ニュース
2018年04月05日
糖尿病患者の痛風リスクがフェノフィブラートで半減 FIELD試験
- キーワード
- フットケア情報ファイル 糖尿病合併症
FIELD(Fenofibrate Intervention and Event Lowering in Diabetes study)は2000年代初頭に海外で行われたフェノフィブラートによる心血管疾患抑制効果を検証した大規模臨床試験。対象は軽度脂質異常症を併発している2型糖尿病患者で、プラセボ対照無作為化二重盲検により平均約5年間追跡された。
事前に設定されていたエンドポイントの解析結果として同薬による初回冠動脈イベントの抑制、糖尿病網膜症・黄斑症の抑制などがこれまでに報告されてきた。また調査対象が約1万人と大規模であることから、現在に至るまで事後解析による知見の報告も続いている。今回の報告もその一つで、痛風関連イベントについて検討したもの。
本研究は、FIELDのデータベースを事後解析し、尿酸値の推移と痛風関連イベント発生率を実薬群とプラセボ群で比較している。
まず尿酸値についてみると、ベースライン時の尿酸値はプラセボ群5.38mg/dL、実薬群5.55mg/dLと、実薬群がわずかに高値だったが有意な差はなかった。試験開始1年後の時点で尿酸値が記録され評価が可能だったのは1,948例。その尿酸値は実薬群においてベースライン時より20.7%(95%CI:20.1-21.4)低値であり、プラセボ群に比し20.1%(18.5-21.7)有意に低かった(p<0.0001)。
1年経過時点における尿酸値の有意な群間差は、性、脂質異常症の有無、ベースライン時の尿酸値の高低といった患者背景によるサブグループにかかわらず認められた。また、アロプリノール(尿酸低下薬)が処方されていた患者群においては群間差が10.3%と縮小していたものの、有意差(p=0.0015)は保たれていた。
なお、尿酸低下薬以外で尿酸低下作用が報告されている薬剤としてARBのロサルタンが知られているが、本論文の著者らは、FIELDにおけるフェノフィブラートの尿酸低下作用はRENAAL(Reduction of Endpoints in NIDDM with the Angiotensin II Antagonist Losartan)で認められたロサルタンの尿酸低下作用よりも大きいと述べている。
図1 治療割付群別にみた痛風発作発生頻度の推移 |
![]() |
ベースラインの尿酸値で五分位に分けて解析すると、尿酸値が高い群ほどフェノフィブラートにより痛風リスクが大きく低下しており(図2)、ベースラインの尿酸値が0.42mmol/L(7.06mg/dL)以上で高尿酸血症を呈していた群においては、フェノフィブラートによる痛風発作抑制に必要なNNTが12(9-21)と計算された。
また観察期間中にプラセボ群で125例、実薬群で74例が新たに痛風に対する治療が開始されていた(オッズ比 0.55,0.41-0.74,p<0.0001)。
図2 ベースライン時の尿酸値五分位ごとの痛風発作発生頻度 |
![]() |
糖尿病による高血糖は尿酸排泄を増やし血清尿酸値を若干低下させるように働く。しかし糖尿病の基礎にあることが多い肥満やメタボリックシンドロームは高尿酸血症の明らかなリスク因子であり、実際には高尿酸血症を併発している糖尿病患者は少なくない。かつ、同様の理由によって、そのような患者では脂質異常症を併発していることが多々ある。
糖尿病で尿酸値と血清脂質がともに高い患者に対し、フェノフィブラート1剤で有益な多面的効果を期待できるかもしれない。
原典論文:
Effect of fenofibrate on uric acid and gout in type 2 diabetes: a post-hoc analysis of the randomised, controlled FIELD study〔Lancet Diabetes & Endocrinology 6(4):310-318,2018〕
フットケア情報ファイルの関連記事
- 京都大学発の新たな人工皮膚が承認 「糖尿病性潰瘍」に効果
- 糖尿病患者の痛風リスクがフェノフィブラートで半減 FIELD試験
- 糖尿病腎症による透析導入はやや減少 「健康日本21」中間評価
- 腎臓専門医への「紹介基準」を公表 日本糖尿病学会・日本腎臓学会
- PCSK9阻害薬の適正使用フローチャート 動脈硬化学会が見解を表明
- 糖尿病の人は「足の冷え」「しびれ」に注意 足の動脈硬化を改善
- 自分の足を知ろう 「足潰瘍」は合併症 足切断の5分の4は防げる
- ウォーキングで下半身を強くすると運動を続けやすい 「老化は足から」
- 水虫に対策するための8つのケア 糖尿病の人は夏こそ「フットケア」
- 次の診療で足を見てもらおう 「PAD」(末梢動脈性疾患)にご注意