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2015年12月17日
軽いウォーキングが糖尿病患者の血圧を低下 合併症リスクを下げる

糖尿病と高血圧を併発すると心臓病と脳卒中の発症リスクが大きく上昇する。また、座ったまま過ごす時間が長いと、肥満や高血圧、高血糖、高コレステロール、心血管疾患などのリスクが上昇することが過去の研究で示されている。
「もしあなたが糖尿病で、1日の大半を座ったまま過ごしているのなら、心臓病や脳卒中の危険性が上昇している可能性があります。毎時間、数分間の軽い運動をするだけでもリスクを下げられます」と、メルボルンのベイカーIDI心臓・糖尿病研究所のブロンウィン キングウェル氏は言う。
研究には過体重または肥満の平均年齢62歳の2型糖尿病の男女24人が参加した。参加者の3分の2が降圧薬による薬物療法を受けていた。
参加者に8時間座って過ごしてもらい、そのうえで30分ごとに時速3.2km程度でゆっくりとしたウォーキングを3分間行う群と、簡単なレジスタンス運動を30分ごとに3分間行う群の2群に分けて比較した。
研究チームは同様の試験を日を空けて3日間行った。正確な強度をはかるため、参加者はトレッドミルでウォーキングをした。また、簡単なレジスタンス運動として、軽いスクワット、ふくらはぎの上げ下げ、膝の上げ下げ、臀部筋肉をしぼる運動などを行った。
その結果、収縮期血圧値は、歩行運動をすると平均10mmHg低下し、レジスタンス運動を行うと平均12mmHg低下することが判明した。
血圧を下げるために激しい運動は必要なく、軽い運動を30分〜1時間の間隔で行うだけで効果を得られるという。
こうした簡単な運動が糖尿病患者の血圧コントロールを改善する理由は明らかではないが、運動することで筋肉のブドウ糖取り込み能が上昇し、「インスリン抵抗性」の改善につながっている可能性があるという。
また、軽い運動をすることで、血圧を上げる「ノルアドレナリン」が低下する可能性がある。ノルアドレナリンは、体がストレスを感じたときに放出されるホルモン。放出されると、交感神経の活動が高まり、血圧が上昇したり心拍数が上がる。
「多くの糖尿病患者は少し運動をするだけでも血圧を下げられると考えられます。テレビのコマーシャル時間に立ち上がって簡単な運動をする、水やコーヒーを飲みに行くついでに周辺を歩き回ってみるといった軽い運動でも、頻度が高ければ効果を得られます」と、キングウェル氏は指摘している。
A few minutes of activity may cut blood pressure for people with Type 2 diabetes(米国心臓学会 2015年11月9日)
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