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2014年10月17日
長引く体の不調は「歯周病」が原因かもしれない 全身の病気にも影響
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これほど歯周病の人が多いのに、それがどんな病気なのかはあまり知られていない。これは歯周病の初期の段階では痛みがなく、歯肉(歯茎)がはれたり、歯磨きのときに出血する程度なので、そのまま放置している人が多いからだ。
歯周病は、歯を支える歯肉やその周辺組織が炎症を起こし、悪化すると歯槽骨(しそうこつ)が溶け、歯を失うことにもなる病気だ。その原因となるのが、歯垢(プラーク)だ。歯垢というと、食べカスのことだと思っている人が多いが、実は歯周病菌という細菌のかたまりだ。
歯磨きが十分に行われずプラークが残っていると、その中にいる歯周病菌が増えて、歯肉に炎症が起きてはれてくる(歯肉炎の段階)。
歯と歯肉の隙間(歯周ポケット)で歯周病菌が繁殖を続けると、歯磨きではプラークを取り除けなくなり炎症も拡大する(歯周炎の段階)。この状態を放っておくと、歯がぐらつき、やがて抜け落ちてしまう。

歯周病は糖尿病とも関連が深い。歯周病菌に対する免疫反応から生じる生理活性物質である「サイトカイン」が、インスリンの働きをさまたげることが分かっている。歯周病があると糖尿病のリスクが高まるだけでなく、治療のときも血糖値のコントロールが難しくなる。
歯周病は、「動脈硬化」にも関係する。血流に乗って運ばれた歯周病菌が血管壁に付着すると、動脈硬化の進行に関与するのではないかと考えられている。
血液中に悪玉のLDLコレステロールが増えるとそれが血管壁の中に入り込みアテロームと呼ばれる脂肪の塊ができ、血管の通り道が狭くなる。これが動脈硬化で、心臓の血管で起きると「狭心症」や「心筋梗塞」が、脳の血管で起きると「脳梗塞」が引き起こされる。
東京大学の研究チームが、金融保険系企業の産業医らと共同して、36歳〜59歳の男性従業員3,081人を対象に、歯周病と心筋梗塞の関連を調べた。
質問票を用いて「歯肉に出血がある」「歯がぐらつく」、「口臭がする」という3項目に答えてもらい、その後5年間の健康状態を追跡調査した。
その結果、歯周病の強く疑われる男性は、そうでない人に比べて、心筋梗塞の発症が約2倍多いことが明らかになった。
歯周病は、40歳以降の日本人男性において頻度の高い疾患である一方、適切なセルフケア(歯磨きなど)や歯科メインテナンス(歯石除去、専門的クリーニング)で予防・改善できる。「歯周病を治療することが心筋梗塞の予防にもつながる可能性がある」と、研究者は述べている。

歯周病の思いあたる症状をチェックしよう――
1 朝起きたとき、口の中がネバネバする
2 歯を磨いたときに出血する
3 冷たい飲み物や冷たい空気が、歯肉にしみる
4 歯肉がはれ、うずくことがある
5 食べ物が歯のあいだによくはさまる
6 口臭がする(歯垢は口臭の原因となる)
7 歯が長くなったように見える
8 固いものを噛むと出血する
9 歯肉が赤黒くなり、固いものが噛みにくい
10 ぐらぐらしている歯がある
歯周病予防で最も大切なのは、歯周病の原因である細菌すなわちプラークの量を減らすことだ。これを「プラークコントロール」と言う。プラークコントロールには、歯科医師や衛生士がおこなうプロフェッショナルなもの、そして自分でできる歯みがきなどのセルフケアの2つがある。
プラークコントロールで重要なことは次の4点だ――
1 正しい歯ブラシの方法で毎日実行する。歯の表面を歯垢のない清潔な状態にしておくことが大切となる。
2 歯肉の中まで入っている歯石を取り除き、さらに根の表面を滑らかにして炎症を引き起こす細菌を除去する。
3 傷んだ歯肉、骨を治療して健康に近い歯肉にする。
4 健康の保持のため歯科医師や衛生士によるクリーニングなどのメインテナンスを定期的に受ける。
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