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2019年12月17日
アルコールが糖尿病リスクを上昇 年末年始の飲み過ぎに対策
年末・年始は忘年会や新年会などで、お酒を飲む機会が増える。お酒は適量の場合はストレス解消の効果を期待できるが、量が増えると確実に健康を損なう原因になる。アルコールとの「上手な付き合い方」をご紹介する。
お酒は適量が大切 飲み過ぎは肥満の原因に
「酒は百薬の長」と言われ、飲酒は日常生活でさまざまな行事と深い関わりをもっている。飲酒は疲労の回復やストレスの解消あるいは人間関係を円滑にするなど、望ましい影響を与えてくれるが、その効果は適度な飲酒を守ることではじめて得られる。
アルコールに含まれるカロリーは1gあたり7kcalで、脂肪の9kcalに次ぐ高カロリーの食品だ。カロリーの他の栄養成分はほとんど含まれない(非蒸留酒には糖質が含まれる)。
はじめは「少し」と思っていても、つい飲み過ぎてしまうのがお酒だ。さらに、アルコールには食欲を高める作用もあり、食べ過ぎて肥満の原因になる。
アルコールを飲み過ぎないための7つの方法
アルコールに強い体質かどうかは遺伝によって決まり、日本人は4〜5割程度がお酒に弱い遺伝子をもっているとされる。下戸にとっては宴席で何を飲むかというのは切実な問題だ。
お酒を飲むときの注意点
■ | 口から入ったアルコールの大部分は肝臓で処理される。アルコールを大量に飲み続けると、肝臓での中性脂肪の合成が高まり、肝臓に蓄積され脂肪肝になりやすい。お酒の飲み過ぎは脂肪肝にとどまらず、肝炎や肝硬変にもつながる。ほどほどで切り上げることが大切だ。 |
■ | アルコールを飲むと食欲が増し、食べ過ぎにつながるおそれがある。これは、アルコールの代謝にともない代謝経路が変化し、主に肝臓での糖新生(糖質以外からの糖の産生)が抑制され、血液中の糖が減るからだ。その結果、糖質を含む食品を食べたくなる。 |
■ | アルコールを飲むときでも、食事は3食をきちんととることが大切。アルコールを飲むからといって、食事を抜くのは危険がともなう。 |
■ | お酒を飲んでいる間は、アルコールによってミネラルやビタミンが失われやすいので、それらの豊富に含まれる野菜などの植物性食品が、食物繊維も含まれるので勧められる。 |
■ | 枝豆や豆腐、魚などタンパク質を含む食品は、アルコール代謝酵素の活性を高める。ただし、お酒のつまみには塩分や脂肪が多く含まれていることが多い。勧められるのは、塩分・脂肪が控えめの料理だ。 |
■ | お酒を飲むときは水も飲む。アルコールには利尿作用がありトイレが近くなる。排出された水分を補わないと脱水状態になりやすい。また、水を飲むことで血中アルコール濃度の急上昇も抑えられるので、ほろ酔い気分が長く続く。 |
■ | お酒を控えていたり、飲めない体質の人は、周囲の人に「自分はお酒を飲めない」ことを事前に伝えておく。 |
■ | 会席やパーティーでは、ビールやウイスキーの水割りの代わりに、色が似ているウーロン茶やノンアルコール飲料を上手に利用する。 |
純アルコール量で約20gが限度
「糖質ゼロ」でもカロリーは「ゼロ」ではない
アルコールは低血糖の危険性を高める
アルコールはアルコールそのもの作用やアルコールの代謝にともなって血糖値に影響を与える。多量の飲酒は糖尿病の危険性を高め、特に肝障害や膵障害が加わるとコントロールが難しい糖尿病になるため、糖尿病患者は多量飲酒は避けた方が良い。
また、先述した通り、アルコールは低血糖を引き起こすことがある。とくに食事を十分にとらずに飲酒すると低血糖になりやすい。インスリン注射や経口血糖降下剤などで治療中の患者では、低血糖がより起こりやすくなるので、食事をとらずに飲酒することは原則として避けるべきだ。
アルコールは糖尿病を悪化させる
アルコールはがんのリスクも高める
「酒は百薬の長」と言われるが、少し飲み過ぎただけで、がんのリスクを高めるという研究も発表されている。
東京大学やハーバード公衆衛生大学院などの研究チームは、労働者健康安全機構が構築した全国33ヵ所の労災病院の入院患者12万6,000人以上のデータを解析した。
その結果、アルコール量23gを1単位として、1日1単位を10年間続けていると、がんのリスクは1.05倍に上昇することか明らかになった。
低~中等度の飲酒を10年続けていると、そうでない人に比べ、食道がんは1.45倍に、大腸がんは1.08倍に、喉頭がんは1.22倍に、前立腺がんは1.07倍に、乳がんは1.08倍に、子宮頚部がんは1.12倍に、それぞれリスクが上昇するという。
体内に摂取されたアルコールは肝臓で分解され、まずアセトアルデヒドとなり、さらに分解が進むと、最終的に水と二酸化炭素となり、体外に排出される。アセトアルデヒドは二日酔いの原因となり、発がん性がある。
日本人の多くは遺伝的にアルコール代謝の能力が弱いことが知られている。「日本の死因の第1位はがんであり、がんを予防するため、飲酒によるがん罹患リスクの啓発活動をさらに強める必要があります」と、研究チームは述べている。
健康日本21「アルコール」(厚生労働省)アルコール健康障害対策(厚生労働省)
Is drinking alcohol part of a healthy lifestyle?(米国心臓学会)
Alcohol Intake May Be Key to Long-term Weight Loss for People with Diabetes(ペンシルベニア大学 2018年12月3日)
Alcohol Intake and Weight Loss During Intensive Lifestyle Intervention for Adults with Overweight or Obesity and Diabetes(Obesity 2018年11月13日)
Light to moderate amount of lifetime alcohol consumption and risk of cancer in Japan(Cancer 2019年12月9日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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