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2014年06月06日
食物繊維が心臓病や脳卒中を防ぐ 1日20グラム以上が目標
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- 食事療法
毎日の食事で食物繊維を十分に摂取することが、心臓病や脳卒中の予防につながるという研究が発表された。「野菜や果物を毎日食べることが重要」と研究者は強調している。
食物繊維は、食物に含まれている、消化酵素で消化することのできない物質のこと。便秘の予防をはじめとする整腸効果だけでなく、血糖値上昇の抑制、血液中のコレステロール濃度の低下など、さまざまな生理機能があることが分かっている。 食物繊維の日本人の平均摂取量は15g程度で、ほとんどの日本人が不足気味だ。日本人の食事摂取基準2015年版では、食物繊維の目標摂取量は成人男性で1日20g以上、女性で18g以上となっている。 食物繊維を十分に摂取すると、冠動脈疾患(心臓病)、脳卒中、2型糖尿病のリスクを低減する効果に加えて、これらの病気の原因となる高血圧や肥満の改善にもつながる。さらに、血中脂質、血糖値、血圧などの改善効果があることが明らかになっている。 食物繊維は、野菜・果実・海藻・豆類・きのこ類などに多く含まれている。特におから・しいたけ・ひじき・しらたき・切り干し大根・ブロッコリー・納豆・ごぼう・さつまいも・かぼちゃ・たけのこ・いんげん豆・そば・ライ麦パンなどは、普通に食べる量の中に食物繊維が2〜3g含まれている。これらの食材を毎日の食事の中に取り入れると、食物繊維を効率良く摂取できる。
食物繊維をとることで心臓病の死亡リスクが低下
心臓の筋肉(心筋)に血液を供給している血管を「冠動脈」といい、この冠動脈が動脈硬化などにより心筋に必要な血液を供給できなくなると、狭心症や心筋梗塞などの「冠動脈疾患」(心臓病)を発症する。食物繊維を摂取すると、血圧が下がり、血液中の脂質が改善し、インスリンの効きを悪くする「インスリン抵抗性」も改善されることが、多くの研究で確かめられている。食物繊維を食事で十分にとることが、冠動脈疾患を予防するために必要だ。
ハーバード公衆衛生大学院のシャンシャン リー氏らの研究で、食物繊維をもっとも多くとっている人は、もっとも少なくとっている人に比べ、9年間で心臓病が原因で死亡する確率が25%低下することが明らかになった。食物繊維を1日10g多くとると、9年間で死亡リスクは15%も低下するという。この研究は医学誌「ブリテッシュ メディカル ジャーナル」に発表された。
リー氏ら研究チームは、米国で行われている2件の大規模な前向き研究のデータを解析した。「看護師の健康に関する研究」(Nurses' Health Study)に参加した12万1,700人、「医療従事者追跡研究」(Health Professional's Follow-up Study)に参加した5万1,529人のデータを調べた。
心筋梗塞を発症したことのある1,840人の男性と、2,258人の女性を対象に解析し、食物繊維の摂取がもっとも多いグループをもっとも少ないグループを比較したところ、全原因の死亡率は0.75倍に低下し、穀類の食物繊維に限って解析すると0.73倍に低下することが判明した。心筋梗塞の発症後に食物繊維の摂取量を増やした人に限って解析しても、死亡率は31%減少していた。
脳卒中の予防にも食物繊維が効果的
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[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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