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2014年05月09日
毎日の運動が体力低下を抑制 簡単な運動テストで体力チェック
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老化は現実に避けられないものであり、加齢に伴い体の機能が徐々に低下するのは、やむをえない。しかし、老化の進み方は1人ひとりで異なる。健康度・老化度を示す指標である「活力年齢」は、生活習慣を改善すれば若返らせることができる。
同じ60歳の人でも、ある人の活力年齢は68歳、別の人の活力年齢は48歳と、20歳もの個人差がみられることは珍しくない。
活力年齢を向上するために確実な方法は、ふだんから運動をすることだ。毎日体をよく動かせば、体力低下の度合いを小さくすることができる。
3つの簡単な運動テストを行うことで、どれだけ長く健康な生活をおくれるかが分かるという調査結果を、英ユニバーシティ カレッジ ロンドンの研究者が発表した。
その3種類の運動テストとは、(1)握手を力強くできる、(2)椅子から立ち上がるのが早い、(3)目を閉じて片足立ちをした状態で、長くバランスを保てる、というものだ。
もしもあなたが3つの運動テストをうまくこなせるななら、健康な生活を長くおくれる可能性が高い。
反対に、握手の力が弱く、椅子から立ち上がるのが難しく、体のバランスをとるのが難しいのであれば、年齢が進むと死亡リスクは上昇する。
研究チームは、1946年生まれの男女約2,800人(男性 1,355人、女性 1,411人)を対象に調査を行った。53歳の時点で握力、椅子からの立ち上がり速度、立位バランス保持時間を測定し、その後66歳になるまでの13年間追跡した調査した。
期間中に177人が死亡したが、運動機能がもっとも低かった下位5分の1のグループは、もっとも高かった上位5分の1のグループに比べて、全死因による死亡リスクが高かった。
特に、運動テストをすべてできなかったグループでは、すべて実行できたグループに比べ、死亡リスクは12倍に上昇した。
運動の効果は脳にも及ぶ。過去に行われた研究では、歩行速度が平均より遅いと、認知症を発症する可能性が高まることが示された。別の研究では、運動を続けている人は、脳卒中などによる脳の挫傷の度合いが低いことが確かめられた。
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掃除機をかけたり、ショッピングカートを押したりといった日常の身体活動は、腰や膝に不安のある人や、膝関節症のある人では負担になる。
そうした人でも、運動や身体活動を毎日続けていれば、障害があらわれるリスクを減らすことができるという研究が発表された。
米ノースウェスタン大学医学部のドロシー ダンロップ氏らは、肥満などが原因で「変形性膝関節症」などを発症し、障害を発症するリスクの高い45~79歳の男女約1,700人を対象に調査を行った。
変形性膝関節症があると、着替え・入浴・部屋の中を歩く、電話をかける・食料品の買い物・お金の管理など、自立した生活を送ったり、生活の質を保つために必要な活動が難しくなる。
参加者に、起きている間に活動量計を腰に装着してもらい、身体活動の量と強さを1週間かけて測定した。さらに2年後に、障害の発症について質問した。
その結果、中等度・強度の運動時間が多かった人ほど、障害の報告は少ないことが判明した。また、軽度の活動時間が多くなると、障害が少なくなっていた。
軽度の身体的な活動を1日あたり4時間以上行っている人は、3時間しかしていない人に比べ、障害を発症するリスクが30%以上も低かった。
「健康上の理由で身体活動の強度を上げることのできない人でも、軽度な身体活動を行う時間を増やすだけで、障害の軽減につながります」と、ダンロップ氏は述べている。
日常生活の中に軽い運動を取り入れることによって、体は丈夫になり、転倒予防に効果的な足・腰・腹部の筋力アップやバランス能力、歩行能力が改善される。それによって、日常生活の活動範囲が広がり、生活機能が高まる。
「年齢や体力水準、健康状態などに応じて、無理のない範囲内で良いので、日常的な運動を続けることが大事です」と、強調している。
Simple tests of physical capability in midlife linked with survival(ブリティッシュ メディカル ジャーナル 2014年4月29日)
Light Activity Every Day Keeps Disability at Bay(ノースウェスタン大学 2014年4月30日)
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