ニュース

2013年07月26日

低血糖と運転免許 安全に運転するための7ヵ条

 意識消失を起こし車の運転に支障をきたす可能性のある病気をもつ人について、運転免許証の不正取得を防止する規定を盛り込んだ改正道路交通法が成立した。対象となる疾患には、「無自覚性低血糖」も含まれる。

 2013年6月に改正道路交通法が成立し、車の運転に支障を及ぼす可能性がある病気の患者が、運転免許証の取得や更新時に虚偽申告をした場合の罰則規定が新設された。対象となる疾患には、無自覚性低血糖も含まれる。病状の虚偽申告に関する罰則は「1年以下の懲役または30万円以下の罰金」。改正道交法は公布後6ヵ月〜2年以内に順次施行される。
低血糖をコントロールできていれば運転免許は問題ない
 道交法では、2002年から「運転免許を与えない者もしくは保留することができる者」の中に、「発作により、意識障害または運動障害をもたらす病気であって政令で定めるもの」が規定されている。この中にはさまざまな病気が含まれており、「無自覚性の低血糖(人為的に血糖を調節することができるものを除く)」も含まれている。

 日本では、飲酒運転の厳罰化や、道路整備などが功を奏し、交通事故死は減少の一途をたどっている。法改正はもともとは、それまで一律に制限されていた免許取得の権利を緩和することが目的だった。現在は、本人による自己申告を前提に、必要に応じて医師の個別判断にもとづくかたちで、法律の運用が行われている。

 インスリンや経口薬による薬物療法を続けており低血糖になるおそれのある人が、人為的にコントロールできれば運転免許の取得は問題はないが、コントロールする処置をあえてしないで運転し事故を起こした場合は問題になるというのが一般的な認識だ。

 医師が「安全な運転に支障を及ぼす意識消失などの症状の前兆を自覚できている」と診断した場合や、「運転中の意識消失などを防止するための措置を実行できているので、運転を控えるべきとはいえない」と診断した場合には、運転免許を取得できることになる。

低血糖のサインがあるときは運転を控えることが重要
 車の運転時の低血糖は、海外でも問題になっている。米国糖尿病学会(ADA)は、「糖尿病であっても運転を控える必要はなく、運転ができるかどうかは医師の判断によるべき」との意見表明を2012年に発表した。

 ADAは包括的禁止や規制には反対の姿勢を取っており、運転リスクを有する可能性のある患者は、医師による診断を受けるよう勧めている。

 「適切な対応をすれば、運転時の低血糖を防ぐことができる。糖尿病患者の運転規制への不適切な勧告あるとすれば、それは糖尿病をよく知らない人からのものであることが懸念される」と、米ニューヨーク・クイーンズ病院の内分泌部長であるダニエル ローバー氏は述べている。

 過去15件の研究の分析では、糖尿病の人が自動車事故を起こす確率は、糖尿病でない人に比べ12〜19%上昇するにとどまる。「大多数の糖尿病患者は通常の生活をおくっており、運転に支障はない」としている。

 ADAはインスリン療法を行っている糖尿病患者が安全に運転するために、次のことをアドバイスしている。

交通事故を起こさないための低血糖対策 7ヵ条
  1. 運転前と長い時間の運転時には、一定間隔で血糖自己測定を行い、自分の血糖値をチェックしましょう。

  2. 運転するときは、血糖自己測定器と、ブドウ糖やそれに代わるものを、常に側に置いてください。

  3. 低血糖のサインを感じたり、血糖自己測定を行い血糖値が70mg/dL未満と低かった場合は、運転をやめて、車を安全な場所にとめましょう

  4. 低血糖を確かめたときには、吸収の速いブドウ糖製剤や、ブドウ糖を多く含むジュースやスナックなど、血糖値を上げやすい食品をとりましょう。ブドウ糖を含まず低カロリー甘味料を使用した清涼飲料などもあるので、あらかじめ成分を確かめておきましょう。

  5. 捕食をしてから15分待ち、血糖値が目標値に達していることを確認してから、運転を再開しましょう。

  6. もしもあなたが無自覚性低血糖症を経験しているのなら、運転をやめて、主治医に相談してください。

  7. 患者によっては糖尿病網膜症により視力障害が起きている場合があります。末梢神経障害によりアクセルやブレーキのペダルの感じ方が弱まっている場合もあります。早期に医師に相談しましょう。

Driving When You Have Diabetes(米国高速道路安全委員会)
Diabetes and Driving(米国糖尿病学会 2013年1月)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

play_circle_filled 記事の二次利用について

このページの
TOPへ ▲