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2020年06月17日
【新型コロナウイルス】第二波はいつ来るのか? いま求められる理解と行動 感染症学会と環境感染学会が提言
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日本感染症学会と日本環境感染学会は「第一波を乗り越えて、いま私たちに求められる理解と行動」を公表した。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について、日本では現在は落ち着いている状況だが、またいつ大規模な流行が起こるか分からないとしている。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について、日本では現在は落ち着いている状況だが、またいつ大規模な流行が起こるか分からないとしている。
COVID-19の感染の広がりはまだ続いている
日本感染症学会と日本環境感染学会は6月15日、一般市民向けの提言「第一波を乗り越えて、いま私たちに求められる理解と行動」を公表した。
両学会は「世界的な広がりを見せる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を抑え込むには、私たち1人一人の理解と行動が極めて重要になります。新型感染症COVID-19の制圧のために引き続きご理解とご協力をよろしくお願いいたします」と呼びかけている。
日本では、COVID-19の流行の第一波を何とか乗り越え、5月25日には緊急事態宣言も解除された。しかし、依然として複数の地域で散発的なクラスターが報告され、水面下でのウイルスの広がりが懸念されている。
これまでに日本では1万7,000人を超える感染者が報告され、900人以上が死亡している。今は落ち着いている状況だが、またいつ大規模な流行が起こるか分からない。
世界的にみると総感染者数は730万人、総死亡数は41万人と増え続け、最近ではブラジル、南アフリカなど南半球の国々でも感染者数の急増が報告されている。インドをはじめとする南アジア、中東の国々でも感染者数の急激な増加が報告されている。
両学会は「COVID-19の世界的な感染の広がりはまだ続いています」と強調。外からの感染者の流入は抑えられている状況だが、いつまでも鎖国状態を続けるわけにはいかない。海外からの感染者の流入を抑えるためには、空港などでの水際対策の強化と徹底が極めて重要になるとしている。
マイクロ飛沫を抑えるためにはマスクが有効
COVID-19の感染様式として、飛沫感染、接触感染に加えて会話・発声にともない排出される小さな飛沫(マイクロ飛沫)が重要であることが明らかとなっている。
これまでインフルエンザ対策では飛沫・接触感染対策が中心だったが、COVID-19では会話・発声による感染伝播にも注意する必要がある。
このウイルスは唾液腺にも感染し、唾液中に高濃度のウイルスが排出される。大きな声・密接した状況での会話や荒い息遣いが生じる状況として、ライブハウス、キャバレー、スポーツジム、カラオケ、立食パーティーなどでの感染例が報告されている。
唾液によるマイクロ飛沫を抑えるためにはマスクの着用が有効だ。最近では、米国CDCやWHOもマスク着用の重要性を支持するようになっている。
狭い空間、換気の悪い密閉した場所はリスクが高い
政府および保健所を中心としたクラスター班による集団感染事例の解析が行われ、COVID-19の感染伝播のリスク因子が明らかになってきた。「密集」「密接」「密閉」といういわゆる3密は、それぞれがCOVID-19の感染リスクとなり、重なることによりさらにリスクが高まることが分かっている。
不特定多数の人が集まる大規模イベントでは密集が生じるリスクが高まる。キャバレーや立食パーティーでは密接した状況での会話が問題になる。狭い空間、換気の悪い密閉した場所では、マイクロ飛沫を吸い込むリスクが高まるからだ。
両学会は「3密を避けるためには、1人ひとりが感染のリスクを理解し、想像力を働かせながら危険を避ける行動をとることが重要になります」と呼びかけている。
若者から高齢者に感染するおそれがある
COVID-19の特徴のひとつは、基礎疾患をもつ高齢者で重症例が多いことだ。一方で、30歳以下の若者や子供・乳児などでの重症例は少ないことも明らかになっている。
「大事なポイントは、若年者も感染を受けるリスクは高齢者と同様であるということです。しかし、若年者は症状が軽い(あるいは無症状)ために、自覚しないままに他人に感染を伝播させてしまう危険が高まります」と、両学会は指摘。
若者の間の感染が高齢者にまで及ぶと、重症例として診断されるようになり、集団として認められるとクラスターとして報告されるようになるとしている。
検査の体制が整い、さまざまな検査を行えるようになってきた
2月~3月の段階ではPCRなどの遺伝子検査の受付可能な検査数が限られていたため、重症例およびクラスター対策を優先するという方針で検査が行われていた。
だが現在では、受け入れ検査数の増加とともに、患者数の減少もあり、必要と判断される患者に対して検査ができる体制となっている。
さらに最近では、鼻咽頭拭い液を用いてウイルスの抗原を30分で検出する方法が承認されるとともに、血液中の抗体を迅速かつ正確に検出する検査法の検討が進んでいる。
検査にはそれぞれ感度(陽性者を陽性と判断する)と特異度(陰性者を陰性と判断する)があり、いずれも100%という検査法はない。検査をうける必要があるのか、受けるとすればどの検査が適切であるのかに関しては医師と相談しながら考えていく必要があるとしている。
感染しても症状のない人も多い
COVID-19では、症状がまったくない人が同ウイルスを上気道に保持している、いわゆる無症状感染者が存在することが明らかとなっている。この人たちは症状がないため、自分が感染していることに気付かない。
3密などの危険な状況では、無症状感染者が他の人に感染を広げてします可能性がある。「若者などを中心とする無症状感染者からの感染が水面下で広がり、突然、症状を有する感染者が多数みつかってくるようなケースも考えておかなければなりません」と、両学会は警鐘を鳴らしている。
熱中症対策も必要 感染リスクの低い場合はマスクを外す
マスクの着用は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の蔓延を防ぐために重要であることは前述した通り。しかし一方で、夏はマスクによる熱中症のリスクを高める可能性があることに注意しなければならない。
人と対面で接する場合にはマスク使用を原則とし、感染のリスクの低い場合にはマスクを外すことも可能だ。近距離で会話をする場合にはマスクが必要だが、人通りの少ない道を歩く、あるいはジョギングする場合にはマスクは必ずしも必要ではない。
「いつでもどこでもマスクという考え方よりは、3密のリスクを考え、新型コロナウイルスの感染のリスクを減らさなければいけない場面でのマスクの着用を考えていくことが必要です」とアドバイスしている。
「私たちは、少なくとも数年はCOVID-19と共存していくことを覚悟しておかなければなりません。持続可能な、メリハリをもった感染対策の在り方を考えていく必要があります」。
第二波は来るのか? いつ頃、どのくらいの規模で?
日本でCOVID-19の第二波は来るのかは、誰にも分かっていない。
風邪コロナウイルスの特徴は、気温の低い冬に多く分離されるのに対し、6月~8月の夏にはその分離頻度が低下することだ。SARS-CoV-2は新型コロナウイルスの一種なので、この特徴が同じようにみられるかもしれない。
しかし、もし風邪コロナウイルスとしての特徴があるとすれば、11月以降の秋から冬にかけて増加することを想定しておかなければならない。
その場合、第一波に比べて長丁場の戦いとなることになる。第一波は2月~5月までの4ヵ月間だったが、今度は11月~5月であるとすると7ヵ月にわたり流行が持続する可能性がある。
「ただ、私たちは第一波で多くのことを経験し、この感染症に対する対応法を身につけてきました。PCR検査などの診断法でも格段の改善がみられています。たとえ第二波が来たとしても、決してパニックになることなく、冷静に対応していくことが極めて重要になります」としている。
差別や偏見をなくす 社会全体の連携・協力が重要
COVID-19には無症状感染者(キャリアー)が存在し、その広がりが蔓延で重要な意味をもっている。この点で、誰もが感染する(感染している)可能性があり、誰もが感染を広げてしまう可能性もある。
どのような背景かは不明な部分もあるが、感染者やその家族に対する差別や、医療従事者に対する偏見があったことが報道されている。新型コロナウイルスという新しい病原体による感染症を制圧するためには、1人ひとりの理解と行動とともに、社会全体としての連携・協力が必須になる。
「COVID-19に関連して差別や偏見が起こらないように、私たち感染症関連学会としても引き続き活動を続けていきたいと思います」と、両学会は述べている。
一般社団法人 日本感染症学会
一般社団法人 日本環境感染学会
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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