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2016年07月15日
長生きの秘訣は「不飽和脂肪酸」 植物油をいかせば寿命を延ばせる
赤身肉、ラード、バターなどに含まれる飽和脂肪酸は、死亡リスクを上昇させるが、これをオリーブ油、キャノーラ油、大豆油、ナッツ類などの植物油に置き換えると、健康上の大きな恩恵が得られることが、12万人以上を30年間追跡して調査した研究で明らかになった。
オリーブ油、キャノーラ油、大豆油が寿命を延ばす
「この研究は、脂肪が健康に与える影響を明らかにした、現在まででもっとも信頼できるパワフルなものです。赤身肉、ラード、バターなどに含まれる飽和脂肪酸を、植物由来のオリーブ油、キャノーラ油、大豆油、ナッツ類ような不飽和脂肪酸に置き換えることで、健康上の大きな恩恵が得られることが確かめられました」と、ハーバード公衆衛生大学院栄養・疫学部のドン ワング氏は言う。
研究チームは、米国で実施されている「看護師健康研究」(1980~2012年)に参加した8万3,349人の女性、「医療者追跡研究」(1986~2012年)に参加した4万2,884人の男性のそれぞれのデータを解析した。
調査では食事、生活習慣、健康状態について2~4年おきに調べた。期間中に3万3,304人が死亡した。研究チームはこのデータから摂取した脂肪の種類と総死亡率、および心血管系疾患、がん、神経変性性疾患、呼吸器疾患による死亡率との関係を解析した。
12万人以上を対象に最長で32年追跡して調査した研究をまとめた論文は、米医学誌「JAMAインターナル メディシン」オンライン版に発表された。
体に良い脂肪の摂り方 毎日の食事が大切
ハーバード公衆衛生大学院は、体に良い脂肪の摂り方について、次のように説明している。
● 肉の脂肪に含まれる飽和脂肪酸 摂取基準は10%以下
赤身肉、ラード、バターなどの脂肪には飽和脂肪酸が多く含まれている。この飽和脂肪酸には、動脈硬化を進める血液中のLDLコレステロールを増やす作用がある。「米国人のための食事ガイドライン2015~2020年版」では、飽和脂肪酸を、総摂取エネルギーの10%以下にすることを推奨している。1日2000kcalを摂取する人の場合、牛や豚、鶏の肉や、卵の摂取量の上限を1日に105gにするのが目安となる。
● 植物性食品を多く摂れば糖尿病リスクを下げられる
野菜、果物、精製されていない全粒粉、大豆、豆類、ナッツ類などの植物性食品を多く摂ると、2型糖尿病の発症リスクを減らすのに役立つ。植物性食品を基本とする食事スタイルにより、食物繊維や抗酸化物質、不飽和脂肪酸といった体に良い栄養素を多く摂取でき、マグネシウムなどの微量栄養素も摂れる。さらには体に悪い不飽和脂肪酸を減らすことができる。
● 魚の不飽和脂肪酸 EPAは心臓病のリスクを下げる
魚には不飽和脂肪酸がたくさん含まれている。不飽和脂肪酸には、血液中のLDLコレステロールを上げず、中性脂肪を下げる作用がある。イワシ、サバ、サンマといった青魚には不飽和脂肪酸が多く含まれている。特に、不飽和脂肪酸のひとつであるEPAには、血液を固まりにくくして心血管病を防ぐ作用がある。実際に、血液中のEPAの割合が高い人ほど、心筋梗塞や脳梗塞を発症しにくいという調査結果がある。
● トランス脂肪酸は心臓病のリスクを高める
油脂を加工・精製する工程でできるトランス脂肪酸は、マーガリン、ファットスプレッド、ショートニングや、それらを原材料に使ったパン、ケーキ、ドーナツなどの洋菓子、揚げ物などに含まれる。トランス脂肪酸を摂り過ぎると、血液中の悪玉のLDLコレステロールが増えて、善玉のHDLコレステロールが減ることが報告されている。トランス脂肪酸を多く摂り過ぎると、少ない場合と比較して心臓病のリスクを高める。
● 内臓脂肪型肥満に注意 心臓病や脳卒中のリスクが上昇
食事で飽和脂肪酸を摂り過ぎると、内臓脂肪型肥満になり、動脈硬化が進行しやすくなることがさまざまな研究で確かめられている。日本の久山町研究でも、内臓脂肪型肥満の人は脳梗塞や心筋梗塞を発症する危険度が上昇することが確かめられた。内臓脂肪型肥満の人はそうでない人に比べて、脳梗塞の危険度は1.6倍、心筋梗塞の危険度は2.0倍に上昇する。
飽和脂肪酸の摂り過ぎで死亡リスクが上昇
「食事でどのような脂肪を摂ると健康に良いか、はっきりした回答が示されていなかったので、大衆も科学者も混乱しています。テレビの健康番組の情報に飛びついたり、誤った情報に惑わされる人が少なくありません」と、ワング氏は言う。
「今回の研究で得られた知見は、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸を、不飽和脂肪酸に置き換えると、明らかに体に良いということです」と、主任研究者のフランク フウ教授は説明する。
摂取している脂肪の種類によって、死亡リスクは異なることが明らかになった。トランス脂肪酸の健康に対する影響が最も大きく、摂取量が2%高まるごとに死亡リスクは16%ずつ高まった。
飽和脂肪酸の死亡リスクにもたらす影響も大きいことが判明した。同じカロリーの炭水化物を摂取した場合に比べて、飽和脂肪酸の摂取量が5%高まるごとに死亡リスクは8%高まった。
逆に、不飽和脂肪酸の場合は、多価不飽和脂肪酸も一価不飽和脂肪酸も、同じ量の炭水化物と比較して、総死亡リスクを11%から19%低下させた。
多価不飽和脂肪酸の中では、植物性食品に多いオメガ6脂肪酸も魚や大豆、キャノーラ油や魚油などに多いオメガ3脂肪酸も死亡リスクを低下させることが分かった。
「飽和脂肪酸を不飽和脂肪酸に置き換えると、死亡リスクを下げられます。不飽和脂肪酸を摂ることで、心血管疾患、がん、神経変性性疾患、呼吸器疾患による死亡リスクも低下することが示されました」と、ワング氏は指摘する。
飽和脂肪酸を炭水化物に置き換えた場合は、死亡リスクの低下はわずかだった。米国人の多くが炭水化物の多くを精製された穀物や糖類から摂取していることが影響しているという。これらは飽和脂肪酸と同じくらい死亡リスクを高める可能性がある。
Higher consumption of unsaturated fats linked with lower mortality(ハーバード公衆衛生大学院 2016年7月5日)Association of Specific Dietary Fats With Total and Cause-Specific Mortality(JAMA Internal Medicine 2016年7月5日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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