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2012年01月05日
グルカゴンの代謝調節のメカニズム 糖尿病や寿命延長に影響
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名古屋大学環境医学研究所の林良敬准教授らの研究グループが、グルカゴンが血糖値上昇作用のほかに、アミノ酸やニコチンアミドの代謝を調節する重要な役割を果たしていることをあきらかにした。研究成果は米国糖尿病学会(ADA)が発行する「Diabetes」2012年1月号に掲載される。
血糖値(血中ブドウ糖濃度)を下げるホルモンはインスリンのみだが、血糖値を上昇させるホルモンはグルカゴンや副腎皮質ホルモンなどたくさんある。 糖尿病では血糖値が高くなることが問題となるが、逆に血糖値が下がりすぎても生命に危険が及ぶ。血糖値を上昇させる働きをもつグルカゴンは血糖の維持に必要で、生命の維持に必要不可欠であると考えられてきた。
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一方で、糖尿病の患者ではグルカゴンが過剰に分泌されることがあきらかとなっており、グルカゴンの作用を抑制する薬の開発が進められている。インスリンが膵臓のランゲルハンス島(膵島)のβ細胞で作られるのに対し、グルカゴンは膵島のα細胞で作られる。
グルカゴンを完全に欠損する状態にすると、血糖値や代謝状態にどのような変化が起こるかや、他のホルモンでは代償できない特異的な作用があるのかは、よく分かっていない。そこで研究グループは、グルカゴンを欠損するマウスをつくりだし詳しく調べた。
グルカゴンを欠損するマウスでは、インスリンの分泌が抑えられ、血糖値が正常に保たれることを確かめた。さらに肝臓における代謝を詳しく解析した。グルカゴンは主に肝臓に働いてその作用を発揮する。
その結果、ブドウ糖の代謝に大きな異常は認められなかったが、アミノ酸をエネルギー源として利用する働きが低下していることが分かった。また、肝臓の代謝異常を反映し、血中のアミノ酸濃度は2〜4倍増加していた。
このことから、糖尿病患者では重症度や病態によりアミノ酸濃度が変動する可能性があることを突き止めた。研究者らは「糖尿病患者などにおいて血中のアミノ酸濃度はあまり測定されることはないが、今後は治療方針を検討する上でアミノ酸濃度を測定することが重要となる可能性がある」と指摘している。
さらに、グルカゴンを欠損するマウスでは、生体内でエネルギー産生やアミノ酸代謝などに関与するビタミンの一種であるニコチンアミドを分解する働きが弱くなることをあきらかになった。
ニコチンアミドはカロリー制限やエネルギー不足の状態で働きを強める酵素であるサーチュインの働きを弱める。このことから、グルカゴンがニコチンアミノの分解促進を介してサーチュイン活性化・寿命延長という生体に有利な作用をもつ可能性が浮かび上がった。
研究者らは「グルカゴンの働きを抑制する治療薬の開発が進められている。この研究成果は、こうした新しい治療薬の効果と副作用を予測することにつながる。また今後の糖尿病、代謝関連疾患、さらにカロリー制限による寿命延長効果に関連した研究において、グルカゴンの働きに注目する必要がある」と述べている。
グルカゴンによる代謝の調節のメカニズムを解明(名古屋大学 2011年12月21日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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