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2011年05月27日
動脈硬化を簡単にはかれる測定器 血圧計を応用 産総研が開発
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- 糖尿病の検査(HbA1c 他)
一方、家庭で利用できる簡易血圧計の普及にともない、家庭で血圧を測定する「家庭血圧測定」が重視されている。検診や診療で行う血圧測定に加え、家庭血圧による血圧コントロールが有用であることは、高血圧の臨床研究でも確かめられている。診察室での血圧が正常でも家庭血圧が高い「仮面高血圧」も、家庭で血圧測定を行えば発見できる。
そこで、産業技術総合研究所(産総研)の研究チームは、家庭にも普及している血圧計を応用して、動脈硬化度を簡単に計測できる機器の開発を目指した。
家庭血圧計で血圧を測定するときは、上腕に巻いた「カフ」というバンドを加圧・減圧する。カフに血管の拍動が伝わるが、この拍動の大きさは血圧、カフが血管をしめつける力、血管壁の硬さによって異なる。産総研は、カフ圧曲線から加圧・減圧の成分を除去すると心臓の拍動と連動した上腕動脈脈波が得られることに着目した。
血管が柔らかいと、脈波振幅の曲線はゆるやかに立ち上がり明確な頂点をえがくが、血管が硬いと曲線の頂点は不明瞭で、中央部が平坦になるという。産総研は、2006年から3年かけ、20〜70歳代の健常者約200人のデータを収集・解析した。その結果、カフの減圧と血管容積の変化の割合に一定の相関関係があることが判明した。
カフをゆるめると、血管が柔らかい若者は拍動が大きく収縮した血管の容積が急速に広がるが、血管が硬くなった高齢者は拍動が小さく血管容積の戻り方がにぶいことが分かった。この結果を受けて、産総研では独立行政法人医薬品医療機器総合機構に対し、医療機関向けの医療機器として認可を申請した。
医療機関で使われている動脈硬化度計測装置は、血管に伝わる脈波の速度をもとに推計するか、超音波を使うものが多い。この技術を実用化すれば、既存の血圧計に動脈硬化度評価アルゴリズムを組込むだけでつくれるので、製造コストを低くおさえられる。また、家庭で普及している血圧計として利用することも可能で、実現すれば誰でも簡単に使えるようになるという。
食事療法や運動療法を続ければ、動脈の硬さは3ヵ月程度の短期間でも変化していく。動脈硬化の早期発見だけでなく、動脈の硬さを適切に管理するツールとしての利用も期待されている。
独立行政法人産業技術総合研究所(産総研)
血圧計を応用した動脈硬化度の計測
血圧測定原理の応用で動脈硬化度を計測
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