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2015年08月18日
電話によるカウンセリングが糖尿病患者の血糖コントロールを改善
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- 糖尿病の検査(HbA1c 他)

日本でも、糖尿病で治療が必要と指摘された人のうち、3人に1人が適切な治療を受けていないことが、厚生労働省の調査で示されている。特に40歳代、50歳代の人では、4割以上が治療を受けていない。
糖尿病は基本的に自己管理しなければならない病気でもある。人まかせ、医師まかせでは良好な治療効果を得られない。しかし、自覚症状が乏しいので、治療に対するモチベーションを高めるのが難しいという患者は多い。
そうした患者に、定期的な電話によるカウンセリングを行うと、患者の自己管理が改善し、HbA1c値が改善するという研究が発表された。電話カウンセリングは患者のモチベーションを高めるのに効果的だという。
「糖尿病とともに生きる患者の行動変容を促すめたに、問題解決と目標設定に向けて、積極的なカウンセリングを行うことが必要です」と、アルバート アインシュタイン医学大学の内分泌内科のエリザベス ウォーカー教授は言う。
「薬物療法を行っている糖尿病患者のセルフ マネージメントを促すために、印刷された教育資材が必要ですが、それだけでは十分な効果を得られないことが判明しました」。
研究には、サウスブロンクス地区に在住する2型糖尿病患者941人が参加した。患者の68%はラテン系で、28%はアフリカ系だった。そして全体の70%が米国外の出身で、55%はスペイン語を話していた。
血糖値の1~2ヵ月の平均を示すHbA1cは血糖コントロールの指標となる。糖尿病の治療目標は個々の患者に合わせて設定されるが、多くの場合でHbA1cを7%未満にコントロールすることが目標となる。
HbA1cが9%以上であると、失明や腎臓病、下肢切断といった深刻な合併症が引き起こされる可能性が高まる。
研究チームは、941人の患者全員に、糖尿病の自己管理について説明した資料を渡した。無作為抽出された半数(443人)の患者は、ニューヨーク市の保険局の保健担当者から、電話によるカウンセリングを受けた。残りの患者は資料を読んだだけだった。
カウンセリングの内容は、薬物療法を続けることの意義、食事療法と運動療法の大切さなど、糖尿病の治療の科学的な根拠についてだった。
電話カウンセリングの頻度を、血糖コントロールの状態によって増減した。血糖コントロールが不良(HbA1cが7~9%)の患者は電話による年に4回のカウンセリングを受け、さらに悪い患者(HbA1cが9%以上)は8回のカウンセリングを受けた。
「電話によるカウンセリングは低コストで効果があることが確かめられました。カウンセリングを行うのは、糖尿病療養指導士などから指導を受けた保健担当者でも効果があります」と、ウォーカー教授は言う。
カウンセリングをする際には、温かい思いやりある対応のできるカウンセラーを選別することが重要だという。今回の研究では、英語以外の言語にも対応できるカウンセラーが対応した。
「たとえ電話であっても、人の肉声を聞きながら治療について学ぶことは、糖尿病のような慢性疾患では最良の方法となる可能性があります」と、ニューヨーク市保険局のシャーディー シャマニー氏は言う。
「電話カウンセリングという介入によって糖尿病患者のセルフ・マネージメントを促し、治療効果が改善することが判明したことは、他の医療保険制度を担う組織にとっても役に立ちます」としている。
'Dialing for Diabetes Control' Helps Urban Adults Lower Blood Sugar(アルバート アインシュタイン医科大学 2015年7月29日)
Telephone Intervention to Improve Diabetes Control(American Journal of Preventive Medicine 2015年7月29日)
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