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2013年07月01日
DCCT/EDICの最新成果 強化療法の長期的ベネフィットを検証
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- 医療の進歩 医薬品/インスリン 糖尿病の検査(HbA1c 他)
EDICは、DCCT終了後の1994年から開始され、DCCTに参加した患者の90%以上が引き続き参加した。DCCTで従来療法群だった患者にも強化療法を開始、その後の4年間の経過を観察し、治療の費用対効果まで検討した。
DCCTが始まった時点の、HbA1cの平均は両群とも約9%だった。従来療法群は研究期間中もHbA1cは9%前後で推移したが、強化療法群では研究開始後、ただちに血糖コントロールが改善し、HbA1cの平均は7%前後に維持された。
DCCTでは、強化療法により血糖正常化を達成することで、糖尿病合併症の発症が減少することが示された。血糖コントロールは、インスリンの頻回注射あるいは持続皮下インスリン注入(CSII)による強化インスリン療法と、血糖自己測定(SMBG)によって継続された。
早期の強化療法の導入により、従来の治療と比較して網膜症、腎症、冠動脈疾患を約76%減少することが、1993年に発表された報告であきらかになった。 また、強化療法は患者の残存インスリン分泌能の低下を遅らせることも報告された。
「糖尿病の合併症は、より良い血糖コントロールによって抑えられることがあきらかになりました。DCCTで得られた成果により、世界的に強化インスリン療法が1型糖尿病のスタンダードな治療として採用されたのです。DCCT/EDICは1型糖尿病を持っている人々に新しい望みを与えました」と、マサチューセッツ総合病院糖尿病センターのデイビッド ネイサン氏は話す。
DCCTが終了し20年が経過したが、参加者の95%は生存しており、その後の経過観察でも強化療法が有効であることは裏付けられている。
「早期に強化療法を開始することが、腎症の予防と進行抑制に有効であることが確認されています。腎症は心疾患のリスクも高めます。強化療法によって腎機能の低下を抑える意義は大きいのです」と、ビール氏は述べた。
心臓発作や心筋梗塞などの冠動脈疾患は、糖尿病患者の早期死亡の主要な原因となる。ジョージワシントン大学のジョン ラッシン氏は大血管障害について報告し、「強化療法が心臓発作や心筋梗塞を60%に減少することがあきらかになりました。そのベネフィットはDCCT/EDICの終了後の2012年現在まで維持されています」と話した。
ジョスリン糖尿病センターのロイド アイエロ氏は、視力の低下が起こる重度の糖尿病網膜症リスクは、強化療法群で50%低下したことを報告した。EDICから18年後でも、強化療法群で重症の糖尿病網膜症リスクは35%低下していた。
「重度の網膜症は失明の原因になります。治療法が確立されているので、網膜症の進行を阻止し遅らせることはできますが、早い段階で強化治療を行うことが効果的であることが臨床的に確かめられています。強化療法がそれを実現します」と、アイエロ氏は説明した。
DCCT/EDICに参加した患者は30年以上の糖尿病の罹病歴をもつ。その3分の2は、手や肩部の進行性硬化症に悩まされている。マサチューセッツ総合病院のメアリー ラーキン氏は、糖尿病医療でまだ十分解明されていない進行性硬化症について解説した。
「網腹症や腎臓病、神経障書などに比べると、手や肩部の硬化症は糖尿病の合併症として過小評価されています。しかし、これらの部位の柔軟性が失われると、毎日の活動の妨げとなり、身体活動が損なわれるおそれがあります」と、ラーキン氏は説明した。
DCCT/EDICの参加者のうち、手の硬化症が1ヵ所もない患者は34%だった。残りの66%は1ヵ所以上に硬化症をもっていた。「平均HbA1cが高いことが、硬化症のリスクであることが判明しました。血糖コントロールを改善することが、硬化症のリスク低下につながります」と、ラーキン氏は述べた。
「DCCT/EDICの長期の試験結果によって示されたのは、1型糖尿病とともにい生きる人は早期に強化療法を開始する必要があるということです。強化インスリン療法は、患者にとって負担が少なくなく、医療費もかかります。しかし、網膜症や腎症、心臓病などのリスクを減少させる効果があることはあきらかなのです。この注目すべき研究結果をもとに、私たちは全ての1型糖尿病患者がなるべく効果的・安全に強化療法を行うことを保証できるようチャレンジしています」と、国立糖尿病・ 消化器・ 腎疾病研究所(NIDDK)のジュディス フラドキン氏は述べている。
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