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2014年06月20日
世界初の「人工膵島」が成功 1型糖尿病の治療が飛躍的に進歩
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インスリンポンプと血糖値モニターを組み合わせた「人工膵島」が、海外で実用段階に入ってきた。インスリンの頻回注射に変わる治療法として期待されている。
サンフランシスコで開催された第74回米国糖尿病学会(ADA)年次会議で、ケンブリッジ大学などが行った「人工膵島」を使った臨床試験2件が発表された。
夜間低血糖が大幅に減少
1型糖尿病は、おもに自己免疫を原因として、膵臓で血糖値を調節するホルモンであるインスリンを作り出すβ細胞が破壊されることで発症する疾患だ。1型糖尿病患者は、インスリンの頻回注射を行うか、インスリンポンプを使い持続的にインスリンを注入することで、血糖値をコントロールする必要がある。
5歳のときに1型糖尿病と診断された子供は18歳になるまでに、最大で1万9,000回のインスリン注射と5万回の血糖自己測定を行うことになるという。
血糖値を数日間にわたり連続的に測定できる持続血糖測定器(CGM)は、日本でも保険適応され、日常臨床で使用されている。
開発された人工膵臓では、CGMを進化させた血糖値モニターを使い、測定した血糖値のデータをインスリンポンプに送り、アルゴリズムで適切なインスリン投与量を計算し、自動的に投与する「クローズドループ」のシステムが開発された。
英国糖尿病学会(Diabetes UK)が資金提供し、ケンブリッジ大学などが行った試験では、新たに開発した人工膵島を24人の成人1型糖尿病患者に4週間装着してもらい、夜間の低血糖の発現を調べた。
その結果、現在の1型糖尿病の治療のゴールドスタンダードであるインスリン注射に比べ、血糖値を理想的にコントロールできている時間帯が13.5%増えた。この研究の詳細は、医学誌「ランセット」に発表された。
もう1件の試験は、インスリンポンプを使用している12〜18歳の若い1型糖尿病患者16人が参加して行われた。人工膵臓を3週間装着する期間と、従来の治療を3週間行う期間に分け、血糖値の推移や低血糖の頻度などを比較した。
その結果、夜間の血糖値は人工膵臓を使用した場合、平均14mg/dL低下した。一方で、低血糖(63mg/dL未満)が起こった頻度は、従来治療では17%だったのが、人工膵臓を使うと10%に低下した。
厳格な血糖コントロールと低血糖の抑制を両立
この試験には、スティーヴン スピルバーグが監督し世界的にヒットした映画「戦火の馬」の主役を演じた俳優ジェレミー アーヴァイン氏が参加した。アーヴァイン氏は6歳のときに1型糖尿病を発症した。
「数年前に人工膵臓の試験に参加しないかと声をかけられたとき、この機会を逃すまいと飛びつきました。人工膵臓の実現に向けて、ささやかながら役にたつことができたと感じています。最新のテクノロジーの進歩を目の当たりにして興奮しています。人工膵臓を開発した科学者たちは私のヒーローです」と語っている。
「人工膵臓により、低血糖を減らしながら、より厳格な血糖コントロールが可能になりました。低血糖を減らすことで、人工膵臓を使わない日中の血糖変動幅も抑えられました」と、ケンブリッジ大学のロマン ホヴォルカ氏(小児科学)は言う。
厳格な血糖コントロールにより糖尿病合併症の発症を抑えられるのは明らかである一方で、血糖コントロールを厳しくすると、低血糖、特に夜間の低血糖の頻度が増えるというジレンマが現在の治療にはある。新たに開発した人工膵臓は、そのジレンマを解決するものだという。
人工膵臓は試作品の段階で、実際に製品化するまでにまだ時間がかかるが、1世代以内に実用化できると期待されている。実現すれば、1型糖尿病の治療マネージメントを変革する可能性がある。「今回の成果により、次のステップに踏みだしたといえます」とホヴォルカ氏は強調している。
World’s first use of artificial pancreas for Type 1 diabetes “a success”(英国糖尿病学会 2014年6月16日)Home use of closed-loop insulin delivery for overnight glucose control in adults with type 1 diabetes: a 4-week, multicentre, randomised crossover study(ランセット 2014年6月16日)
Overnight Closed-Loop Insulin Delivery in Young People With Type 1 Diabetes: A Free-Living, Randomized Clinical Trial(ダィアベティズケア 2014年5月)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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