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2013年05月09日
肥満に伴う自己免疫疾患の中心となる「AIM」 発症予防の可能性
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肥満の人が多くもっているタンパク質「AIM」が、糖尿病や動脈硬化症などの自己免疫疾患の発症に関与していることを、宮崎徹・東京大学教授(分子病態医科学)らがマウス実験でつきとめた。血液中のAIMを減らせば、自己免疫疾患の発症を抑えられる可能性があるという。
AIMが糖尿病などの治療ターゲットに
東京大学は、肥満にともなう自己免疫疾患の発症機序をあきらかにし、その中心的役割を果たすのが、脂肪を融解する血液中のタンパク質「AIM(Apoptosis Inhibitor of Macrophage)」であることを見出したと発表した。
成果は、東大大学院 医学系研究科 疾患生命工学センター 分子病態医科学部門の宮崎徹教授らの研究チームによるもの。研究の詳細は、「Cell Reports」オンライン版に4月4日付けで発表された。
肥満は2型糖尿病や動脈硬化症などのさまざま病気の原因となる。そして、さまざまな細胞を攻撃する抗体(自己抗体)ができ、最終的にさまざまな臓器に炎症が生じて機能が損なわれてしまう「自己免疫疾患」も、肥満にともなう疾患群のひとつであることが知られている。
例えば、肥満にともない、インスリン分泌不全や甲状腺機能低下、あるいは不妊症などが起こることが報告されている。しかし、なぜ肥満が多彩な自己免疫疾患を導くのか、そのメカニズムはあきらかになっていなかった。
宮崎教授らは1999年、体内に侵入した異物を攻撃する白血球の一種「マクロファージ」で作られているAIMを発見し、さまざまな病気とAIMの関係を調べた。
過去の研究で、AIMが脂肪を融解することによって肥満の進行を抑制することや、肥満が過度に進み糖尿病や動脈硬化のリスクが高まった段階では、逆に血液中のAIMを減らすことによって肥満であってもこうした病気の進展を抑えられることをあきらかになっている。
AIMが発見された当初は、細胞のアポトーシス(細胞死)を抑制する分子と考えられていたが、その後の研究で、アポトーシス抑制以外にも、作用する細胞の種類などの違いによりさまざまな作用があることが判明した。
最近は、脂肪を分解する抗肥満作用を始め、糖尿病や動脈硬化の発症にも重要に関わっていることも分かっており、肥満やメタボリックシンドロームのカギとなるタンパク質の1つであると注目されている。
今回の研究は、AIMは肥満にともなう自己免疫疾患の発症に対しても決定的な役割を演じていることをあきらかにしたものだ。肥満が進行すると、血液中で増える脂肪酸によって免疫細胞が活性化され、免疫の中で大きな役割を担っている「免疫グロブリン」のひとつである「IgM」が血液中で増加する。
IgMは「IgG」や「IgE」などと同じく抗体の1種であるが、もっとも幼若な抗体だ。IgMは抗原に対する特異性が低く、細菌など外来抗原に加えて自己抗原にも結合できるため、血液中のIgMが過度に増加すると、脾臓で自己抗体を作る産生細胞を活性化させてしまい、自己免疫疾患の原因となる。
AIMは血液中でこのIgMに結合しており、脾臓でIgMが長期間働けるように強力に支援していることがあきらかになっている。肥満が進行し血液中のIgMが増加しても、AIMの量が低いと、脾臓でIgMがうまく働けず、悪玉の免疫細胞も増えない。研究チームはAIMを作れなくしたマウスを使って、これを証明することに成功した。
糖尿病や動脈硬化と同じく、過度に肥満しても血液中のAIMの量を抑えておけば、自己免疫疾患もまた抑制できる可能性が高いことがあきらかになった。「AIMは、糖尿病、動脈硬化、自己免疫疾患など、肥満にともなう幅広い疾患の統一的な治療のターゲットになる」と、研究チームは語っている。
東京大学大学院医学系研究科 疾患生命工学センター
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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