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2016年04月01日

4月から変わった診療報酬 医療機関などに払う医療費はこう変わる

 2016年4月から診療報酬が改定され、患者が医療機関や薬局で支払う自己負担が新しくなった。今回の改定では地域の「かかりつけ医」の役割がより重視されている。
地域の「かかりつけ医」の役割を重視
 2016年4月から診療報酬が改定され、医師や薬剤師などが受け取る報酬が新しくなった。今回の改定では、地域の「かかりつけ医」の役割がより重視され、紹介状なしに大病院を受診する患者から5,000円以上の追加料金をとることなどが決められた。

 診療報酬とは、公的医療保険を使って医師にかかったときの医療行為に支払われる公定価格のこと。内容ごとに細かく点数化されており、1点10円で計算される。治療や検査などの診療行為や調剤などに対し、患者は原則3割を負担し、患者が加入する医療保険が残りを医療機関に支払う。診療報酬は、厚生労働相の諮問機関である中央社会保険医療協議会の審議を経て、ほぼ2年に1度のペースで改定されている。

 今回の診療報酬改定の大きなテーマとなっているのは、医療機関の「役割分担」(機能分担)だ。急速な高齢化に伴う医療費の増加や医師・看護師の不足に対応するために、地域の「かかりつけ医」の役割がより重視されるようになった。

 「かかりつけ医」とは、日常行う診療で患者の生活背景を把握し、適切な診療と保健指導を行う、総合的な能力をもつ地域の医師のこと。身近で頼りになる「かかりつけ医」は、なんでも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介し地域医療を担っている。日本医師会総合政策研究機構の調べによると、「かかりつけ医」がいると答えた人は全体の53.7%に上る。
医療の役割分担を明確に 医療資源の節約に
 厚生労働省は、「かかりつけ医」をもつことで、自宅を中心に住み慣れた地域で暮らし続けられるような体制の整備を目指している。想定しているのは、日常の医療は診療所や中小病院、高度な専門医療は大病院という役割分担だ。

 糖尿病などの慢性疾患の患者が大病院に集中すると医師や看護師が疲弊し、重症患者の治療に専念できなくなるおそれがある。また、患者を「地域で診る」ことで、診療待ち時間や入院期間を短縮でき、医療資源の節約にもつながる。

 そこで、「かかりつけ医」の紹介状なしに大学病院などの大病院を受診すると、そのまま入院となるような重症の場合などを除き、患者に初診で5,000円以上、再診で2,500円以上の自己負担を求めることにした。

 診療所や中小病院に紹介状を出してもらうには、「診療情報提供料」として2,500円がかかるが、健康保険が適用になるので、3割負担の人なら750円となる。
「地域包括診療料」の対象も拡大
 糖尿病などの慢性疾患の「かかりつけ医」では「地域包括診療料」の対象も広がる。「地域包括診療料」と「地域包括診療加算」は、▽高血圧症、▽糖尿病、▽高脂血症、▽認知症――のうちいずれか2つ以上の疾患を有する患者に対して、服薬管理や健康相談、介護保険に係る相談、在宅医療の提供や24時間対応などを行うことを包括的に評価する点数。

 継続的に診ると月1万5,030円をまとめて払うもので(患者の窓口負担は、3割負担の場合は4,509円)、条件が常勤医師3人以上から2人以上に緩和された。厚生労働省は、これらを「かかりつけ医機能」を評価する点数と説明している。

 薬剤師にもかかりつけ機能を求めている。複数の医療機関にかかり、何種類もの薬の処方を受ける高齢者が増え、多剤服用で副作用が出たり、飲み残しで薬が無駄になったりする例が多いためだ。患者の服薬状況を一元的に把握して相談に乗るかかりつけ薬剤師の報酬が新設された。

 薬局に薬を買いにいく時に、自分が使っている薬の名前や調剤日、使用法、注意点などを書き込んだ「お薬手帳」を持っていくと、管理指導料として380円の診療報酬が加算される。「お薬手帳」がない場合は管理指導料は500円に上がり、3割負担だと40円高くなる。

 その他の糖尿病患者が関わる可能性のある項目は以下の通り――

●在宅妊娠糖尿病患者指導管理料 1,500円

 妊娠中の糖尿病患者または妊娠糖尿病の患者に対して、周産期における合併症の軽減のために適切な指導管理を行った場合に算定される。妊娠糖尿病の治療をよりきめ細やかに行えるようになる。
 「血糖自己測定器加算」の対象も「妊娠中の糖尿病患者または妊娠糖尿病の患者」に拡大された。

●外来栄養食事指導料 (月1回 初回月2回) 1,300円

 腎臓食、肝臓食、糖尿病食などの特別食を必要とする患者に、管理栄養士が具体的な献立を作成し、指導した場合に算定される。外来ではおおむね15分以上の指導時間を要する。これにより、よりきめ細やかな栄養指導が行えるようになると考えられている。

●糖尿病透析予防指導管理料 (月1回) 3,500円

 糖尿病患者の透析を予防するための対策も強化されている。この項目は、基準に適合していると認められた医療機関で、医師が透析予防の指導の必要があると考えた糖尿病患者に対して、医師、看護師、保健師管理栄養士などが共同して必要な指導を行った場合に算定される。

●糖尿病透析予防指導管理料 腎不全期患者指導加算 1,000円

 糖尿病性腎症の患者が重症化し、透析導入となることを防ぐため、進行した糖尿病性腎症の患者に対し質の高い運動指導を提供すると加算される。

●下肢末梢動脈疾患指導管理加算
 下肢末梢動脈疾患指導管理料
 (月1回) 1,000円

 人工透析患者の下肢末梢動脈疾病のリスクを評価し、療養上必要な指導管理を行った場合に加算される。

参考資料
C101-3 在宅妊娠糖尿病患者指導管理料 150点
注 妊娠中の糖尿病患者又は妊娠糖尿病の患者(別に厚生労働大臣が定める者に限る。)であって入院中の患者以外の患者に対して、周産期における合併症の軽減のために適切な指導管理を行った場合に算定する。

C150 血糖自己測定器加算
1 月20回以上測定する場合 400点
2 月40回以上測定する場合 580点
3 月60回以上測定する場合 860点
4 月80回以上測定する場合 1,140点
5 月100回以上測定する場合 1,320点
6 月120回以上測定する場合 1,500点
注1 1から3までについては、入院中の患者以外の患者であって次に掲げるものに対して、血糖自己測定値に基づく指導を行うため血糖自己測定器を使用した場合に、3月に3回に限り、第1款の所定点数に加算する。
イ インスリン製剤又はヒトソマトメジンC製剤の自己注射を1日に1回以上行っている患者(1型糖尿病の患者を除く。)
ロ インスリン製剤の自己注射を1日に1回以上行っている患者(1型糖尿病の患者に限る。)
ハ 12歳未満の小児低血糖症の患者
ニ 妊娠中の糖尿病患者又は妊娠糖尿病の患者(別に厚生労働大臣が定める者に限る。)
2 4から6までについては、入院中の患者以外の患者であって次に掲げるものに対して、血糖自己測定値に基づく指導を行うため、血糖自己測定器を使用した場合に、3月に3回に限り、第1款の所定点数に加算する。
イ インスリン製剤の自己注射を1日に1回以上行っている患者(1型糖尿病の患者に限る。)
ロ 12歳未満の小児低血糖症の患者
ハ 妊娠中の糖尿病患者又は妊娠糖尿病の患者(別に厚生労働大臣が定める者に限る。)

B001 特定疾患治療管理料
9 外来栄養食事指導料
イ 初回 260点
ロ 2回目以降 200点
注 別に厚生労働大臣が定める基準を満たす保険医療機関において、入院中の患者以外の患者であって、別に厚生労働大臣が定めるものに対して、医師の指示に基づき管理栄養士が具体的な献立等によって指導を行った場合に、初回の指導を行った月にあっては月2回に限り、その他の月にあっては月1回に限り算定する。

B001 特定疾患治療管理料
27 糖尿病透析予防指導管理料 350点
注1 別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、糖尿病の患者(別に厚生労働大臣が定める者に限る。)であって、医師が透析予防に関する指導の必要性があると認めた入院中の患者以外の患者に対して、当該保険医療機関の医師、看護師又は保健師及び管理栄養士等が共同して必要な指導を行った場合に、月1回に限り算定する。
2 区分番号B001の9に掲げる外来栄養食事指導料及び区分番号B001の11に掲げる集団栄養食事指導料は、所定点数に含まれるものとする。
3 区分番号B000に掲げる特定疾患療養管理料を算定している患者については算定しない。
4 医療提供体制の確保の状況に鑑み別に厚生労働大臣が定める地域に所在する保険医療機関であって、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出たものについては、注1に規定する届出の有無にかかわらず、所定点数に代えて、糖尿病透析予防指導管理料(特定地域)として、175点を算定する。
5 別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、腎不全期の糖尿病性腎症の患者に対して医師が必要な指導を行った場合には、腎不全期患者指導加算として、100点を所定点数に加算する。

平成28年度診療報酬改定について(厚生労働省)
診療報酬情報提供サービス(厚生労働省)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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