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2015年10月09日
高齢者の衰え「フレイル」に注目 運動と食事で要介護を予防

高齢者の身体機能や認知機能が低下して虚弱となった状態を「フレイル」と呼び、要介護予備群として注目されている。フレイルを早期に発見し、食事や運動など適切な対応で再び元気を取り戻し、健康寿命を延ばすことが可能になる。
フレイルには、動作が遅くなったり転倒しやすくなったりするなど身体的な問題だけではなく、認知機能の障害やうつ病などの精神や心理的な問題、独り住まいや経済的な困窮などの社会的な問題も含まれる。
フレイルの状態を早期発見し、早期に対応することで、要介護に至るのを防ぎ、健康寿命を延ばすことができるのではないかと、さまざまな研究が行われている。
厚生労働省もフレイル対策を政策に取り入れ始めた。新年度の予算では、「高齢者の低栄養防止・重症化予防等の推進」に10.7億円を新たに要求している。
後期高齢者医療において、地域の実情に応じて、地域包括支援センター、保健センター、訪問看護ステーション、薬局等など活用し、課題に応じた専門職(管理栄養士、歯科衛生士、薬剤師、保健師など)が、対応の必要性が高い後期高齢者に対して相談や訪問指導等を実施することを目指している。
フレイルの状態に至ると、7年間の死亡率が健常な人に比べて約3倍、身体能力の低下が約2倍という報告がある。基準では筋力低下、体重減少などの身体的な側面が重視されている。
一般に、筋力は20~30歳頃にピークとなり、以後、徐々に低下していくが、60歳を過ぎると劇的に低下する。
国立長寿医療研究センターなどの研究班によると、1秒間に1メートル以下になると介護が必要になるリスクが高くなるという。横断歩道の青信号は毎秒1メートルの速度で渡れるように設計されており、横断歩道を渡れなくなると要注意だ。
また、握力も50歳を超えたころから徐々に低下する。生活活動に何らかの支援を必要とするような障害が出てくる握力の目安は、男性で25kg、女性で20kgだという。
東京大学高齢社会総合研究機構は、高齢者の筋肉量を簡単にチェックできる目安を考案した。題して「指輪っかテスト」。両手の親指と人さし指で輪を作り、ふくらはぎの一番太い部分を囲む。このとき隙間ができると、筋肉量が少なくなっている可能性が高い。

筋肉を増やすためには、有酸素運動が必要とされており、ウォーキングがもっとも取り入れやすい。最低でも1日5,000~6,000歩を継続すると筋力の低下を防げる。
レジスタンス運動(筋トレ)にも筋肉量増加の効果がある。国立長寿医療研究センターによると、ジムなどでトレーナーの指導のもと筋トレを中心とした運動を行うと効果的だが、家庭でもセラバンドというゴムのバンドを用いて、安全に運動を行えるという。
東京大学高齢社会総合研究機構などの研究班によると、フレイルを防ぐために、栄養状態が低下する前の食事面での早期介入も重要だ。
食事では、筋肉のもととなるタンパク質の摂取がポイントとなる。高齢者では、食後に誘導される骨格筋におけるタンパク質合成が低下している。タンパク質合成を促すために、高齢者では成人以上にアミノ酸の血中濃度を上げる必要があり、十分なタンパク質を摂取する必要があると考えられている。
高齢者では腎機能障害をもつ患者も多いので注意が必要だが、フレイルの予防を考えると、性別を問わず体重1kg当たり1gのタンパク質を毎日食事から取ることが望ましい。体重50kgの人の場合は50gだ。肉や魚、大豆、牛乳などがタンパク質を多く含む。
日本人は平均すると、1日に70歳以上の男性は71.9g、女性は61.5gのタンパク質をとっているが、個人差が大きく、必要量を摂っていない低栄養の高齢者が少なくないので注意が必要だ。

東京大学高齢社会総合研究機構は2012年から、千葉県柏市の高齢住民を対象に、フレイル予防の大規模研究に取り組んでいる。その結果などから、要介護に陥りやすい高齢者の傾向がわかってきた。
約1,800人を対象とした食事調査では、3度の食事を1人でとる「孤食」の人は、1日1回でも誰かと食事する人と比べ、低栄養になったり歩行速度が遅くなったりする割合も高いことが判明した。
社会との関わりが薄れると、日々の活動量や、健康維持への意欲が低下してしまう。社会活動の低下は、体の衰弱の始まりの目安になるという。「閉じこもらない」ことが、フレイルの予防法になる。
柏市では研究成果をもとに、計11項目の質問に「はい」「いいえ」で答える簡易フレイルチェック表を作成し、介護予防事業に活用している。
日本サルコペニア・フレイル研究会
国立長寿医療研究センター
東京大学高齢社会総合研究機構
虚弱・サルコペニア予防における医科歯科連携の重要性
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