ニュース
2014年06月06日
たばこ1本で寿命は14分短くなる 諦めずに禁煙にチャレンジ
- キーワード

習慣的に喫煙している人の割合は年々減ってきているが、厚生労働省の2011年の調査によると、日本人の喫煙者は約2,100万人で、成人男性の32.4%、女性の9.7%が喫煙している。1960年代に男性で80%、女性で15%を超えていた頃に比べると、かなり低くなってきたが、それでも喫煙率は2割を超えている。
たばこを吸うと、血管がぼろぼろになり、血液がどろどろになる。喫煙によって血管の壁が損傷を受けて、細胞の機能不全につながる。血液でも血栓ができやすくなり、酸素運搬能が低下する。
たばこには交感神経を刺激して血糖を上昇させるだけでなく、体内のインスリンの働きを妨げる作用もなる。そのため2型糖尿病を発症しやすくなる。脳梗塞や心筋梗塞、腎臓病などの合併症のリスクも高まる。
たばこは、がんのリスクも高める。煙の通り道(くち・のど・肺)はもちろん、唾液などに溶けて通る消化管(食道・胃)、血液中に移行して排出される経路(血液・肝臓・腎臓などの尿路)でもリスクが高くなる。
喫煙は肺炎を含む急性の呼吸器疾患を引き起こす原因にもなる。成人において主要な呼吸器症状のすべて(せき・たん・ぜいぜい・息切れなど)を引き起こす。「肺の生活習慣病」といわれる慢性閉塞性肺疾患(COPD)の最大の原因はたばこだ。
これをたばこ1本あたりに換算してみると、20歳前から1日に20本、50年間たばこを吸っていた人は、一生に吸うたばこの数は合計36万5,000本。10年寿命が縮まるとして、タバコ1本では14.4分寿命が縮まることになる。20本入りのたばこ1箱では、なんと4.8時間の命を削っていることになる。


禁煙の実施には、「自力で行う」、「市販の禁煙補助薬を利用する」、「医療機関を受診する」などの方法がある。医療機関の禁煙外来などでは、市販品より高用量のニコチンパッチやのみ薬を使用したり、医師のアドバイスを受けて禁煙に取り組むことができる。医療機関を受診し、自分に合った禁煙補助薬を用いるほうが禁煙に成功する可能性が高くなる。
2006年に禁煙治療に健康保険が適用されるようになると、禁煙外来も広く社会に浸透した。2008年に飲み薬も使えるようになり、治療の選択肢も広がった。今では、禁煙外来を受診できる医療機関も全国で1万5,000ヵ所以上に拡大している。
“たばこを吸いたい”という欲求のもとになっているのは、「ニコチン依存」だ。ニコチンは脳に作用して、快感や覚せい、気分の調整などにかかわる神経伝達物質の放出に影響を与える。イライラなどの離脱症状は、禁煙を始めて1週間ほどで治まってくる。
禁煙の効果は、「息切れしにくくなる」、「食事がおいしくなる」、「肌の調子が良くなる」、「部屋がきれいになる」など数多い。禁煙の効果は1分後からあらわれ、8時間で運動能力が改善、24時間で心臓発作の発症率が下がるなど、継続時間が長くなるにつれてその効果が大きくなる。
禁煙を「たばこから自由になること」と肯定的に捉え直し、失敗しても諦めずにチャレンジし続けることが大切だ。友人といっしょに禁煙を始めて励ましあったり、成功した人からアドバイスを受けるのも効果的だ。
中高生を対象に禁煙の理由を尋ねた調査結果でも、「値段が高い」という回答が多かった。日本が批准している「たばこ規制枠組み条約(FCTC)」でも、価格政策は規制の柱として盛り込まれている。
日本では、4月の消費税引き上げに伴い、たばこの値段も引き上げられた。代表的な銘柄は1箱(20本)が410円から430円になった。たばこには消費税のほかに、国・地方のたばこ税、国のたばこ特別税がかかっており、430円のうち64%が税金だ。
こうみると、現在でも税金が多くかかっているようにみえるかもしれないが、他の先進国では税金が70〜80%以上の国も珍しくない。価格も国によっては1,000円以上する場合もある。そう考えると、日本のたばこの値段は決して高いとはいえない。
2003年に厚生労働省が発表した「職場における喫煙対策のためのガイドライン」でも、全面禁煙が不可能で、空間分煙とする場合の設備としては、非喫煙場所に煙が漏れない“喫煙室”が推奨されている。さらに空気清浄装置はたばこの煙の成分を除去できないので、煙が拡散する前に吸引して屋外へ排出する方式が勧められている。
受動喫煙の対策に取り組んでいる国内の企業は80%余りに上り、会社の経営に与える影響について考える企業は増えてきている。2020年にオリンピックが開かれる東京都で受動喫煙防止条例を制定することに約6割が「賛成」とするインターネット調査の結果も発表されている。
受動喫煙防止条例は、神奈川県と兵庫県で制定されている。東京都ではいまのところ条例制定の動きはないが、今後は受動喫煙防止の流れが強化されそうだ。
禁煙治療に保険が使える医療機関情報(最新版)(日本禁煙学会)
Impact of smoking on mortality and life expectancy in Japanese smokers: a prospective cohort study(ブリティッシュ メディカル ジャーナル 2012年10月25日)
たばこと健康に関する情報ページ(厚生労働省)