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2014年06月20日
腸内フローラがインスリン抵抗性の原因 腸内細菌が炎症を起こす
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順天堂大学の研究チームは、2型糖尿病患者では腸内フローラのバランスが乱れやすいことを確かめたと発表した。腸内フローラが乱れることで、腸内でのみ生息しているはずの腸内細菌が血液中で検出され、炎症を引き起こしている可能性があるという。
研究成果は順天堂大学大学院医学研究科・代謝内分泌内科学の佐藤淳子 医師、金澤昭雄 准教授、綿田裕孝 教授、順天堂大学大学院プロバイオティクス研究講座の山城雄一郎 特任教授らによるもの。詳細は米国学術誌「Diabetes Care」オンライン版に掲載された。
腸内環境の改善によりインスリン抵抗性を抑えられる可能性
ヒトの大腸内には、500〜1,000種類もの腸内細菌がすみついている。この菌のかたまりを腸内細菌叢といい、花畑のように見えることから「腸内フローラ」と呼ばれている。腸内フローラはヒトの健康と病気に密接に関わっており、腸疾患、糖尿病、肥満、メタボリックシンドローム、動脈硬化症などのさまざまな疾病の発症に関係すると考えられている。
インスリン抵抗性は、インスリンが体の中で効きにくい状態にあることを意味する。インスリン抵抗性により糖が十分に体の中に取り込まれなくなると、血糖が上昇する。肥満や運動不足などが原因だが、腸内フローラのバランスが乱れにより慢性的な炎症が起こることも一因になっているという。
腸内フローラの組成は、食事内容の影響を受けやすい。特に高脂肪の食事をとり続けると、腸内フローラのバランス異常が生じ、腸管でのバリア機能の低下、つまり透過性の亢進をきたすことが知られている。透過性が亢進すると腸内細菌などが血中へ移行しやすくなり、炎症性サイトカインの増加を促す。
サイトカインとは、細胞から放出され、細胞間の相互作用を媒介するタンパク質だ。炎症性サイトカインが微小な慢性炎症を引き起こすことが、糖尿病のインスリン抵抗性の原因になる。
日本人の2型糖尿病患者での腸内フローラの働きについては不明の点が多い。研究チームは、糖尿病と腸内フローラの関係を明らかにする目的で、日本人の2型糖尿病患者の腸内フローラと、腸内細菌の血流中への移行について、それぞれ解析を行った。
研究チームは、2型糖尿病患者50人と2型糖尿病ではない被験者50人の腸内フローラの比較を行った。さらに、腸内細菌の血流中への移行を「腸内フローラ自動解析システム」を用いて解析した。
その結果、2型糖尿病患者と対照者で腸内細菌の総数に大きな違いはなかったものの、腸内フローラを構成する腸内細菌の割合が異なることが判明した。血液中に含まれる腸内細菌を解析したところ、対照者では50名中2名(検出率4%)の血液中に腸内細菌が検出されたのに対し、2型糖尿病患者では50名中14名(検出率28%)の血液中に腸内細菌が検出された。
これらの結果から、日本人2型糖尿病患者では腸内フローラが乱れていることと、腸内細菌が腸内から血流中へ移行しやすいことが明らかになった。
研究グループは、「腸内フローラの乱れや腸内から血流中に移行した腸内細菌が2型糖尿病に伴う慢性的な炎症に関与することが明らかになれば、腸内環境の改善により2型糖尿病に伴う炎症を抑制し、インスリン抵抗性を改善できるようになる」とコメントしている。

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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