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2019年07月05日
「低炭水化物ダイエット」が糖尿病リスクを減少 ただし長期の安全性には不安も
低炭水化物ダイエットに、メタボリックシンドロームや2型糖尿病など、代謝異常を改善する大きな効果があるという研究を、米オハイオ州立大学が発表した。
ただし、低炭水化物ダイエットの効果と安全性については、研究者の間でもさまざまな意見があり、長期的な安全性については確認されていない。
欧州心臓学会は「低炭水化物ダイエットは長期的には安全ではありません」という見解を発表している。
ただし、低炭水化物ダイエットの効果と安全性については、研究者の間でもさまざまな意見があり、長期的な安全性については確認されていない。
欧州心臓学会は「低炭水化物ダイエットは長期的には安全ではありません」という見解を発表している。
短期の低炭水化物ダイエットは糖尿病リスクを減らす
肥満は世界的に大きな健康問題であり、心血管疾患、高血圧、2型糖尿病、がんなどの慢性疾患の危険性を高める。
低炭水化物ダイエットは2型糖尿病のリスクが高い人とって有益であるという研究を、米オハイオ州立大学が発表した。4週間の低炭水化物ダイエットにより、メタボリックシンドロームから離脱できる場合もあるという。
研究には、メタボと判定された平均年齢が41.3歳、体格指数(BMI)の平均が39.3の16人の男女が参加した。
メタボは心臓病や脳卒中のリスクを上昇する要因になる。メタボは、高血圧、高血糖、ウェスト周囲径の増加(内臓脂肪の蓄積)、善玉のHDLコレステロールの低下、高中性脂肪が組み合わさり、心臓病や脳卒中などの動脈硬化性疾患をまねきやすくなった病態。米国心臓学会(AHA)によると、米国の成人の3分の1が該当するという。
低炭水化物ダイエットにより、参加者の半数以上(男性5人、女性4人)は、摂取エネルギーは同じで体重が変わらなかったにも関わらず、メタボの基準を満たさなくなり、離脱するのに成功した。
「肥満のある人が、低炭水化物ダイエットを短期間行うと、体重が減少し代謝障害が改善されます。たとえ体重が減少しなくとも、有益な効果を得られることは疑いようがありません」と、オハイオ州立大学のジェフ ヴォレック教授は言う。
低炭水化物ダイエットによりメタボから解放された人も
研究チームは4ヵ月をかけて、エネルギー消費量が同じになるように調整した、▼低炭水化物、▼中炭水化物、▼高炭水化物の食事を参加者に摂ってもらい、それぞれの間に2週間の休みを入れた。
参加者が食事を食べる順序はランダムに割り当てられた。3つの食事パターンはすべて20%のタンパク質を含み、▼低炭水化物ダイエット(炭水化物6%、脂肪74%)、▼中炭水化物ダイエット(炭水化物32%、脂肪48%)、▼高炭水化物ダイエット(炭水化物57%、脂肪23%)という内容だった。
その結果、低炭水化物ダイエットを1ヵ月続けた場合、さまざまな検査値が改善することが明らかになった。中性脂肪値は低下し、コレステロール値も改善した。
低炭水化物ダイエットは高炭水化物ダイエットよりも飽和脂肪酸を2.5倍多く含んでいたにもかかわらず、血液に取り込まれる脂肪は減少し、血中のコレステロール粒子のサイズが増加した。
また、低炭水化物ダイエットを摂ると、血糖コントロールが改善し、脂肪燃焼効率も上昇することが示された。血圧やインスリン抵抗性については改善はみられなかった。
炭水化物が32%の中炭水化物ダイエットを摂った時にも、3人がメタボに関わる検査値が改善し離脱することができた。「炭水化物を控えめに制限した場合であっても、効果を得られることが分かりました」と、ヴォレック教授は言う。
ただし、今回の研究の参加者は年齢が比較的若く、体格指数(BMI)の平均が39.3という高度な肥満だったことに注意する必要がある。「低炭水化物ダイエットはどのような人に効果的なのかを、今後の研究で解明する必要があります」としている。
「低炭水化物ダイエットは安全ではない」という見解も
長期の低炭水化物ダイエットは死亡リスクを上昇させる?
この研究では、1999~2010年に実施された米国民健康栄養調査(NHANES)に参加した2万4,825人を対象に、低炭水化物ダイエット、全死因による死亡、冠動脈性心疾患、脳血管疾患(脳卒中を含む)、およびがんによる死亡との関係を前向きに評価した。
その結果、炭水化物の摂取量がもっとも多いグループに比べ、摂取量がもっとも少ないグループでは、平均6.4年の追跡期間で全死因の死亡リスクが32%高かった。さらに、冠動脈性心疾患、脳血管疾患、がんによる死亡リスクも、それぞれ51%、50%、35%上昇した。
合計44万7,506人を対象とした平均追跡期間15.6年に及ぶ7件の前向きコホート研究のメタ解析でも、全死因、心血管疾患、がんの死亡リスクは、それぞれ15%、13%、8%上昇するという結果になった。
NHANES試験の参加者の平均年齢は47.6歳で、51%が女性だった。参加者の食事の炭水化物の摂取比率にもとづき四分位数に分けて調べたところ、平均6.4年の追跡期間中に全原因死亡および原因別死亡リスクは、炭水化物摂取率の減少ごとに上昇し、年齢、性別、人種、教育、配偶者、所得、総エネルギーなどの影響を考慮し解析してもこの傾向は変わらなかった。
研究チームは、年齢が55歳以上のグループと55歳未満のグループを比較して、体格指数(BMI)が30以上の肥満の場合と、30未満の非肥満の場合の、低炭水化物ダイエットと全死亡リスクとの関連について調べた。55歳以上で非肥満であるときに、もっとも強い関連性があることが浮き彫りになった。
基本はタンパク質・脂質・炭水化物のバランスをコントロールすること
低炭水化物ダイエットによりリスクが上昇するメカニズムについて、バナック教授は、動物性タンパク質、とくに脂肪の多い牛肉や豚肉、加工肉の摂取量が増えるおそれがあり、これらがリスク上昇と関連していることを指摘している。
「野菜や果物など食物繊維が多く含まれる食品の摂取量の減少と、動物性タンパク質、コレステロール、飽和脂肪酸のそれぞれの摂取量の増加も影響している可能性があります。ミネラルやビタミン、フィトケミカルの摂取にも違いが出てくると考えられます」と、バナック教授は指摘している。
「低炭水化物ダイエットは、短期的には、体重を減らし、血圧を下げ、血糖コントロールを改善すると報告した研究もありますが、今回の解析では、長期的にみると、原因別の死亡リスクとの関連について好ましくない結果が示されました。低炭水化物ダイエットを試すことを考えている人は注意するべきです」としている。
食事療法の基本は、エネルギー摂取量を過不足なく調整し、タンパク質・脂質・炭水化物のエネルギー比率を適正にコントロールすることだ。低炭水化物ダイエットを始めることを考えている人は、かかりつけの医師や管理栄養士に相談し、定期的な治療と検査を続けることが重要だ。
Dietary carbohydrate restriction improves metabolic syndrome independent of weight loss(Journal of Clinical Investigation Insight 2019年6月20日)
Low carbohydrate diets are unsafe and should be avoided(欧州心臓学会 2018年8月28日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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