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2017年09月26日
「J-DOIT3」の最新成果を欧州で発表 統合的な治療で合併症を防ぐ
日本で行われた大規模臨床試験「J-DOIT3」の最新の成果が、9月にポルトガルのリスボンで開催された欧州糖尿病学会(EASD 2017)で発表された。
血糖・血圧・脂質に対して、従来のガイドラインよりも厳格な目標に向けた統合的な治療を行なうことで、血管合併症をさらに減らせることが、はじめて示された。
より厳格な統合的治療を行う強化療法により主要評価項目(心筋梗塞・冠動脈血行再建術・脳卒中・脳血管血行再建術・死亡)は19%抑制され、危険因子で補正するとリスク減少は24%となったほか、脳血管イベントについては58%と大幅に抑制できることが明らかになった。
血糖・血圧・脂質に対して、従来のガイドラインよりも厳格な目標に向けた統合的な治療を行なうことで、血管合併症をさらに減らせることが、はじめて示された。
より厳格な統合的治療を行う強化療法により主要評価項目(心筋梗塞・冠動脈血行再建術・脳卒中・脳血管血行再建術・死亡)は19%抑制され、危険因子で補正するとリスク減少は24%となったほか、脳血管イベントについては58%と大幅に抑制できることが明らかになった。
日本ではじめての大規模臨床試験
2型糖尿病は、心筋梗塞や脳梗塞といった大血管症や、慢性腎不全などの細小血管症といったさまざまな血管合併症を引き起こすことから、大きな社会問題となっている。しかし、どのような治療がそのような合併症を予防するのに有効なのかは、これまで十分に分かっていなかった。特に血糖に加えて、血圧や脂質も含めた統合的な治療をより厳格に行なうことで、実際に合併症を減らせるかは明らかになっていなかった。
そこで、糖尿病の大血管合併症を30%抑制する介入方法の検証を目標とし、厚生労働省の戦略研究の一環として2006年に開始された臨床試験が「J-DOIT3」(2型糖尿病患者を対象とした血管合併症抑制のための強化療法と従来治療とのランダム化比較試験)だ。
「J-DOIT3」は、東京大学医学部附属病院 糖尿病・代謝内科の門脇孝教授が研究リーダーとなり、国立国際医療研究センター研究所 糖尿病研究センターの植木浩二郎センター長らとともに進められてきた。
具体的には、全国81施設で、大血管症のハイリスクのある2型糖尿病症例2542例が登録され、2016年3月まで介入が継続された。平均8.5年間という長期に渡る介入期間中に、強化療法群では血糖・血圧・脂質に対して多因子介入を行ない、より厳格な目標(HbA1c6.2%未満、血圧120/75mmHg未満、LDL-コレステロール80mg/dL〔冠動脈心疾患の既往がない場合〕など)の達成を目指し、治療の段階的強化が行なわれた。一方で従来治療群では、現行のガイドラインに沿った治療が行なわれた。
実際の治療状況としては、強化療法群と従来治療群の平均HbA1cは6.8%、および7.2%、平均血圧は123/71mmHg、および129/74mmHg、平均LDL-コレステロールは85mg/dL、および104mg/dLだった。糖尿病の治療では体重増加がしばしば問題となるが、両群とも体格指数はおおむね横ばいだった。
強化治療で心血管リスクが19%減 脳血管イベントは58%減
「J-DOIT3」で明らかとなった主な解析結果として、強化療法では介入期間中の主要評価項目(心筋梗塞・冠動脈血行再建術・脳卒中・脳血管血行再建術・死亡)の発症が、統計学的に有意ではなかったものの、19%抑制された。登録時の喫煙情報などの危険因子での補正を行なうと、発症は24%抑制されており、これは有意な結果だった。
さらに事後解析を行なったところ、総死亡、および冠動脈イベント(心筋梗塞・冠動脈血行再建術)には有意な差はなかったが、脳血管イベント(脳卒中・脳血管血行再建術)に関しては、強化療法で58%有意に抑制されていた。
また副次評価項目のうち、腎イベント(腎症の発症・進展)の発症については、強化療法によって32%の有意な抑制が示された。眼イベント(網膜症の発症・進展)についても、14%の有意な抑制がみられたが、下肢血管イベント(下肢の切断・血行再建術)については有意な差は認められなかった。
糖尿病症例の死因は、特に欧米では大血管症が多いが、「J-DOIT3」での強化療法群では、心筋梗塞や脳梗塞での死亡は1件もなかった。なおこれらのイベントの発症率は、日本で10年以上前に行なわれた同様の臨床試験の結果と比較しても低下していた。
より厳格で統合的な治療により合併症は防げる
このことは、現行のガイドラインにそった治療でも2型糖尿病の合併症を抑制できるが、さらに厳格かつ統合的な治療を行なうことで、合併症の発症をさらに抑えれることを示している。
安全性については、強化療法群で低血糖の件数自体は多かったものの、第三者の助けや入院を要するような重篤な低血糖は、強化療法群においても発症率が年0.1%以下とごく低率だった。
これらのことから、2型糖尿病に対するより厳格かつ安全な多因子介入により、大血管症や死亡から成る主要評価項目について、危険因子での補正後の発症率が、有意に低下することが明らかになった。中でも脳血管イベントが有意に抑制されることが示され、また細小血管症についても特に腎イベントの発症が減っていた。
現在国内外でさまざまな糖尿病診療ガイドラインが発表され、治療の目標値が定められているが、「J-DOIT3」の結果が明らかとなったことで、より厳格な治療を目指す方向で、見直しが進む可能性がある。
また介入期間自体は終了したが、介入研究への参加者のうち、同意の得られた患者を対象に、その後さらに5年間の追跡研究が、日本医療研究開発機構(AMED)の循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策実用化研究事業において現在進行中だ。これにより、厳格かつ統合的な治療の合併症に対する長期的な効果も明らかになると期待される。
第53回欧州糖尿病学会(EASD)年次総会J-DOIT3(2型糖尿病患者を対象とした血管合併症抑制のための強化療法と従来治療とのランダム化比較試験)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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