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2014年06月20日
ADAが1型糖尿病ガイドラインを改訂 「HbA1c7.5%未満」が目標

Diabetes Care Publish Ahead of Print, published online June 16, 2014
「国際小児・思春期糖尿病学会(ISPAD)や米国小児内分泌学会などは、すでに「HbA1c7.5%未満」を推奨しており、今回のガイドラインは、最新のエビデンスを反映させながら、既存の指針に合わせて改訂された。
以前のガイドラインでは「6歳以下 HbA1c8.5%未満」、「6〜12歳 同8.0%未満」、「思春期の若者 同7.5%未満」を推奨していたが、今回の改訂で目標値はより厳しくなった。
従来は、HbA1cを下げようとすると、低血糖の頻度が上昇するという複雑な問題があった。「厳格な血糖コントロールは低血糖という代償をもたらす」と考えられていた。
「従来は厳格な血糖コントロールにより低血糖の頻度が高まるとされていましたが、現在では治療法が進歩しており、低血糖を起こさずに血糖コントロールを良好に維持できるようになってきました」とガイドイラン策定で中心的な役割を担ったADAのジェーン チアン氏は話す。
高血糖の状態が長期間にわたり続くと、心臓血管疾患や腎臓病などの深刻な合併症が引き起こされる。これらの合併症は、成人のみが罹患すると考えられていたが、最近の研究で、小児や若年期においても、神経認知機能の有害事象などの初期発症リスクは上昇することが示された。
HbA1c8.5%を維持する期間が長いと、高血糖により合併症が引き起こされるリスクが上昇することを示したエビデンスがある。
アメリカとカナダの1型糖尿病患者を対象とした9年にわたる大規模臨床研究「DCCT」では、HbA1c7%を達成した強化療法により、9%を維持した従来療法に比べ、糖尿病合併症である細小血管合併症を減らせることが明らかになった。
DCCT以降の10年以上にわたるフォローアップ研究である「EDIC」でも、良好な血糖コントロールを維持した期間が長いほど、細小血管合併症や心血管症の発症を抑えられることが示された。
ガイドラインでは、1型糖尿病と2型糖尿病は発症メカニズムの異なる疾患であり、治療法も異なることを指摘している。これらの相違を理解することでより良い治療が可能になり、合併症を予防できるようになる。
1型糖尿病は、インスリンが絶対的に欠乏する「インスリン依存状態」を特徴とする疾患だ。一般的に小児期に発症するケースが多いが、現実には1型糖尿病患者の大部分は成人であることに注意を促している
「1型糖尿病では集約的なインスリン療法が必要になりますが、杓子定規(one-size-fits-all)の治療ではなく、個々の患者に合わせた治療でなければなりません」と、南カリフォルニア大学のアン ピーターズ教授は強調している。
Diabetes Association Sets New A1C Target for Children with Type 1 Diabetes(米国糖尿病学会 2014年6月16日)
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