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2015年10月01日
ウォーキングが糖尿病腎症を改善 腎臓を守るために運動は必要
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運動を続けると、インスリンを分泌する膵臓が大きくなり、機能も改善してインスリン分泌を高めることも最近分かってきた。運動には体重減少、脂質異常症の改善などの効果もある。運動を習慣として続ければ、寿命を延ばすことができる。
しかし、多くの臨床現場では、運動療法は推奨されているものの、血糖や脂質を下げる薬物治療が優先されることが多い。
その一因は、糖尿病の合併症のひとつである糖尿病腎症に対する有効性についてよく分かっていないからだ。
そこで、東北大学大学の研究グループは、ウォーキングなどの有酸素運動を長期的に行うと、糖尿病腎症を改善できることを科学的に立証し、そのメカニズムを解明した。
腎障害の治療は、血糖や脂質を下げる薬物療法が一般的で、多くの臨床現場では、運動や食事制限については推奨する程度にとどまっている。
そこで研究チームは、2型糖尿病で肥満のラットに、トレッドミルを用いて1日60分、週5日の有酸素運動をさせる実験を行い、腎組織の一酸化窒素、酸化ストレス、糖化ストレスの変化を調べた。
一酸化窒素(NO)は、血管拡張作用により血圧を下げたり、抗酸化作用などによって心臓や血管を保護するのに加え、腎臓の保護作用にも関わっている。また酸化ストレスや高血糖による糖化ストレスは、糖尿病腎症を進展させる。
運動の強さを増していくと、筋肉のエネルギー消費に必要な酸素供給が追いつかなくなり、血液中の乳酸が急激に増加しはじめる閾値がある。ラットにはこのこの閾値に達するまで運動をさせた。
その結果、有酸素運動を長期続けることで、アルブミン尿や多尿が抑制され、腎機能が改善することが判明した。腎組織を観察したところ、血液中の老廃物が濾過される「糸球体」や血管の障害が改善されていた。
また、運動により、腎内の「内皮型」および「一酸化窒素合成酵素」が増えていた。これらの酵素は細胞内にあり、主に血管拡張と細胞間情報伝達に関わっている。さらに、運動により酸化ストレスと糖化ストレスのマーカーが軽減することが判明した。

研究成果は、近年増加するメタボリックシンドロームの代表的疾患である糖尿病や肥満における腎障害の進展に対して、運動療法が極めて有用であることを裏付けている。
さらに、運動療法治療は薬物治療や外科的治療に比べ、医療経済面や安全面で優れている。糖尿病の患者や予備群に運動を推奨することの社会的意義は大きい。
この研究は、東北大学大学院医学系研究科宮城地域医療支援寄附講座の伊藤大亮助教、清元秀泰教授らの研究グループによるもので、科学誌「プロス ワン」オンライン版に発表された。
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