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2018年03月23日
糖尿病の新たな5つの分類を提案 糖尿病の原因はひとつだけではない
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- 医療の進歩 医薬品/インスリン 糖尿病の検査(HbA1c 他) 糖尿病合併症
糖尿病は5つの病型に分類でき、それぞれに合った治療法を開発すれば、より治療を効果的に行えるようになる可能性がある――。スウェーデンとフィンランドの研究チームがこのほど、こんな提案を発表した。
研究は医学誌「ランセット糖尿病・内分泌学」に発表された。
研究は医学誌「ランセット糖尿病・内分泌学」に発表された。
糖尿病診断のパラダイムシフト
糖尿病は現在では大きく「1型糖尿病」と「2型糖尿病」と分類され、それ以外に、特定の疾患が原因で発症する糖尿病、妊娠糖尿病がある。
スウェーデンとフィンランドの研究チームはこのほど、糖尿病の分類を増やし、全体を5つのタイプに分類するという提案を発表した。
「糖尿病は考えられている以上に複雑な疾患であることが分かってきました。患者の病態に合わせた個別化された治療が求められています」と、スウェーデンのルンド大学糖尿病・内分泌学部のリーフ グループ教授は言う。
世界の糖尿病人口は4億2,500万人に上り、2045年までに6億2,900万人に増えると予測されている。適正な治療を行わず、血糖コントロールが不良の状態が続くと、腎不全、網膜症、心筋梗塞、脳卒中、下肢の切断などが引き起こされ、患者とって大きなダメージとなるだけでなく、医療費など社会の負担も重くなる。
「将来に合併症を起こるのを防ぐために、現在の診断法と糖尿病の分類だけでは十分ではありません」と、グループ教授は指摘する。
ルンド大学が公開しているビデオ
糖尿病診断に革新的変化が起ころうとしている
糖尿病診断に革新的変化が起ころうとしている
糖尿病を5つのタイプに分類
ルンド大学糖尿病センターとフィンランド分子医学研究所などの研究チーム実施している「ANDIS」研究は、スウェーデンのスコーネ県に在住し、新たに糖尿病と診断された患者を対象としている。
研究チームは、18〜97歳の1万3,720人の糖尿病患者を対象に、詳細なデータベースを作成した。データベースには、インスリン分泌、血糖値、抗GAD抗体、インスリンの分泌機能を示すHOMA-β、インスリン抵抗性を示すHOMA-R、発症年齢、BMIなどが含まれる。
その結果、糖尿病は、それぞれが大きな特徴をもつ5つのタイプに分類できることを明らかにした。
・ グループ1:重度の自己免疫性糖尿病(SAID)
1型糖尿病、および成人潜在性自己免疫性糖尿病(LADA)に相当する。
膵臓のβ細胞を攻撃する自己抗体である抗GAD抗体が陽性となっており、自己免疫的な機序により発症する。 ・ グループ2:重度のインスリン欠乏糖尿病(SIDD)
HbA1C値が高く、インスリン分泌障害および中程度のインスリン抵抗性を特徴とし、肥満は少ない。自己免疫が原因ではない。 ・ グループ3:重度のインスリン抵抗性糖尿病(SIRD)
肥満および重度のインスリン抵抗性を特徴とする。インスリン分泌は保たれているが、体はそれに反応しなくなっている。併発症の医療費がもっとも高い。 ・ グループ4:軽症の肥満関連糖尿病(MOD)
肥満はあるもののインスリン抵抗性は軽度で血糖上昇も軽度。比較的若い年齢で罹患する肥満の患者が含まれる。 ・ グループ5:軽症の加齢関連糖尿病(MARD)
高齢の患者で構成されるグループで、全体の40%を占め、もっとも多い。加齢に伴い血糖値が上昇するが、その程度は軽度。
1型糖尿病、および成人潜在性自己免疫性糖尿病(LADA)に相当する。
膵臓のβ細胞を攻撃する自己抗体である抗GAD抗体が陽性となっており、自己免疫的な機序により発症する。 ・ グループ2:重度のインスリン欠乏糖尿病(SIDD)
HbA1C値が高く、インスリン分泌障害および中程度のインスリン抵抗性を特徴とし、肥満は少ない。自己免疫が原因ではない。 ・ グループ3:重度のインスリン抵抗性糖尿病(SIRD)
肥満および重度のインスリン抵抗性を特徴とする。インスリン分泌は保たれているが、体はそれに反応しなくなっている。併発症の医療費がもっとも高い。 ・ グループ4:軽症の肥満関連糖尿病(MOD)
肥満はあるもののインスリン抵抗性は軽度で血糖上昇も軽度。比較的若い年齢で罹患する肥満の患者が含まれる。 ・ グループ5:軽症の加齢関連糖尿病(MARD)
高齢の患者で構成されるグループで、全体の40%を占め、もっとも多い。加齢に伴い血糖値が上昇するが、その程度は軽度。
詳細に診断すれば、適切な治療を早期に始められる
このうち「成人潜在性自己免疫性糖尿病」(LADA)は、抗GAD抗体が陽性で、最初は2型糖尿病のように徐々に進行するが、その後インスリン分泌が低下して、1型糖尿病と同様の病態となる。
この5群の分類によると、グループ2では網膜症の発症率がもっとも高く、グループ3では腎障害の発症率がもっとも高いことも判明した。合併症のリスクの高い患者には、検査の頻度を増やして、適切な治療を行うことが求められる。
「これまでは、たとえばインスリン療法が必要な患者にインスリンを処方するのが遅れるなど、適切な治療を適時に行えないケースがありました。合併症を発見するための検査が遅れたケースもあります。もっと詳細に診断できるようになれば、適切な治療を早期に始められるようになります」と、グループ教授は言う。
「糖尿病の分類を細分化することで、将来に合併症が起こるリスクも、より正確に分かるようになります。適切な診断により、より良い治療を目指すことが理想的なシナリオです」と、付け加えている。
中国とインドでも大規模な調査を予定
ただし、今回の研究は北欧の患者が対象で、たとえばアジア系の患者の病態が異なるなど、世界各地の状況はかなり違うため、すぐに糖尿病治療が変わるわけではない。
スウェーデンとフィンランドだけの比較でも、データの傾向には若干の違いがあったという。
研究チームは、異なる民族的な背景をもつ患者でも類似の分類が可能かどうかを調べるために、中国とインドで大規模な調査を行うことも予定している。
「研究を長く続けるほど、より良好なデータを得られるようになります。世界的には遺伝子や地域の環境による影響で、グループ分類がもっと増える可能性もあります」と、ルンド大学のエマ アクスイト准教授は言う。
「いずれにせよ、個々の患者に合った治療を行えるようにするために、糖尿病の病型の分類を増やすことは大きな意義があります」と、アクスイト准教授は結論している。
Paradigm shift in the diagnosis of diabetes(ルンド大学 2018年3月2日)Clustering of adult-onset diabetes into novel subgroups guides therapy and improves projection of outcome(Lancet Diabetes & Endocrinology 2018年3月1日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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