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2016年04月05日

糖尿病のある人は自殺と事故のリスクが高い 日本人10万人を調査

 40歳以上の糖尿病のある人は、自殺と事故のリスクが高くなることが、日本人10万人以上を12年間追跡して調査した研究で明らかになった。
40歳代の人は自殺と事故リスクが1.9倍に上昇
 40歳以上の糖尿病患者では自殺と事故死が多いことが、日本人を対象とした大規模研究「JPHC研究」で明らかになった。

 「JPHC研究」は日本人を対象に、さまざまな生活習慣と、がん・糖尿病・脳卒中・心筋梗塞などとの関係を明らかにする目的で実施されている多目的コホート研究。今回の研究は、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所、岡山大学病院精神科神経科などの研究チームがまとめたもの。

 研究チームは40〜69歳(平均年齢51.2歳)の男女10万5,408人を約12年間追跡調査し、糖尿病と自殺および事故死(交通事故、転落事故など病死・自他殺以外の死)との関連を調べた。

 調査の対象となった人のうち、男性3,250人(6.6%)と1,648人(3.0%)が、医師から糖尿病と診断されたことがあると回答した。調査期間中に、糖尿病のグループでは113人(事故72人、自殺41人)が亡くなった。

 自殺だけではなく事故死まで含めて糖尿病との関連を調べたのは、精神的に追いつめられる患者が多く、交通事故などの不慮の事故に遭遇しやすくなるからだ。また、糖尿病に伴う視覚障害などにより、交通事故や高所からの転倒・転落などによる危険性も高まると考えられている。

 解析した結果、糖尿病と診断された40歳代の人は、そうでない人と比べ、自殺と事故死を合わせた死亡リスクが1.9倍(95% CI: 1.3–2.7)に上がり、50歳代でも1.4倍(95% CI: 1.05–1.9)に上がることが明らかになった。

 事故死だけを調べると、40歳代の人は2.3倍、50代は1.5倍に上昇し、自殺に限ってみると、40歳代の人は1.5倍、50代は1.2倍に上昇した。なお、60歳代の糖尿病の人では自殺の相対リスクは上昇しないことも分かった。
自殺と事故を防ぐために心理的なケアも必要
 なぜ、40歳代の糖尿病患者に突出して「自殺と事故死」が多いのだろうか。研究チームは「糖尿病とうつ病との強い関連は多くの研究で指摘されています。うつ病は自殺の強い危険因子です。同時に、糖尿病の罹患に伴い抑うつ状態にあることで、交通事故などの不慮の事故に遭遇しやすくなると考えられます」と解説している。

 糖尿病の合併症として神経障害や網膜症、腎症などがある。特に働き盛りの40歳代に多いのは、「これらの影響によるライフスタイルや生活習慣の変化(仕事を続けられなくなる、不自由な生活を強いられる、インスリンによる治療の開始など)や心理的ストレスは60歳以上の人よりも59歳以下の人で強いことが考えられます」と指摘している。

 どうすれば、糖尿病患者の事故や自殺を防ぐことができるのだろうか? 研究チームは「糖尿病に伴ううつ病・心理的ストレスについて、医師や医療スタッフが早期にみつけて、の適切なアセスメントと治療をすることで、リスクを軽減するよう努めることが必要です。特に59歳以下の自殺・事故を防ぐために対策が必要です」と述べている。

 さらに、神経障害や網膜症、腎症などの合併症による身体的機能の低下に対するサポート・心理社会的ケアを充実させることも重要となる。「糖尿病の治療では心理的なケアも必要であることが強く示唆する結果になりました。今後の治療について考える必要があります」としている。

多目的コホート研究(JPHC Study)(国立がん研究センター がん予防・検診研究センター 予防研究グループ)
History of diabetes and risk of suicide and accidental death in Japan: The Japan Public Health Centre-based Prospective Study, 1990–2012(Diabetes & Metabolism 2016年1月18日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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