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2013年06月26日
「神経障害性疼痛」発症の引き金を発見 痛みを抑える治療法に期待
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- 糖尿病合併症
糖尿病の合併症のひとつに、糖尿病神経障害に伴う痛みがある。予防するために、糖尿病をそれ以上進行させないよう、食事や運動、薬などで血糖を良好にコントロールすることが基本となる。
その後、薬を使って神経の障害を引き起こしている原因に対する治療(原因療法)や、痛みやしびれを和らげる治療(対症療法)が行われる。しかし、痛みがひどい場合には、既存の薬物療法が効きにくい場合があり、新たな治療法が期待されている。
研究チームは、白血球を遊走させる働きをするサイトカインである「ケモカイン」に着目。情報伝達を担うタンパク質のケモカインの一種である「CCL-1」が、痛みに深く関与していることを世界ではじめて解明した。
神経障害性疼痛を再現した実験マウスを調べたところ、脊髄の「CCL-1」が通常の2倍に増加していた。また、正常なマウスの脊髄に「CCL-1」を注射すると、通常は激痛を感じたときに示す動作を、少しの刺激でもみせるようになった。
「CCL-1」の働きを妨げる中和抗体をあらかじめ注射しておくと、激痛を感じなくなる予防効果があることも確認した。
さらに、「CCL-1」の受容体となる「CCL-8」は、正常なマウスでは脊髄の神経細胞上にあるが、神経損傷の起こった脊髄では、「CCR-8」は神経細胞上だけでなく、中枢で脳内免疫防御を司る「ミクログリア」や、中枢で細胞外液の恒常性などを維持する「アストロサイト」にもあることも解明した。
「CCL-1」が増えると「CCR-8」も増え、炎症が生じて神経の障害につながる。「CCR-8」の作用をなくしたノックダウンマウスでは、神経障害性疼病は抑制されていた。「CCL-1」や「CCR-8」の働きを抑える薬剤を開発すれば、神経障害性疼痛を抑制する新薬になる可能性がある。
この研究は、福岡大学薬学部の高野行夫教授や九州大学大学院薬学研究院の野田百美准教授、生理学研究所の秋元望氏らによるもので、英国の医学誌「Cell Death and Disease」電子版に6月20日付けで発表された。

九州大学大学院薬学研究院
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