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2011年11月11日
食事のカロリー摂取量をコントロールすれば寿命が延びる
食事のカロリー摂取量を管理し適度に抑えることで、加齢にともない増えていく2型糖尿病やがんなどの疾患を予防・改善できる。食事のコントロールを開始するのが早いほど効果は大きい。スウェーデンのゴーセンバーグ大学の研究者が、加齢にともない体に起こる変化に影響する酵素を発見した。
「腹八分目」の食事が、抗酸化酵素の働きを促している
体の中の酸素の一部は不安定で、多くの物質と反応しやすい活性酸素に変化する。この活性酸素は細胞を傷つけ、老化や動脈硬化など多くの疾患をもたらす原因となる。活性酸素による細胞へのダメージは「酸化ストレス」と呼ばれ、がん、2型糖尿病、動脈硬化、アルツハイマー病などの疾患や老化に関わるとされている。この「酸化ストレス」を抑える医療技術の開発が重要となる。
活性酸素はすべての組織や細胞で生じるが、酸化ストレスから自己を守るためのさまざまな防御システムがそなわっている。活性酸素の発生を抑制したり、分解処理したり、生じたダメージを修復・再生したりする。
そのため抗酸化作用と酸化ストレスとのバランスが健康を守る鍵となる。抗酸化作用をもつものは、高分子の抗酸化物質の他に、低分子化合物ではビタミンC、ビタミンE、カロテノイドやポリフェノールなどがある。これらはお互いに作用しあいながら抗酸化機能を発揮する。
ゴーセンバーグ大学のMikael Molin氏(細胞・分子生物学)は、活性酸素を除去する作用のある抗酸化酵素「ペルオキシレドキシン(Prx1)」に着目した。この酵素は加齢にともなう酸化ストレスにより不活性化しやすいが、食事でカロリー制限を行うとそれを防ぐことができるという。
「この酵素が、体の遺伝子が損傷を受けるのを防いでくれる。結果として体の老化の速度が遅くなる。食事のカロリーコントロールが重要であることが、あらためて示された」とMolin氏は話す。
酸化ストレスが糖尿病やがんの引き金に
カロリー摂取量を適正に管理すると、健康に好ましい効果を得られ、年齢が高くなると増えていく生活習慣病の発症を減らすことができるは明白だ。しかし、その具体的なメカニズムについては、不明の点が多かった。
Molin氏らの研究チームがこれまでに行ったサルを使った実験では、食事に含まれるビタミンやミネラルは必要量を確保しながら、糖質と蛋白質の摂取量を少しずつ減らしていことで、サルが予測以上に長生きできることを確認した。
研究チームは、酵母(イースト)をモデルとして使用して、細胞で有害な過酸化水素を分解する抗酸化酵素「ペルオキシレドキシン(Prx1)」を識別するのに成功した。この酵素は体に有害な活性酸素を除去する働きをし、カロリー制限を行うことで有効に働くことを確かめた。
ペルオキシレドキシンはほとんど全ての生物がもっているが、加齢によりダメージを受け、その活性が失われやすいという。しかし、カロリー制限を行うと、この酵素を修理する別の酵素「スルフィレドキシン(Srx1)」の産生が増える。この働きで加齢にともなう体の変化を遅らせることができる。
「損傷を受けたペルオキシレドキシンは、さまざまなタイプの酸化ストレスを引き起こし、がんや糖尿病といった生活習慣病につながる。抗酸化酵素の活性を維持できれは、こうした疾患の発症を抑え、寿命を延ばすことができる」とMolin氏は話す。
酸化ストレスは、過剰な活性酸素種が引き起こす状態で、多くの疾患に関わっていると言われる。酸化ストレス状態になると、ペルオキシレドキシンなどの蛋白質のシステイン残基が酸化されることがわかった。
ペルオキシレドキシンは、加齢にともない増える神経系に影響を及ぼすアルツハイマー病やパーキンソン病などの疾患に関与するプロセスを阻害することが示唆されている。がんの抑制にもスルフィレドキシンは役立つかもしれないと研究者は述べている。
研究結果は科学誌「Molecular Cell」に発表された。
Live longer with fewer calories(ゴーセンバーグ大学 2011年10月26日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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