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2011年11月08日

日常臨床のHbA1c値 JDS値とNGSP相当値の併記に 2012年度

 厚生労働省はHbA1c値表記の2012年度の対応として、10月13日に開催された「第5回保険者による健診・保健指導等に間する検討会」(座長:多田羅浩三・日本公衆衛生協会理事長)で、日常臨床では現行のJDS値と国際標準値(NGSP値、JDS値に0.4%を加えた値に相当)を併記し、特定健診・保健指導では、JDS値で受診者と保険者に結果報告を行うという案を示した。検討会ではこの案が基本方針として了承された。

 日本が現在使用されているHbA1cの表記はJDS(Japan Diabetes Society)値で、世界に先駆けて精度管理や国内での標準化が進んでいるが、国際標準となっているNGSP(National Glycohemoglobin Standardization Program)値よりも約0.4%低い値となっている。

 日本糖尿病学会は昨年、文誌や国際学会の発表において2010年7月1日以降は、国際標準値を使用する方針を発表。合わせて、将来的にはHbA1c値の表記を、NGSP値に相当する値に変更することを決定した。

 その背景には、JDS値を使用しているのは世界で日本のみで、糖尿病の診断・治療・研究におけるグローバル化の重要性を優先するためにHbA1cの国際標準化が必須となるという判断があった。

 ただし、日常臨床の場では表記の切り替えによる現場の混乱が予想されるため、当面JDS値を使用し、十分な広報活動を行い糖尿病学会が告示する日時までは引き続き現行のHbA1c(JDS値)を用い、その後国際標準値(NGSP相当値)に全国一斉に変更する予定としている。

特定健診では2013年4月1日以降の対応
 特定健診・保健指導の見直しに向けて議論している同検討会では、特定健診・保健指導でのHbA1c値表記の変更時期について6月と7月に2回議論したが、これまで方針がまとまらなかった。

 参考人として検討会に出席した日本糖尿病学会の関係者は、日常臨床と特定健診の両方で「国際的な情報の共有化などの観点から、速やかなNGSP相当値への表記の移行が求められる」として、2012年4月からNGSP相当値に変更することを要望。測定機器や検査結果の表記変更などを行う必要かあるため、来年の診療報酬改定に合わせて変更することが臨床現場においてコスト面で有利だからだ。

 しかし、保険者代表の検討会委員は「診療報酬改定にあわせたシステム改修を行うには追加コストが必要」と反対。「健診実施機関で健診受診者に対しては、新基準のNGSP値による表記を行った健診結果を通知しつつ、保険者に対しては、旧基準のJDS値に基づく報告を行う、というように用途に応じて表記を変更することは困難」との主張があった。

 結局、両者の主張の溝は埋まらず、2012年度は日常臨床と特定健診・保健指導でHbA1c値の表記が異なることになった。

 検討会に出席した日本糖尿病学会の門脇孝理事長は「JDS値とNGSP相当値の併記によって日常臨床で混乱が起きないようにすることが重要。学会で資料を作成し協力をお願いしたい」と述べた。

 なお、2013年4月以降の特定健診での対応について厚労省は「日常臨床の対応状況を踏まえ、関係者間で協議する」との方針を示すにとどめている。

保険者による健診・保健指導等に関する検討会(厚生労働省)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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