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2013年10月11日
運動に薬物療法と同程度の効果 「もっと運動を」と研究者

英国では、身体運動所要量を満たしている英国の成人は20.6%しかいない。一方で、処方薬の利用増加は激増しており、1ヵ月間に処方薬を使った患者は48.5%に上り、3種類以上の処方薬を使った患者は21.7%に上る。また、2000年時点で1人あたりの年間処方薬数は11.2であったのに比して、2010年では17.7に増えた。
「薬物療法に比べ、運動療法に関するエビデンスが不足していることが、薬の偏重をもたらしている可能性があります。実際には運動療法の効果は高いのに、十分な評価は行われてこなかったといえます」と、米アラバマ大学のドナ アーネット教授は話す。
医薬品に関する研究は、安全性を確保するために、厳格な基準のもとに行われる。運動療法については、医薬品の研究ほど労力が注がれているわけではない。結果として、運動療法に関する研究は少なくなり、患者が運動療法を処方される頻度は、薬物療法に比べ低いという。
「高血圧や糖尿病、心臓病などのある患者は、薬物療法を開始するまえに、運動療法に取り組むことが勧められますが、多くの患者は十分な運動を行いません。生活スタイルを変えるのは、多くの患者さんにとって容易なことではないのです。これまで運動をしてこなかった人は、急にウォーキングをする気にはならないかもしません。そうした場合、血圧値や血糖値の治療目標を達成するために、薬を処方した方がずっと簡単なのです」(ナシ氏)。
例えば、脂質改善に広く用いられるスタチン薬は、以前は「生活スタイル改善のための集中的な介入をやり尽くした」後で、処方されることが多かった。現在では、脂質異常症と診断されると、すぐに処方されることが多いという。
「運動というとマラソンのような激しいものをイメージする人も多く、運動を避ける原因になっています。実際には激しい運動をする必要はないのです。運動を効果的・安全に行うために、個々の患者さんに合わせた運動プログラムを作成する必要がありますが、現在の医療体制では十分に対応できいません」(アーネット教授)。
運動療法には大きな効果があることをアピールし、より多くの患者に運動が治療の選択肢であることをアピールし、運動に取り組める環境づくりを推進する必要があると、研究者は指摘している。
Exercise “potentially as effective” as many drugs for common diseases(BMJ 2013年10月1日)
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