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2018年04月09日

女性の「痩せ」志向は不健康 運動を通じて女性の活躍を促進

 日本の女性は先進国の中でも運動実施率が低く、もっとも痩せている。スポーツ庁などは、スポーツに取組む女性を増やす対策を開始した。
女性の体力が過去最低を記録
 スポーツ庁は、運動実施率の向上について検討するスポーツ審議会の健康スポーツ部会の会合を開き、日本の女性は先進国の中でも運動の実施率が低く、最も痩せている傾向があることが報告された。

 「スポーツの実施状況等に関する世論調査」(2017年)によると、女性のスポーツ実施率は50.2%で、男性の53.4%よりも低い。40歳代女性はもっともいちばんスポーツ実施率が低く、37.8%にとどまる。

 スポーツ庁の「体力・運動能力調査」によると、新体力テスト施行後の19年間の合計点の年次推移をみると、35歳から39歳の女性の体力が過去最低を記録した。一方で、55歳から59歳の女子の体力は向上傾向にある。30歳~40歳の女性は働き盛りで、育児や介護で忙しく、運動離れが進んでいるとみられる。
女性の痩せ志向は将来に大きなダメージに
 「日本の女性は先進国でもっとも痩せ傾向が進んでいます。日本の若年女性にみられる大きな特徴は、運動実施率の低迷と二極化です」と、順天堂大学国際教養学部グローバルヘルスサービス領域および順天堂大学大学院代謝内分泌内科学・スポートロジーセンターの田村好史氏は言う。

 田村氏によると、20歳前後の頃の体力で40〜50年後の予後や疾患が予測できるという。若年女性では「食べない」「運動をしない」「痩せている」という志向性が目立ち、結果として年齢が進んでからの肥満や2型糖尿病、骨粗鬆症、寝たきりにつながる骨折につながりかねない。

 痩せた人は肥満者と同等かそれ以上に死亡率や糖尿病の発症率が高いという調査結果がある。詳しく調べると、痩せた女性の38%が耐糖能障害で筋肉量が少ないことが関連している。

 運動不足、低BMIは骨量低下や骨折のリスクであり、転倒・骨折・関節疾患は女性の介護となる 原因の33%を占める。栄養の充足している場合、少なくとも18歳以前に強度のある運動を行うことが、骨粗鬆症の発症予防にもっとも効果的だ。
スポーツを通じて女性の活躍を促進
 これを受けて、政府の「未来投資戦略2017」では、女性のスポーツ実施率を向上させるために、国民および幅広い関係者に対してメッセージを発信する「女性スポーツキャンペーン」を実施することが決められた。

 「女性活躍加速のための重点方針2017」でも、「スポーツを通じた女性の活躍促進会議」を開催することが決定している。女性の「する」「みる」「ささえる」スポーツへの参画の促進のための環境を整備し、スポーツを通じて女性の社会参画・活躍を推進するという。

 日本では、女性の社会進出の問題や、その背後にある「女性らしさ」、男女の役割分担に対する社会的な価値判断・評価が強く影響し、女性のスポーツ実施率が伸び悩んでいる。

 スポーツ審議会の健康スポーツ部会は、日本の20代〜40代の女性のスポーツ実施率向上に向けた可能性を検討している。
女性は仕事、子育てなどの制約を受けている
 ▼女性はスポーツ自体に消極的なわけではなく、仕事、子育てなど、ライフステージにおける制約を受けている、▼加齢により、女性のスポーツに対する価値観に大きな隔たりが生まれている、▼そもそもの生まれ育った社会環境や生活習慣の影響が大きい、▼20代〜40代の女性では、ウォーキングなどは1人でも気軽にはじめられるという利点があるものの、飽きられ、やめてしまうのも早いのではないか――とスポーツ庁は推定している。

 対策として、女性のスポーツ実施率の向上のためのキャンペーンを実施し、女性スポーツ指導者の育成を支援、スポーツ団体における女性役員の育成支援を行うことを検討している。

 女性はライフステージの節目においてスポーツ習慣が途切れやすいと考えられる。その現状と課題を把握するとともに、女性のスポーツ参加を促進するキャンペーンを行う。

 スポーツのあらゆるレベル、あらゆる職務、役割における女性の参画を促進し、ライフステージの節目においてスポーツ習慣が途切れやすいという欠点を補う考えだ。
女性のスポーツ実施を促すキャンペーン 自治体の取組み
 英国は女性のスポーツ実施を促すキャンペーン「This Girl Can」を実施した。若者の行動パターンを細かく分析し、女性が「私にもできる」という自信を持ち一歩を踏み出す後押しをするメディアキャンペーンを展開した。

 女性がスポーツを楽しんでいる姿をソーシャルメディアで共有するよう呼びかけるなどして、結果として新たに26万人以上の女性がスポーツ習慣を確立したという。

 スポーツを通じた共生社会を実現するために、多様な人材の育成と活躍の場を確保することが必要だ。日本の自治体や企業も対策を進めている。

 スポーツ庁は自治体や企業の先進的な試みとして、東京都日野市とイオンモールが取り組んでいる「ふらっと健康運動体験教室」を紹介している。

 20代〜40代の子育て中の女性をターゲットに、幼稚園の園長、小学校の校長、児童館などの協力を得て、「ふらっと健康運動体験教室」のチラシを子供から母親に渡してもらうなどして、ダイレクトにアプローチしている。

 子育て中の女性は子供の在宅中に家を空けにくいため、学校が長期休暇になる4月や8月の開催は避けたり、子供が学校から帰宅する前にはプログラムを終了するなど、子育て中の女性が参加しやすいように工夫している。

 子供連れでの参加や、当日参加も可能で、イオンモールの利用者層の中心となる30代〜40代の女性がふらっと立ち寄りやすい環境を作っているという。
第4回スポーツ審議会健康スポーツ部会(スポーツ庁 2018年3月26日)
平成29年度「スポーツの実施状況等に関する世論調査」(スポーツ庁 2018年2月27日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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