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2020年06月17日
「コロナで運動不足に」 運動を楽しく長続きさせる秘訣 健康運動は自分を守るために必要
新型コロナウイルス感染症への対策で、3密を避けたり、テレワークやステイホームが増えたために、運動不足におちいっている人が多い。
どうしたら、運動を楽しく効果的に続けられるか、健康運動指導士でヘルスケアトレーナーの菅野隆さん(健康創研 代表、日本健康運動研究所 代表)にお聞きした。
どうしたら、運動を楽しく効果的に続けられるか、健康運動指導士でヘルスケアトレーナーの菅野隆さん(健康創研 代表、日本健康運動研究所 代表)にお聞きした。
人生100年時代 健康運動はますます必要に
菅野さんは30年以上にわたり、自治体や企業の現場で健康運動の指導を実施してきた。運動のテーマは、肥満・メタボリックシンドロームや2型糖尿病の改善、ロコモティブシンドロームの予防、介護予防、メンタルヘルスのためのボディワークなど幅広い。
「人生100年時代とも言われており、健康に年齢を重ねて健康長寿を実現するために、運動を続けることは必須です。これに加えて、世界的な新型コロナウイルス感染症の流行により、これまでの生活スタイルや価値観、社会構造までを変えざるをえない大きな転換期を迎えています。運動を続ける意義はますます大きくなっています」と、菅野さんは話す。
3密(密閉・密集・密接)を避けることを守り、ソーシャルディスタンスを確保するために、公共の運動施設やスポーツジムを利用しづらくなり、自粛によるテレワークやステイホームを実行し、運動不足におちいっている人が多い。
しかし、健康運動は免疫を強化し感染症に予防・対策するためにも必要だ。ストレスを緩和・解消するのにも運動は役立つ。「すべての人が個人レベルで、自宅や身近な環境で、自己を守るためのルーティンとして、健康運動を続けることが切実に必要とされています」と菅野さんは強調する。
忙しい働き盛り世代も無理なく続けられる運動が必要
一方、ネットなどで公開されている運動指導の動画は、足やお腹を綺麗に見せるといった美容に特化し断片的な内容となっているものや、すでに運動を実践できている上級者向けのものなどが多く、忙しい働き盛りの年齢層が利用できるものが少ないという。
運動をする習慣のない初心者や、これまで無関心だったり苦手意識がある人、また痛みなどの不定愁訴を抱えている人を対象に、「無理なく、簡単に、効果的に継続できる運動」が必要だとしている。
菅野さんは最近は、インターネットを活用したオンラインでの運動指導も増えているという。これから健康運動を始めたいが、「どんな運動がいいのかわからない」「忙しくて時間をとれない」「続けられない」という人に向けて、菅野さんは豊富な運動指導の経験から、次のポイントをアドバイスしている。
なぜ健康運動をルーティン(日課)として続けることが大切なのか
運動は、肥満やメタボ、高血圧、脂質異常症、2型糖尿病などの生活習慣病を予防・改善するために効果的だ。
運動を習慣として続ければ、腰痛・肩こり・冷えなどの身体的痛みや不定愁訴も改善でき、さらには、ストレスの軽減・解消、うつなどの心の病のリスク低減にも役立つ。
運動を続けていれば、筋肉量が増え、代謝が良くなる。血糖値を下げるインスリンの効きやすい体質に変わっていく。運動には筋力を向上させるだけでなく、骨の強度を維持し、バランス能力や柔軟性、持久力を向上させる効果もある。
運動不足が続いて、歩く速度が遅くなっていたら、「ロコモティブシンドローム(ロコモ)」が始まっているおそれがある。ロコモとは、運動器に低下や障害が起こり、立ったり歩いたりする機能が衰えた状態のこと。
運動はロコモの予防・改善にも役立つ。将来に転倒や寝たきりになるのを防ぐために、若いうちから健康を運動をルーティンとして続けることが大切だ。
どうしたら無理なく健康運動をルーティンにできるか
■ 運動に対する思い込みを変える
適切な運動は、体を軽く、快適にし、疲れにくくしてくれる。全身を気持ち良く動かす有酸素運動は、筋ポンプ作用で全身の血液循環を促進し、代謝やデトックス効果を高め細胞レベルで活性化してくれる。筋力トレーニングは、体にもともと備わっている身体機能を発揮できる機能快と体感的自信を高めてくれる。
「時間や余裕がないという人」も、そう思い込んでいるだけで、運動の効果が分かれば、自分なりに工夫して運動を続けられるようになることが多い。適切な運動には、体感覚を軽くし、開放し、快適にしてくる効果があるが、運動をしないことに慣れてしまうとそのことに気付けなくなる。運動不足になりネガティブループにおちいらないよう、運動に対する思い込みを変えることが大切。
■ 現状を把握し、目標を明確にする
健診を受け今の自分の健康状態を知り、適正体重より多過ぎたり少な過ぎたりしていないか、検査値に異常が出ていないかを知ることが大切。その上で、達成したい健康状態や体力レベルを設定する。
達成したい目標を数値であらわせば、運動へのモチベーションは向上する。目的地を決めれば、そこにたどり着くことができるようになるので、ゴールを明確に決めることはとても重要。
運動は楽しみながら続けることが大切で、そのためにゲーム感覚で取り組んでみたり、目標を達成したら自分にご褒美(インセンティブ)をあげるといった工夫も役立つ。
簡易体力測定などて自分の現状の体力を把握することも有用だ。1年に1回は健診を受けて、運動を続けることで検査値がどう変わるかを確かめることも、モチベーションの向上に役立つ。
■ 1週間のサイクルで、時間、曜日で実施することを決める
運動を自分の生活の状況やパターンの中に組み込むために、具体的にどんな運動をルーティン化するかを決めておくと、運動を続けやすくなる。
週単位で計画表を作成して、生活習慣に運動を無理なく組み込む。隙間時間を利用する、時間や天候などの制限の少ない室内トレーニングをメインにするなどして、より効果的な方法に変えていく。
具体的な「運動実践プログラム」作成し、目につくところに貼っておくのも効果的。壁などに貼れば、それを目にするたび脳に認知され、モチベーションを維持しやすくなる。
■ 運動を実践している状況をイメージする
■ 運動の実践状況を記録する
栄養・運動・休養などの記録をつけることは、健康管理にとって大切なこと。運動や体重の変化を記録するのは、効果が目に見えるので勧められる。最低でも2~3ヵ月は継続してみることが大切。記録することでフィードバックが働き、モチベーションを維持しやすくなる。
スマートフォンで専用のアプリを使ったり、エクセルなどの表計算ソフトを使いオリジナルなものを作成すると、運動が楽しくなり続けやすくなる。
具体的にどんな運動をしたらいいのか?
(1) コンディショニング運動
ストレッチや関節体操、体をゆるめリラックスさせる体操系の運動。運動強度が低いので軽視されがちだか、血液循環を良くし、快適に感じられる体を維持するために必要。
とくに運動習慣がなく、身体活動量の少ない人、強いストレスを感じている人、腰痛や膝痛などの痛みやこりに悩んでいる人、高齢者などの多くは、筋肉や結合組織が縮んで固くなっているおそれがある。関節の可動域も狭く、自覚的な体感も重いため運動意欲がわかなくなり、さらに運動不足になるというネガティブスパイラルにおちいるおそれがある。
コンディショニング運動は、準備体操として運動前に行うだけでなく、すき間時間などに日常的に、こまめに実践することが大切。
(2) 有酸素運動
ウォーキング、ジョギング、自転車、水泳、ダンスなどが一般的な有酸素運動。呼吸循環系の予備力を高め、全身の血行、代謝を促進することで、肥満やメタボリックシンドローム、2型糖尿病、血管性疾患などのの発症リスクを軽減する効果を得られる。
ウォーキングは、1日8,000歩(60~70分)程度でも、十分に健康増進の効果を得られる。ニコニコして人と話ができる程度の強度で毎日歩くことが推奨されている。忙しくて時間がない方は、工夫して10分でも多く歩くことが勧められている。
(3) 筋力トレーニング
骨格筋に適切な負荷をかけて筋肉を増強するトレーニング。現代人の生活は便利になり、筋力が必要とされる仕事や生活は少なくなっており、そういう人は経年的にどんどん筋量が減少してしまう。それが腰痛や膝痛の原因になったり、サルコペニア(加齢にともなう筋委縮)やフレイル(虚弱)など、高齢時の生活能力にも大きく影響する。
筋力トレーニングを行えば、筋量が増加することで筋力が高まり、体の動きや支持力が高まり、より楽に動けるようになる。また、腰痛、膝痛、骨粗鬆症、痛みやコリ、冷え性などの不定愁訴などの予防・改善の効果もあり、QOL(生活の質)が高まる。
ホームエクササイズは長続きしやすい
菅野さんの30年以上にわたる運動指導の中で、自宅で行える運動(ホームエクササイズ)は長続きしやすく効果的であることを実感しているという。ホームエクササイズは1畳ほどの空間があれば誰でもできる。東日本大震災の頃は、自宅で行える運動を指導するメリットをとくに感じたという。
4秒程度でゆっくり筋収縮に負荷をかけ、4秒程で戻し、休みを入れないで反復する「スロー筋トレ」を6回~10回程、週3回~4回の頻度で行うのは効果的だ。
チューブを使った筋トレも勧められる。座ったままでほぼ全身の部位のトレーニングができ、捻りながらのモーションで負荷をかけることもしやすいので、平面的な負荷のかけ方より広範囲に筋肉を鍛えられる。チューブはダンベルなどに比べ持ち運びが容易というメリットもある。
運動をポジティブにとらえ、無理をしないことも大切
「運動を"しなければならい"といった強迫観念や、"病気になりたくない"などの恐れにもとづいたネガティブな感情は、ストレスになったり、脳に逆の作用をもたらすことになるので勧められません」と、菅野さんは言う。
「運動は気持ちが良く、心身が軽くなり、快適になり、身体の機能が高まる、若返るいったように、ポジティブにとらえることで、脳の報酬系に働きかけられ、継続につながります。ドーパミン、セロトニン、エンドルフィンなどの脳内神経伝達物質の分泌が促進され、心身に良い影響がもたらされることが知られています」。
一方で、一念発起してやる気満々になり、頑張りすぎて、逆に脚や腰などを痛めてしまい、せっかく始めた運動を続けることができなくなることも珍しくないという。「いきなり歩数を倍に増やしたり、筋トレの負荷強度を高めたりなど、無茶をすることは勧められません。自分の体力を過信せず、最初は物足りないと感じる程度に、慎重に段階的に取り組むことも大切です」と、菅野さんは言う。
「健康運動は上手に、ほどほどに、楽しみながら行いましょう」と、菅野さんはアドバイスしている。
運動を始める前に注意する点
1. 治療を受けている人は、運動療法を行うときは、事前に主治医に相談しましょう。2. 運動をする際は、天候や運動を行う場所など環境に十分に注意しましょう。
3. 体調が悪いときや、風邪をひいているときなどは、運動をいったん中止しましょう。
4. 運動中に体調が悪くなるなど、体に異常を感じた場合は、ただちに運動を中止しましょう。
5. 体の異常が続く場合は主治医に話しましょう。
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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