研究により、腸内環境を整えることで、脂質代謝異常やメタボを予防できる可能性が示されました。食品成分による予防も可能になるかもしれません」としている。

名古屋大学大学院生命農学研究科栄養生化学
High sucrose diet-induced dysbiosis of gut microbiota promotes fatty liver and hyperlipidemia in rats(The Journal of Nutritional Biochemistry 2021年3月8日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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