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2012年03月15日
1型糖尿病のシンポジウムを開催 日本IDDMネットワーク
1型糖尿病を完治する治療法を開発するために、再生医療など先端分野で研究が進められている。同NPO法人は、患者同士の情報交換に加え、患者・家族らからの寄付金をもとに先端研究を支援する「1型糖尿病研究基金」を運営している。
研究基金活動をさまざまな分野から盛りたて応援する「100人委員会」も立ち上げた。当日はサポーター代表として小説家の村上龍氏や、阪神タイガースの岩田稔投手らが、ビデオで応援メッセージを寄せた。
日本IDDMネットワークの前身は、1995年の阪神・淡路大震災をきっかけに緊急時の患者・家族会の全国的連携をはかるため発足した「全国IDDM連絡協議会」。1型糖尿病の交流会や全国シンポジウムを開催するなど、年々活動の幅を増やしてきた。
その活動は「1型糖尿病患者・家族会を対象にした研修・交流会の開催」、「患者支援策実現に向けての政策提言」、「インスリンポンプとカーボカウントセミナーの開催」、「1型糖尿病[IDDM]お役立ちマニュアルの作成・配布」、「糖尿病の先進的な研究を助成する『1型糖尿病研究基金』の運営など多岐にわたる。
「1型糖尿病は、現在の医学では完治しない病気だが、近い将来に治る病気になる」と同NPO法人の井上龍夫理事長は強調する。インスリンは1921年に発見され、翌年に製剤化が成功した。はじめてインスリンが投与されてからまだ100年も経っていないが、医療の進歩はめざましい。
シンポジウムでは大阪市立大学大学院医学研究科の川村智行氏が「現在では持続時間の異なるさまざまなタイプのインスリン製剤、痛みの少ない細い注射針、操作しやすい血糖測定器等が開発され、適切にインスリン治療を行うことで生活の質を高めることができるようになった。また、多彩な機能をもつインスリンポンプも治療に使用できる。持続血糖モニター(CGM)も登場した。リアルタイムに血糖値をみながら血糖コントロールをできるようになる日は近いだろう」と述べた。
現在、インスリン療法以外の治療としては膵臓移植が確立されてるが、世界で根治をめざして行われている治療法として、より侵襲の少ない「膵島移植」がある。前米国ベイラー膵島細胞研究所ディレクターの松本慎一氏は「膵島移植の治療成績は、膵臓移植に匹敵するものになった。移植医療の大きな課題として、提供臓器の不足があるが、動物の膵島を用いたり患者自身の細胞を用いる再生医療の先端的な研究も行われている」と述べた。
2日目の特別プログラムでは、日本IDDMネットワークが各地で実施している「カーボカウントとインスリンポンプのセミナー」や、持続血糖モニター(CGM)についての講演、1型糖尿病の患者や家族による座談会が行われた。
日常生活における血糖値を把握する手段として、血糖自己測定(SMBG)が頻用されているが、SMBGは測定した時刻の“点”でしか血糖値を評価できず、それ前後の血糖値を推測できない。近年、血糖値の変化を“線”としてあらわし、血糖の日内変動を把握できる持続血糖モニター(CGM)が登場している。
東京慈恵会医科大学の辻野大助氏は講演で「CGMを用いると、夜間就寝中の血糖変動や、朝の高血糖も正確に評価できる。インスリン療法の最適化が可能となる」と述べた。
日本IDDMネットワークは「1型糖尿病研究基金」を2005年に立ち上げ、「ノーモア注射サポーター」として一口2,000円の寄付を募っている。「1万円で1型糖尿病を治す基礎研究が5回できる。100万円で新しい治療法の開発が可能になる、1,000万円で膵島移植の標準化の確立が可能になり、バイオ人工膵島移植の臨床応用も大きく近づく。ぜひ協力してほしい」と広く呼びかけている。
写真提供:日本IDDMネットワーク(3月16日更新)
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