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2013年06月28日

運動で「良い脂肪」が増える インスリン感受性が改善

キーワード
運動療法
第73回米国糖尿病学会(ADA)年次学術集会
 運動を続けることで増える「良い脂肪」が、体のエネルギー代謝を高めているという研究が発表された。運動不足によって増える内臓脂肪などの「悪い脂肪」を減らすことが、良好な血糖コントロールにつながることが示唆された。第73回米国糖尿病学会(ADA)(6月21日〜25日、シカゴ)で発表された。
体脂肪には“良い脂肪”と“悪い脂肪”がある
 「運動は筋肉によい効果をもたらしますが、影響が出るのは筋肉だけではありません。実は体脂肪にも効果があらわれるのです」と、ジョスリン糖尿病センターのクリスティン スタンフォード氏は説明する。

 もともと脂肪は、飢餓状態などの非常時のエネルギー源として、また体温の保持、ホルモン分泌への関与など、さまざまな働きをしている。しかし、増えすぎた脂肪は弊害になってしまう。

 「脂肪には“良い脂肪”と“悪い脂肪”があり、運動を続けると“良い脂肪”が増えます」と、スタンフォード氏は説明する。

 適度な運動を続けると内臓脂肪が減り、代わりにエネルギー代謝を高める「良い脂肪」である褐色脂肪が皮下に増える。褐色脂肪はグルコース代謝にも影響しており、身体組成を改善し、体脂肪量を減少させ、インスリン感受性を改善すると考えられている。

 内臓脂肪は、腹腔内の内臓の隙間に付いた脂肪で、血管に入り込みやすく、インスリン抵抗性を引き起こし、2型糖尿病などの生活習慣病の危険因子になる「悪い脂肪」だ。運動を習慣として続けると、まず内臓脂肪が減りはじめる。

 脂肪細胞には、脂肪滴と呼ばれる脂肪のかたまりがあり、余分のエネルギーをためる貯蔵庫としてはたらいている。白色脂肪細胞には大きな脂肪滴があり、脂肪をたくわえる役割をしている。一方、褐色脂肪細胞には小さい脂肪滴が多数含まれており、脂肪を燃焼し熱を産生しやすい。

 運動を続けると、内臓脂肪が減る一方で、褐色脂肪が増えエネルギーの代謝が活発になり、肥満になりにくくなる。首や肩甲骨のまわりなど、体のごく一部にしかないと考えられていた褐色脂肪細胞だが、最近の研究では皮下脂肪にも存在することが分かってきた。

運動を続けると体脂肪が変質し、褐色脂肪が増える
 スタンフォード氏ら研究チームは、実験マウスを11日間、ホイールで運動させる実験を行った。運動を続けたマウスでは、白色脂肪細胞が減り、褐色脂肪細胞が増えることが確認された。

 実験マウスの褐色脂肪細胞を、運動不足で体脂肪の多いマウスの皮下に移植すると、12週間以上、耐糖能とインスリン感受性が改善することが分かった。

 ヒトを対象とした実験でも、同様の結果が示された。エアロバイクで12週間、運動を続けた男性では、褐色脂肪が増えていた。

 「運動が体に良いことは多くの人がご存知ですが、研究で分かったことは、有酸素運動や筋力トレーニングによって体脂肪は大きく変質し、褐色脂肪が増え、エネルギー代謝に好ましい影響を与えるようになることです」と、ジョスリン糖尿病センターのローリー グッドイヤー氏は説明する。

 「血糖コントロールを改善するためには、体重を減らして脂肪を減らしただけでは不十分である可能性があります。運動をすることが、体脂肪の組成を変えることにつながり、相乗的な効果をもたらします」(グッドイヤー氏)。

 逆にいえば、肥満のある人が運動を続けていても、体重の落とすことができない場合も、運動の継続によって体脂肪に好ましい変化がもたらされている可能性があるという。「適度な運動が続けることが、体のエネルギー代謝を改善していきます。体重に変化がないという人も、あきらめずに運動を続けるべきです」と強調している。

 この研究は、米国糖尿病学会(ADA)と米国立衛生研究所(NIH)が資金提供し行われた。

New Joslin Study Shows Exercise Creates “Good Fat”(ジョスリン糖尿病センター 2013年6月21日)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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