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2014年11月20日
老化にともない増える糖尿病 長寿遺伝子の炎症反応を解明
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東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科の下門顕太郎教授と同大学院寄付講座(基礎動脈硬化学)の篠崎昇平准教授の研究グループは、炎症によって生成される一酸化窒素がタンパク質を構成するアミノ酸(システイン)に結合する「S-ニトロソ化」に着目。
慢性炎症と老化に伴う病気を結ぶメカニズムを明らかにするために、長寿遺伝子として知られるサーチュイン遺伝子の一種である「SIRT1」のS-ニトロソ化に伴う病気との関係について解析した。
研究チームは、全身性炎症反応などのあるモデル動物と培養細胞を使い、炎症時におけるSIRT1のS―ニトロソ化と炎症、細胞死の関連を調べた。
その結果、急性炎症や慢性炎症によってSIRT1の働きが弱くなり、炎症や細胞死が起こりやすくなることが判明。炎症で増加したSIRT1のS-ニトロソ化を薬剤や遺伝子操作で減らすと、SIRT1の働きが戻り、炎症反応が部分的に抑えられることを明らかにした。
研究グループは、「SIRT1の働きを失わせる仕組みを抑えることが、老化する速度を遅くしたり、老化に伴う病気を治療するためには重要となる」と指摘。
食事で摂取するエネルギー量を減らすカロリー制限を行ったり、赤ワインやブドウなどに含まれるポリフェノールであるレスベラトロールを摂取すると、SIRT1の量は増え老化を遅らせることができる。
しかし、SIRT1がS-ニトロソ化によって不活化されている場合には、SIRT1の量を増やす方法では効果を得られない。研究チームは「SIRT1のS-ニトロソ化を特異的に阻害する薬剤や方法を開発すれば、老化に伴う病気の新規治療薬・治療方法となる可能性がある」と述べている。
研究成果は国際科学誌「Science Signaling」のオンライン版に発表された。

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